2017.1.21
大寒の頃というのは、やはり雪が降ったり、低温になったりするものですね。
そして記憶に新しい昨年2016年のこの時も大変でしたしねぇ(笑)
(この記事を更新した日は、すでに立春を過ぎておりますけども)
纏まった雪が降ると、大変だー 大変だー
と言いつつ
でも、なんだか楽しいもので
朝起きて庭に雪が積もっているのを発見すると、真っ先に外へ飛び出して写真を撮ったりしてしまいます
さて本題。
かれこれ、8年前にもなる?! 2009年2月に書いた記事 ↓
古民家の断熱材~当事務所の場合~
実は2009年の頃から、まぁ、色々ありましてね、、、
主屋の内部工事の続きをやってる場合でもなかったものでして、
そのまま工事することもなく、ずーっと放置しておりました。
が、前回書きました通り、
今頃になって、座敷部分だけですが、工事する事になりまして、
またまた断熱材どうするで悩む事に
2009年当時の断熱材の悩みはこうでした。
(2009.2.17 さいふうさいブログ「古民家の断熱材~当事務所の場合~」より再掲)
うちの事務所は江戸時代末の古民家です。
それも
重要伝統的建造物群保存地区『海野宿』の
保存指定されている歴史的建造物です。
外壁は軸組みの見える真壁ですが、
その「壁」の構造は、
伝統工法の「貫」による壁ではなく、
また在来工法の「筋違」による耐力壁でもなく、
合板による「面材耐力壁」なのです。
私共で通常設計する建物では、
合板を使った耐力壁はやったことがありません。
では 何故?
うちの古民家の保存修理工事は
補助金による工事でしたので(外観のみ)、
東御市の委託設計事務所が設計することになり、
自分の所有する建物でありながら、
自ら設計することができませんでした
それはともかくとして、
委託設計事務所の考えによって、
耐力壁(外壁)は合板になってしまいまして、
合板下地の外壁に一体、断熱材は何を使えばよいのか、
悩んでしまいました。。。
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の仕様書による
断熱工事の地域区分、
(或いは 平成18年省エネ法 告示による地域区分)
から言えば、
海野宿のある東御市はⅡ地区(*)ですので、寒冷地です。
*平成25年に省エネ法改正施行され、断熱地域区分が6区分から8区分に細分化されるなどの変更が行われ、東御市はそれまでのⅡ地区から3地域に変わりました。
合板と断熱材の組み合わせは、
内部結露の危険性があります。
透湿抵抗値や壁の気密性など
慎重に検討しなければなりません。
真壁の外壁ですから、気密は難しいし、
当然、通気層は作れません。
また、真壁の壁の厚みにより、
断熱材は30ミリ~50ミリぐらいまでしか入りません。
湿気の流れと、断熱材の性能と、
断熱理論を間違えれば、
内部結露を引き起こしてしまいます。
壁内に湿気を入れない、
入ったら外部へすみやかに排出、
その原理が、合板によって妨げられ、
更に、真壁によって気密が保たれないため、
容易に壁内に湿気が侵入することが予想され、
そうすると必然的に、断熱材の裏側で結露しますね。
いろいろ考えた挙句、
壁に積極的には湿気を入れたくないので、
適当に透湿抵抗値の高い素材。
壁自体の気密が確保できない以上は
断熱性能もあまり高くないもの。
(性能が高いもの程、つまり熱伝導率の小さいもの程、
断熱材の裏側で外壁側と温度差が生じるため、湿気
が入ると結露する)
さらに、壁内で結露してしまった場合には、
吸湿し、放湿できる調湿作用のある断熱材。
ということで検討した結果、
炭化コルク に行きつきました。
。。。が、高いんですね。価格がっ。
価格が高い割に、断熱性能からみると、
平成4年の省エネ基準のⅡ地区をかろうじて満たして
いる程度だったりするので、なんとなく、微妙。
壁自体の気密断熱施工が出来ない限りは、
高断熱化は非常に危険なので、
中断熱?ってところなのですが、
価格だけでみれば、もっと断熱性能はあげられるのに、
そこを敢えて性能を上げない!
と、あれこれ断熱材を決めかねていまして、
うちの工事は只今中断しています。
頭の痛い、断熱材選びです
と、このように2009年以降も、主屋の断熱材に関して悩み続けていたのですが
いつ工事するかも目処が立たないところで
このところ断熱材の検討をしなくなっていました。
が、そんな時に、振って湧いたような座敷工事
1月中に座敷周りだけは工事しないといけませんので
断熱材、今すぐ決めなければなりません!
断熱材の条件は2009年の時と考えは変わらずで
①透湿抵抗が比較的高いもの (湿気を通しにくいもの)
②湿気を適度に調節できるもの
です。
調湿できる材料は、やはり自然系の材料となる訳ですが
自然系の断熱材は調湿はしますけれども、透湿もし易い材料が多いためNG
自然系だから、という理由だけでは採用する訳にはいきません。
ちなみに
同業者に意見を求めてみると、藁! という意見もあったのですが
5㎝程の厚みしか入れられない真壁に藁を埋め込むというのは、やはり施工・時間的にも厳しいので選択肢から外れました。
~我が家の外壁構成 該当・検討する材料~
◎熱伝導率 (W/m・K)
土壁 0.69
(藁壁の代わりに)藁畳 0.07
合板 0.16
羊毛断熱材 0.053
ウッドファイバー 0.038
セルローズファイバー 0.04
炭化コルク 0.041
http://www.jfe-rockfiber.co.jp/img/catalog/2016_general_catalog_fix_chap10.pdf
◎透湿抵抗値 (m2・h・mmH g/g)
土壁(60㎜厚) 3.4
(藁壁の代わりに)藁畳(55㎜厚) 0.88
合板(12㎜厚) 13.2
羊毛断熱材(100㎜厚) 1.79
ウッドファイバー(50㎜厚) 0.93
セルロースファイバー(100㎜厚)1.34
炭化コルク *水蒸気拡散抵抗 0.017~0.003(g/mh mm)
よって、我が家(内外真壁&合板による耐力壁)の場合の断熱材は、
セルロースファイバー でもなく
羊毛 でもなく
ウッドファイバー でもなく
やっぱり、炭化コルク以外、見当たらない。。。
*炭化コルクの透湿抵抗値の換算が出来ないのですけども
あれこれ悩んで
もう、断熱材入れないでおくか! という考えも無い訳でも無かったですが
いや、待って。
合板の耐力壁(外壁)で、壁内を空洞にしておくことは良いとは言えない。
透湿抵抗の高い材料(合板も高い方です)で出来ている壁は、空洞の壁の中に、逆に湿気がこもったままになりやすい。
そこへ寒冷地なこの土地。
冬は、低温に晒され続ける外壁。(1月、2月の月平均気温は零下です)
ちなみに、2017年1月26日、東御市の最低気温は-13℃
我が家の玄関外の温度計は、凡そ-12℃。。。
そして、主屋の事務所の温度計は、うふふ -2℃!わーい!ここまで来ると笑えてきます。どうにかせねば!ですよ。ホント。
東京では外気温がたかだか-1℃や2℃でニュースになるんですからね。 こっちはそれが室内ですよ~・・・
2017.1.25 主屋の事務所 室温
そんな訳で、暖房をしないでいると、この時期、建物の中でもマイナスになる事もある。
冬の空気は乾燥しているとはいえ、低温が続けば相対的に湿度は高くなることも。
となれば、無断熱で空洞な合板で作られた壁内はどうなるでしょうか。湿気っぽくなるはずです。
そして合板は湿気には弱い。(のに、耐力壁なんだから、どうなんでしょうね。そういう材料で耐力を確保するのって。。。疑問)
ならば、何かで壁内を充填しておいた方が湿気は籠らない、はず。
そんな訳で、やはり炭化コルクを入れる事にしましたデス
http://toa-cork.co.jp/cork_commodity/carbonization_cork/index.html
予算なんて無いに等しいところへ、この材料費
心臓に悪いです(笑)
しかし、そんな事も言ってはいられません。。。
早速、炭化コルクを大工さんに隙間なく丁寧に納めてもらいました。
主屋の西側外壁面、全部。
今回は座敷周りに絡む外壁だけ炭化コルクを入れました。
残りの外壁は次回にします。。。次回って何時になるか分かりませんケド
ちなみに、この炭化コルクの厚みは50㎜。
胴縁の厚みは45㎜。
5㎜の差が生じます。
そこにはこのように5㎜のベニヤで調整。
そして電気の配線周り、コンセントボックス周り(裏も含む)の隙間も埋めます。
ただ、電気配線まわりに炭化コルクは上手く納める事が出来ませんので
今回は発砲ウレタンフォームで埋めました。
いつもなら羊毛などで埋めたりする事もあるのですが、
羊毛と炭化コルクの透湿抵抗値に開きがあると思われたので
敢えて、羊毛よりは抵抗値の高いウレタンにしました。
断熱、、、熱伝導率や熱抵抗、熱貫流率ばかりに気を取られがちですけども
断熱材を入れる事による建物を腐らせるかもしれないリスク、
つまり、壁内での結露のリスクをどれだけ減らせるか、私はそれが最優先になります。
壁内結露を防ぐために壁を防湿すればいい、というのが一般的ではありますけども
そもそも、完璧な防湿なんて、真壁や古民家で出来ると思う方がオカシイわけで、
ならば、防湿しないで結露しにくい断熱ってどうすればいいのか、
という思考になります。
この先は、長くなるので止めておきますが
やはり断熱って簡単ではないと思います。 工業製品のようには建築はいきません。
最近では、情報の寄せ集めのような知識で断熱材の事などを論じる風潮が相変わらずありますけども、(素人も玄人も)
それも怖いなぁと思います。
皆さんが関心を持つ事は良い事とは思いますけども。
極端で偏った断熱の考えは、建物の捉え方までもゆがめてしまいます。
断熱材で建物が成り立っている訳じゃないのにね。
断熱、断熱、省エネ、省エネ、と、右見ても左見ても、そんな感じではありますけど
目先の省エネばかりに捉われて、建物の寿命を縮めるような事にならなければいいのになぁ
と思ったりもします。
では断熱材を入れなければいい、という考えにもなりがちですが
その場合は、前にも触れましたけども、
土壁などで、壁の中が空洞で無いようにする必要があると思いますし、
また、寒冷地と温暖地とで一律に話が出来るものではないと思います。
そして寒冷地の場合は、
①冬、暖かく過ごしたいという欲求(暖房の考えと、保温のための断熱)と、
②暖房費を少しでも抑えたいという欲求(省エネ)、
がありますけども、
①があってからの② だと思うのです。
質と量 とも言い換えれそうですけどもね。
これが逆転してしまうと、
社会的には、環境やエネルギー面の施策ではあっても、経済優先な発想(高性能住宅の押し付け)へ、
消費者的には、我慢大会(光熱費をケチって寒いのを無理に我慢する)になり兼ねない。
どっちもどっちのような気がしています。
話が逸れました
今日はまだ続きます。(長くてすみません!)
壁の断熱材に続きまして、
次は床の断熱材です。
いつも通りの、セルロースファイバー密度55k 135㎜厚。
大引から根太までセルローズの中に埋まります。
これは我が家の離れのリフォームの経験から、根太間に納める断熱材では、
敷居、巾木周りから冷気(隙間又は温度差によるコールドドラフト)が来ることを身をもって経験しましたので
2005年以後、古民家改修では、大引間の断熱にして、根太まですっぽり断熱材で覆ってしまうやり方に替えました。
さいふうさい、お馴染の断熱屋さん
茂木さんち、お掃除してるーって思われそうですね^^;;
掃除機みたいだと。
これ、掃除機のように吸っているんじゃなくて、その逆で、
断熱材を送りこんでいるんです。ブローイングっていうんですけどね。
トラックの中に、専用の機械が積んであって、そこからホースを伸ばして、断熱材を入れたいところにホースを突っ込んで吹き込むんです。
写真にもある出格子の部分にも断熱材入れますよ。
そこまでやる?(笑)
セルロースファイバー、形の「ない」断熱材。
屑のようなものなので、古民家には馴染みがいいと思って私はよく使う断熱材です。
そう、古民家って、今の家のように製材された角材や建材で出来てないので、
曲がった材料、平らでない材料、直角でない材料、そういう不均一な材料の組み合わせですから。
そういうところに、断熱材を隙間なく欠損が生じないように施工するのは、難しいものでもあります。
ましてや、前にも書きましたけども、湿気を遮断するための防湿層なんて、完璧にできる訳がありません。
なので、出来ない可能性が高いものは、やらない方がむしろ安全側に働くと考えてまして、何度もくどいですが防湿層は設けてません。
ちなみに防湿層って何かといいますと
湿気を断熱材や床・壁・天井の中に入れないために設ける防湿気密シート。
まぁビニールシートです。
そういうビニール系は、なんだかんだ理屈並べて見ても、古民家には相性が悪いので、極力使いません。
そして、隙間なく、断熱材を納めるというのは、なかなか大変な事ではあるんですが
この形の無いセルロースファイバーをブローイングするという事が
逆に隙間発見器みたいな事にも繋がり
(隙間があれば、断熱材が飛び出してしまう)
古民家にはいいと思っています。
床の断熱施工、終了~
床に穴がありますが、そこには炉を入れます。
(実家から貰ったものデス)
お茶を点てられるようにとね。
と、本日は大変長々と断熱材について書きましたけれども、
これはあくまでも古民家改修の場合においての一つの考えに過ぎません。
さて、もう2月に入りまして
我が家の工事は大詰となっております
工期は1ヵ月。お尻が決まっている状態なので、カウントダウンが始まっています
そんな訳でなかなかブログを更新する時間も無く、
タイムラグが生じておりますが
取りあえず、書き溜めてありました1月の内容を一気にまとめてみました
我が家の工事の記録、まだ続きます。。。