少し偏った読書日記

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宇宙を解く唯一の科学 熱力学

2021-12-18 07:00:00 | 読書ブログ
宇宙を解く唯一の科学 熱力学(ポール・セン/河出書房新社)

カルノー、ジュール、クラウジウス、マクスウェル、ボルツマン、プランク、アインシュタイン、シャノン、チューリング、ホーキング。蒸気機関に関する研究から始まった熱力学を、その発展に寄与した科学者の功績を紹介しながら、現代にいたるまでの全体像を描いた本。

原題は「アインシュタインの冷蔵庫」。アインシュタインが冷蔵庫の特許をとった話が出てくるが、アインシュタインの本質的な貢献は、光量子やブラウン運動に関するものだ。

ミスリーディングなタイトルを踏襲するように、日本語タイトルは「宇宙を解く唯一の科学」となっている。誇大だと思うが、たぶん、統計学は最強の学問、というのと同じような意味合いなのだろう。基本的に統計学の手法を用いているし、科学としての確からしさも群を抜いている。一般相対性理論はいつか、修正を迫られることがあるかもしれないが、熱力学の法則は、それよりもずっと長持ちするだろうと、たいていの科学者は考えている。

最後のほうでは、ブラックホールのエントロピーやホログラフィック理論が出てくる。格別に面白い、というほどではないが、熱力学の歩みと、最先端分野での応用がよくわかる、有用な本だと思う。


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