時間の終わりまで(ブライアン・グリーン/講談社)
私の好きなブライアン・グリーンの本が出た。
『エレガントな宇宙』は超弦理論の解説書だが、自伝的要素もあり読み物としても優れていた。『宇宙を織りなすもの』では、空間と時間について、あまたの類書の及ばない深い理解を示し、『隠れていた宇宙』では、最先端の宇宙論・量子力学の分野に現れた様々なバージョンの多元宇宙を論じた。
今回は、最も確からしい科学的成果である、熱力学第二法則をテコに、宇宙の始まりから終わりまでの悠久の時間の流れをたどろうとするもの。ビッグバンとインフレーションの後、星が生まれ、星が燃えることで生物の材料となる元素が生まれ、物質進化の果てに生物が生まれる。その過程で、局所的には秩序(=低エントロピー)が出現するが、トータルではエントロピーが増加して帳尻を合わせる。
その後もエントロピーは増加し続け、最後にはすべての物質が崩壊して、時間の概念そのものが消滅するが、著者は特に「生命」と「心」の進化に多くのページを割いている。
ある意味で、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』と同じような試みを、宇宙全体についてやっているという印象を受けるが、著者の意図はそこにはないのかもしれない。宇宙の終わりまでの時間からみれば、生命や心が存在する期間は、ほんの一瞬に過ぎないが、だからこそ、その輝きは非常に尊い、というのが、この本の主眼なのだろう。
なお、終盤で、インフレーション理論の対抗馬「サイクリック宇宙論」にも言及している。どちらが正しいかは、重力波の測定で判別できるらしい。余命の長い人は、いつかそのニュースを聞けるかもしれない。
私の好きなブライアン・グリーンの本が出た。
『エレガントな宇宙』は超弦理論の解説書だが、自伝的要素もあり読み物としても優れていた。『宇宙を織りなすもの』では、空間と時間について、あまたの類書の及ばない深い理解を示し、『隠れていた宇宙』では、最先端の宇宙論・量子力学の分野に現れた様々なバージョンの多元宇宙を論じた。
今回は、最も確からしい科学的成果である、熱力学第二法則をテコに、宇宙の始まりから終わりまでの悠久の時間の流れをたどろうとするもの。ビッグバンとインフレーションの後、星が生まれ、星が燃えることで生物の材料となる元素が生まれ、物質進化の果てに生物が生まれる。その過程で、局所的には秩序(=低エントロピー)が出現するが、トータルではエントロピーが増加して帳尻を合わせる。
その後もエントロピーは増加し続け、最後にはすべての物質が崩壊して、時間の概念そのものが消滅するが、著者は特に「生命」と「心」の進化に多くのページを割いている。
ある意味で、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』と同じような試みを、宇宙全体についてやっているという印象を受けるが、著者の意図はそこにはないのかもしれない。宇宙の終わりまでの時間からみれば、生命や心が存在する期間は、ほんの一瞬に過ぎないが、だからこそ、その輝きは非常に尊い、というのが、この本の主眼なのだろう。
なお、終盤で、インフレーション理論の対抗馬「サイクリック宇宙論」にも言及している。どちらが正しいかは、重力波の測定で判別できるらしい。余命の長い人は、いつかそのニュースを聞けるかもしれない。