誰に似たのか(中島要/朝日新聞出版)
相変わらず本屋には江戸物があふれている。読みやすく短編が多いので、あれこれと読んではいる。捕物帖のほか、料理や商売をテーマとするものなど。
面白くないわけではないが、このブログで書きたくなるような言葉が浮かんでこない。佐藤雅美氏の新作が出ていた頃はよかったが、ブログ開始後まもなく亡くなられて、新作を紹介する機会はなかった。
で、図書館の新刊コーナーで江戸物を追いかけているうちに出会ったのが、この本。
捕物帖でも料理物でもない。筆墨問屋の白井屋が舞台だが、職業小説と呼べるほど商売の細部を描いているわけでもない。まあ、(私が少し苦手な)人情噺というほかはないのだが。
「誰」からはじまるタイトルがついた6編が収録されている。それぞれの主人公は、商家の4代目を中心とする6人の家族。それぞれの立場の思いや悩みが描かれているのだが、事態の進展に伴う心の動きの描写に、独特のすごみがある。
最初の『誰に似たのか』の主人公は、4代目の妹。大店の長女だが、親の反対を押し切って売れない浮世絵師と一緒になった後、亭主に死なれた、という設定。誰に似たのかと言われているのは、その娘のお美代。
その後、4代目の母親、4代目自身、その妻、そして一人息子へと話が続いていき、最後の『誰にも負けない』では、年頃を迎えたお美代の、将来への思いが描かれる。
作者が描きたいのは、白井屋の物語か、あるいはお美代の成長物語か。続編があるかどうかも不明だが、読んでみたい、と思わせる読後感だった。
相変わらず本屋には江戸物があふれている。読みやすく短編が多いので、あれこれと読んではいる。捕物帖のほか、料理や商売をテーマとするものなど。
面白くないわけではないが、このブログで書きたくなるような言葉が浮かんでこない。佐藤雅美氏の新作が出ていた頃はよかったが、ブログ開始後まもなく亡くなられて、新作を紹介する機会はなかった。
で、図書館の新刊コーナーで江戸物を追いかけているうちに出会ったのが、この本。
捕物帖でも料理物でもない。筆墨問屋の白井屋が舞台だが、職業小説と呼べるほど商売の細部を描いているわけでもない。まあ、(私が少し苦手な)人情噺というほかはないのだが。
「誰」からはじまるタイトルがついた6編が収録されている。それぞれの主人公は、商家の4代目を中心とする6人の家族。それぞれの立場の思いや悩みが描かれているのだが、事態の進展に伴う心の動きの描写に、独特のすごみがある。
最初の『誰に似たのか』の主人公は、4代目の妹。大店の長女だが、親の反対を押し切って売れない浮世絵師と一緒になった後、亭主に死なれた、という設定。誰に似たのかと言われているのは、その娘のお美代。
その後、4代目の母親、4代目自身、その妻、そして一人息子へと話が続いていき、最後の『誰にも負けない』では、年頃を迎えたお美代の、将来への思いが描かれる。
作者が描きたいのは、白井屋の物語か、あるいはお美代の成長物語か。続編があるかどうかも不明だが、読んでみたい、と思わせる読後感だった。