9月18日、
東京電力・福島第一原発事故による放射能汚染について自分たちの姿勢をしめそうと
各地の生産者・流通・共同購入会・店舗などの有志が東京は品川につどい議論していた。
それから2週間をかけて策定されたという「品川宣言」。
事故発生から半年以上がたち、いつ終わるともしれない原発震災に
身近な人と意見があわず孤立したり自信をうしないかけたりするときや
疲れて混乱したり思考停止したくなったりするときが、きっと誰にもあるだろう。
そんなときのささやかな一助にもなるかもしれないので、
その意味もこめ、以下にご紹介させていただく。
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「品川宣言」 2011年9月18日
わたしたちは、福島第一原子力発電所の事故後、
国民生活への重大な影響を憂慮し、事故の終息をみまもってきました。
また、その工程にあって、わが国有数の一流企業である東京電力株式会社や政府に、
国土や国民の命を第一義的にまもってほしいと願ってきました。
しかしながらわたしたちの期待はみごとに裏切られ今日にいたっています。
2011年9月18日、全国の市民・農家・水産加工・食品団体員など有志が
東京都品川区南品川5-3-20、品川第二地域センンター会議室にあつまり、
今回の事故とこれまでの経過について討議しました。
そして、わたしたちは、今回の事故ならびにその経過が、
「放射能放散公害事件」であることを再確認しました。
そこには、明らかな加害者と、放射能にさられている被害者が存在しています。
しかし、事件発生より半年が経過してもなお
その起因者である東京電力に、その責任を果たそうとする姿勢はみられません。
また、政府は一体だれの ためにあるのか──。
ここにつどったわたしたちは、大きな憤怒をもって次の結論に達したことを宣言します。
1.避難対象地区について
まず、2011年3月11日発生の福島第一原子力発電所事件から半年を経過したいまなお、
放射線に汚染された環境下に人びとが放置されていることにたいして断固として抗議する。
わたしたちは、「放射線管理区域」(1.3ミリシーベルト/3ヶ月)レベルの環境下にさらされている
すべての住民を、ただちに安全な地区に避難させることを、放射能を放散した東京電力と政府に要求する。
なお、ここでは避難させる義務は上記「放射線管理区域」レベルとするが、
市民の側の、避難の権利の基準は、
「一般公衆の線量限度」(ICRP・ 国際放射線防護委員会)基準の1ミリシーベルト/年以上であり、
この環境下からの自主避難の権利はみとめられなければならない。
2.棄民的措置による健康被害の責任について
ゆえに、1ミリシーベルト/年以上の環境下に無作為に人びとを留めおくことは、
人身に危害をくわえる傷害行為、ないしは殺人予備行為にも他ならない。
上記環境下にたとえ一時期であったとしても置かれた福島県民をはじめとする人びとに
今後発生する健康被害については、東京電力ならびに政府の責任であることを宣言する。
3.避難にかんする費用について
避難にかんする一切の費用は東京電力が負担すること、
すでに自主避難している場合にも請求権はみとめられること、
そのうえで、避難先は避難すべき当事者の希望にそうこと、以上の権利を担保する。
また、従来からの地域コミュニティーの避難先での維持など、
具体的な避難誘導などについては、
国・地方公共団体が参加する公共事業体によって、
避難者の立場にたってすすめられるべきであり、
かりにも私企業を参入させ、利益優先・経費だしおしみを許してはならない。
4.「生業」(なりわい)を破壊された住民被害について
特に一次産業者は、その生業が農地や漁場と不可分であり、
農業者にあっては農地や山林、水利権等、
漁業者にあっては漁港や漁場、漁業権等の確保が可能であることを前提に、
北海道、中・西日本などの汚染されていない土地を避難移住先に選定する必要がある。
そのうえで各避難者の生活再建にかんする一切の費用も
東京電力により補償されなければならない。
5.自営産業者にたいする賠償について
一大食料生産地帯を放射能で汚染した東京電力の責任は重大である。
避難する自営業者の一切の避難移転費用と、
生産休止期間と生産が再開したのちも
事業が福島第一原子力発電所事件以前の所得水準にもどるまでの期間の損害を
賠償しなければならない。
それは、例えば、酪農・畜産業及び水産養殖業においては、
生産、出荷が可能になるまでの家畜の飼育経費など、魚介類や海藻の養殖経費など、
また、その間の生産者の生活費用などの一切の費用のことをいう。
6.すべての賠償・補償について
東京電力が負うべき移転費用、生活再建費用、損害賠償費など
必要な支払いについては、速やかに行わなければならない。
支払いについては、さだめる支払義務発生日をこえた日数におうじて
延滞遅延金年10%(電気料金遅延金と同率)を上乗せされなければならないのは当然のことである。
7.高汚染地区の農地回復に従事しようとする者について
放射線リスクが適度に低いとかんがえられる年齢の農業者が、
高汚染地区にたちもどって農地回復を希望する場合、
当該の地は相当程度の人口密度の希薄化がかんがえられ、
また、放射線曝露を最小限度にとどめるために、
清浄な飲食物の配給とその他の行政・医療サービスの供給はつづけられなければならない。
放射性物質除去のための菜種・アカザ・牧草類などをふくむ生産物は、
当面低レベル放射性物質であるから、
東京電力によって適正な生産者価格で買いとり補償されなければならない。
東京電力は補償買いとりした生産物を厳重管理し、市場に環流させてはならない。
8.食品暫定基準値について
現行の食品「暫定基準値」はなんら正当な根拠をもたない。
わたしたちは決して容認できるものではない。
暫定基準値は当該汚染地区からの避難が完了するまでのあいだ、
飢え死にすることを防ぐための緊急避難的な数値である。
当該汚染地区外にまで適用することや、
既に半年を経過した今も「暫定」期間とすることには無理がある。
いたずらに引きのばすことは許されない。
また、この緩い暫定基準値こそが、
汚染農水産物やその加工食品を生産し、拡散させる原因となっており、
ただちに暫定基準値は撤廃されなければならない。
わたしたちは、すべての国民に、暫定基準値を適用しようとすることが
無意味・無効であることを宣言する。
9.外部被ばくと内部被ばくの積算について
わたしたちが受ける放射線量は
体内に摂取される飲料・食品・呼吸吸入されるダストなど、
いわゆる内部被ばくと外部被ばく線量の総量と理解されるべきである。
食品などの暫定基準値は年間摂取量を計算して、
年1ミリシーベルトから空間放射線量を減じた数値以内に設定されるのは自明のことである。
現行の500ベクレル/kgと200ベクレル/kgの暫定基準では、
年間17ミリシーベルト~22ミリシーベルトに積算されるとの見解があり、
撤回されたはずの20ミリシーベルト/年基準に対応するものであり、みとめられない。
(例えばドイツ放射線防御協会による「日本への提言」では、
0.3ミリシーベルト/年を基準に
食品を「大人8ベクレル/kg、子ども4ベクレル /kg」としている。)
10. 汚染された農水産物について
少しでも放射能に汚染された農水産物を「放射能汚染農水産物」とよび、
「低レベル放射性廃棄物」のひとつとする。
低レベル放射性廃棄物は、発生原因者東京電力によって回収され
再度の環境汚染を防止するため密閉処理・管理されなければならない。
その場合、東京電力は、放射能汚染農水産物を
適正な生産者価格で買いとり補償しなければならない。
11.他者に汚染を拡大しない義務と責任について
線量の大小にかかわらず放射能汚染農水産物が生じたとき、
あるいは放射能汚染農水産物が生じるおそれのあるとき、
生産者はみずからの判断で生産を中止する「食べ物」生産者としての責任をもつ。
福島第一原子力発電所から放散された放射性物質による汚染被害物のすべて、
および、汚染が予測されての生産休止による操業損害は、東京電力が損害賠償しなければならない。
12.販売供給者の義務と責任について
福島第一原子力発電所から放散された放射性物質による
汚染農水産物とその加工食品は、販売供給されてはならない。
その線量の大小にかかわらず、低レベル放射性廃棄物は、市民に対する加害物質であり、
その供給は、人身に危害を加える傷害行為、ないしは殺人予備行為にほかならない。
13.汚染された農水産物や瓦礫の拡散について
農水産物にかぎらず、放射能汚染された瓦礫・土壌などの移動は
汚染の拡散であり、いっさい認められない。
すでに福島第一原子力発電所敷地外へ放散された放射性物質およびその付着物は
発生原因事業者東京電力の責任で回収されるべきである。
上記瓦礫をはじめ、表土や上下水汚泥、焼却灰・スラッジ・腐葉土・堆肥などは、
放射性廃棄物として回収され、発生地である福島第一原子力発電所敷地内にもどされ、
再度の汚染原因にならないように密閉処理・管理されなければならない。
14. 放射能汚染農水産物の産地偽装や希釈的な拡散について
さらに、市民の正常な判断をさまたげる
産地ロンダリングは禁止されなければならない。
東日本の産地県の生乳を、地域をこえて運搬し、
遠方府県乳業工場で産地県を明かさずに製造販売していることが、
名神自動車道滋賀県内瀬田での生乳タンクローリー車横転事故ではからずも発覚した。
また、東北地方太平洋岸漁場で捕獲された水産物を
静岡県や三重県などの遠隔県漁港で水揚げする、という例もある。
正当性のない暫定基準値であればこそ、
放射能に汚染された食品を家族に食べさせたくない、食べたくないとする市民が、
食品危険度の判断をするために、産地は正確に表示されなければならない。
15.汚染数値の公開について
当然、現行「暫定基準値」以下の汚染数値も、
1桁ベクレルまですべて公表されなければならない。
地方自治体などの公共団体による測定は、ゲルマニウム半導体検出機などを使用し、
精緻な検出レベルを保証しなければならない。
また、その検出の必要性が今回の福島第一原発の放射性物質に起因する場合、
その検出検査料金は東京電力に請求されるべきであり、
市民・生産者・ 取扱い販売者に負担させてはならない。
以上のことをわたしたちは真剣に討議し、ここに宣言することにしました。
これらは決してむずかしいことではなく、
子どもや子どもをまもりたい大人には、とても明快なことです。
今回の福島原発事故の問題は、本当は意外にシンプルです。
永遠に未熟な技術をふりまわし、多くの人びとを傷つけ、生命の危険にまで追いやっています。
まだそれは目に見える形ではあらわれていないかも知れませんが、やがては誰もが知ることになるでしょう。
原子力にかかわる人達が小賢しい理屈で問題を複雑にすりかえ、
当然にとらなければならない責任を有耶無耶にしようとしているだけなのです。
わたしたちは、今もっとも危険なところにいる人びとに、
「早く逃げろ!」と大声で叫びたいのです。
その危険にさらされている人びとを一番にたすけなければならない者たちが、
他人事のように傍観していることが許せないのです。
そして、さらにわたしたち自身もまた、放射性物質で汚染させた農水産物を生産してしまったり、
それを他人様にまちがって食べさせてしまったりすることを恐れているのです。
そのような意味で、福島第一原発から放散された放射性物質への重い不安感は、
人びとすべてに分かちあわれてしまっています。
さて、わたしたちはこの宣言を踏まえて、
「3.11福島原発放射能放散事件」から人々の「いのち」をまもる
「福島原発事故からいのちと食を守るネット ワーク」を結成し、
人々の「いのち」と「たべもの」の 安全を守るためのあらゆる提言、運動をおこなうことを確認しました。
すべての市民の皆さまに、わたしたちの「ネットワーク」への連帯とご賛同をお願いします。
「福島原発事故からいのちと食を守るネットワーク」(準)
***(さよなら原発・神奈川【アクション案内板】より転載。一部の漢字を仮名に改めた) ***
ちなみにこの「品川宣言」、げんざい賛同募集中、
賛同いただける方は地域・団体名・個人フルネームを
kobesc(at)ai.wakwak.com 宛てへお送りくださいとのこと。
(上記アドレスの(at)を@にかえて送信ください)