読みました

本を読むのが好きです。
忘れないように感想等を書いています。
その他、ねこのひとり言…。

今年の7冊目

2009-09-06 17:21:45 | 読書
                 のち   

「なぜ君は絶望と闘えたのか」 ―本村洋の3300日― 
                   門田隆将著

 山口県光市の母子殺害事件被害者の家族を追った記録です。
1999年4月、水道の検査員を装った男が社宅を回り、本村家の弥生

(当時23歳)を絞殺後強姦して押入れに隠し、泣いている夕夏(11ヶ月)も
床に叩きつけるも息を吹き返し泣き止まないので絞殺し天袋に遺棄した。

恐るべき残忍な事件の犯人は当時18歳。少年法の適用で保護され、
事件の詳細や動機さえも、裁判まで被害者家族には知らされない。

 1審の地裁、2審の高裁は共に無期懲役。巨大弁護団が結成された
最高裁で差し戻し判決。その末に差し戻し控訴審でついに死刑判決。

 幾度も自殺を考えながら、9年もの長い時間を戦い続けた本村氏は
「犯罪被害者の会」の設立にも貢献し、加害者の人権ばかりが尊重

される日本の法律を変えさせていく中で、自らも成長していく
 拘置所の友人に送った加害者の本音の手紙、結成された弁護団の

人数の多さ、最高裁での加害者の漫画のストーリのような証言が
マスコミで報道された時、憤りを感じた国民は多かったはず

 裁判官の下す量刑と、国民が報道から得た情報で下す量刑との
あまりの格差に今年から始まった裁判員制度や、死刑廃止論も

検討されている中、「命を奪った罪は命を持ってしか償えない」
との意見は、被害者家族の感情として納得できる気がしました。
 
 本村氏が刑事に教わった老子の言葉「天網恢恢疎にして
洩らさず」(悪事を行なえば天罰が下る)の言葉は、私も好きな

言葉ですが、高裁の差し戻し判決を読む限りこの言葉は生きて
おり、日本の司法もまだ捨てたものではないと感じました。