今日も外出の予定がなく、昼寝を挟んで読書が捗りました。
「終の住処(ついのすみか)」磯崎憲一郎著
主人公は30才を過ぎてから知り合った女性と「もう結婚を
意識せざるを得ない」という半ば諦めたような理由で一緒になる。
それからは一緒に暮らす妻の、時々の怒っているような顔を見てから、
妻の機嫌がしきりに気になり始め、ひどく不安定な毎日を送り始める。
ふとした事がきっかけで社内の女と浮気を始めるが、妻の妊娠で
きっぱりと手を切る。しかしその後数回の浮気もしたりするが
平凡な幸せも感じつつ、中年になってから決心してアパートを
抜け出し、ようやく自分の家=終の棲家を手に入れるという話です。
彼の結婚して以来の生活が、時々の突拍子もない心象風景や
会社での仕事と共に語られます。が、だからと言って特に劇的な
面白い事件が書かれている訳でもなく、読みながら時々昼寝に
誘われたのですが、何故か食べ始めると手が止まらなくなる
駄菓子のように、最期まで読んでしまわずにはいられない、少し
哲学的な感じのする話でした。そういう書き方もプロだからこそ?
話の終わり近くで、長い出張から帰った時に彼を迎えた家族の
様子が、皮肉でもあり象徴的でした。今年の芥川賞を受賞しています。