『ラ・ボエーム~ニューヨーク 愛の歌』
まずはToho日比谷シャンテ・シネの豪華さ、スクリーンの多さに圧倒される私。二十歳のころ、それこそ40年も前にいった池袋の名画座とは全然違いますわ。
『こんな素敵な劇場で上映なんて、それだけで素敵❗』と見ていると、まずは、ニューヨーク・ダウンタウンのろくに暖房もなく、散らかり放題の、いかにも『アトリエ』らしいアパートが写されます。そこにすむ多国籍の、一言で言えばむさ苦しい男たち。お金がなくて共同生活しているんだなあとぴんときます。
ところが彼らが歌い出すと汚れ放題のアパートが宮殿みたいに輝きだすんです。なんて素晴らしい声!舞台できくのとはまるで違う臨場感!オペラや、歌を好きなひとならこの迫力ある歌声をきくだけでワクワクしてしまうはず。
チラシには、『ミュージカル』とありますが、これはまんまオペラだとわたしは思います。台詞は、1%くらい。オペラを見たことがあるかたならわかると思いますが、『ラ・ボエーム』オリジナルとほとんどかわらない歌詞とメロディーで時間は進んでいきます。そしてわたしは気づきます。『数百年前のオペラの台詞やストーリーが、いまのニューヨークと、こんなにシンクロするなんて❗』と。
この作品はまさにコロナ禍につくられたそうですが。過去において恐れられた疫病や結核と変わらない恐怖をコロナは私たちにもたらしました。そして、お金やコネがなければ見放されて死ぬしかない人がいたのは、コロナ禍でも、数百年前も同じ。
古典とは 古いものなんかじゃない『普遍性』なんだ。わたしの心臓はことことなり続けました。一方で、主役のミミとロドルフォをアジア人が演じたのは実に革新的でした。
普通は『悪女』とされるムゼッタが、メチャクチャ魅力的だったのも嬉しかった。ムゼッタがやっすいダウンタウンの中華料理屋にスポンサーの金持ちの恋人とやってきて、もと恋人のマルチェッロと再会。いまの恋人をとりあえず追い払うために『足が痛い❗』とさけんで倒れ、『靴を買ってきて‼️』と騒ぐシーンは秀逸❤️ ああいう演出は女性監督ならではの自由な女性への応援歌だとおもいました。
でもその恋人も『小金持ち』程度なんだろうなあ、と。だって、本当のお金持ちならトライベッカの三ツ星レストランに行くでしょう。貧乏なアーティストでも行ける中華屋にくるあたりが、話を進めるためとは言え、なんかかわいい無理矢理さ。ミミもロドルフォとすぐにキスまで行くの『早いよ、やすうりすんな!』と内心思いましたが、『でも原案通りだし、90分で終わらすためには仕方ないか(笑)』、と、あちこちいろいろにたのしんでおりました。そんな風に、一人一人に語りかけたくなる魅力的な登場人物ばかりで。
とにかく音楽への愛、貧しさと戦いながら、アートに命を燃やす若者への愛に満ちた作品
少しだけ説明不足で、プッチーニのオペラをしらないひとには敷居のたかいところもありますが、入り込んでしまえば、声のちから、音楽の力、歌手の魅力で、きっと『原作オペラも見てみたいたい』と、思ってくれるはず❗
アジア人の美しさを引き出すには、もう少しライティングに工夫がほしかったところですが、最後の小雪が降り積もるなか絶命するミミの美しさといったら、、。泣けてきます。
終演後には何と、女性プロデューサーの長谷川留美子さんに遭遇!
皆さんが応援したくなるのがわかる、素敵なかたでした✨
わたしも留美子さんと、本作を応援します。オペラが好きなひとも、そうでないひとも、食わず嫌いしないで、是非見てください。いろんな感想を持たずにいられない、実に人間的な愛と情熱に満ちた映画です‼️
公式HP https://la-boheme.jp/