少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

窓辺の風

2021-06-12 07:00:00 | 読書ブログ
窓辺の風(宮城谷昌光/中公文庫)

好きな作家の、自伝的エッセー。(エッセーとエッセイの表記は、いつも迷うが、このブログではエッセーにしている。)

タイトルは、この人の作品『草原の風』を思わせる。

第一部は、『時代の証言者』として読売新聞に連載されたもの。生い立ち、文学修行、中国歴史への開眼、作家デビュー、直木賞受賞までを26回に分けて描いている。第二部は、26回のそれぞれに対応した「おまけの記」を付け加え、当時の思いや印象的なエピソードを織り込んでいく。

そして第三部では、4月10日の記事で紹介した『孔丘』に関連して、孔子と『論語』に関する論考を披露している。ここで描かれているように、ひとつの漢字の使われ方から、歴史の襞(ひだ)に秘められた真実を読み解こうとするのがこの人の持ち味だ。

この人の商業デビューは45歳。驚きに満ちた、しかも勇気づけられる一冊である。