秋の初めころだったか
「ヤズ(若いブリ)をさばくのが一番むずかしい」といったら
「なに? ヤズが一番みやすい(簡単?)んじゃ」といわれた。
え?? 鯛は(太刀魚ほどではないとはいえ)平たいから
まな板のうえで安定よく、あつかいやすく感じるけれど、
ヤズはやや筒状だから安定が悪く、ヌメリもつよくて難しい
・・・とおもっていたのに、まさか「一番みやすい」なんて。
このままでは何かがいけないと、ヤズがたくさん到来したある日、
一念発起してみた。
・・・ようやくヤズ3尾と鯛1尾が刺身用の柵になったときには
1時間以上たっていた気がする。
最後の鯛のときにはさすがにヨレヨレで一瞬どうなるかと思ったけど、
祝島の海育ちのヤズさん鯛さん、この日もめでたく刺身となり胃袋へ。
それにしても
ヤズや鯛が丸ごと1尾手にはいり、しかも
それをさばくことに挑戦させてもらえるなんて、本当にありがたい。
わたしの仕事がいそがしかったある日は、
Nちゃんが神業のような速さでつぎつぎにヤズをさばいたと思うと
にぎり寿司にしてくれた(感謝感激・・・)。
寿司桶いっぱいのヤズの握り、このとおり、なんとも壮観!
口へはこぶと、どんな疲れも一気に霧消する味わいだ。
この食パワー、あなどりがたし。
祝島時間がふえるほど、ますます本気でそう思う。
モイカとヤズをいただいたある日は、握り寿司パーティーをした。
祝島で「モイカ」はアオリイカをいう。
手前右のほうがモイカのエンペラ(エンピラ)で、
同左のほうがヤズのハラミ(たぶん・・・)、いずれも絶品なり。
祝島で、思いがけず「ヤズとモイカな日々」。
祝島が守りぬいてきた、瀬戸内海の最後の聖域ともよばれる奇跡の海で
育まれたいのち。
・・・に、育まれるわたし。