Diary Of 酒田の人

田舎住まいの60代サラリーマンの趣味の日々

回想の古伊万里 66(芙蓉手琴高仙人の図七寸皿)

2020-06-12 23:02:07 | 古伊万里
 古伊万里の名品として知られる品に、元禄期に焼成された金襴手の極めて上手な品で、通称「型物」と呼ばれる一群があります
かつて元禄あたりまでの品だけが古伊万里と呼ばれていた時代、その狭義の古伊万里の最高峰として評価されたいたのが「型物」だったようです。
型物に登場する文様の中に、「琴高仙人」という文様があります。今回の品は型物が焼成された時代から100年近く後に焼かれた品ですが
見込みに同じ「琴高仙人」が描かれた染付皿です。

「芙蓉手琴高仙人の図七寸皿」

天明~寛政と言った中期末に見られる典型的な芙蓉手の品で、似たようなタイプのデザインの品は珍しくはないように思います
実際、琴高仙人図の品は。柴コレの図録を見ても、享保~宝暦、天明あたりの時代に2種類程紹介されています。


さて、「琴高仙人」とは何でしょう?
ネットで調べたところ、以下のように記載されていました
琴高は中国周時代の仙人で、趙(ちょう)の人、琴の名人として知られた。
ある日、たく水(たくすい)に入って龍子を捕えると約し、約束の日に鯉に乗って水中より現れたという。

この画題がいつ頃から日本で使われるようになったのかは判りませんが、尾形光琳の描いた琴高仙人図が
MOA美術館に収蔵されていますから、元禄時代には人気の高い画題だったんでありましょうか。


裏面もこの時代の芙蓉手に共通するデザインで、取り立てて特徴のあるタイプではありませんが
ちょっと気になるのは「太明嘉清年製」という落款でありまして、柴コレ図録の解説(鈴田由紀夫氏)によると
「大明嘉靖年製」、「大明永楽年製」、「大明万暦年製」のように、「大明」と正確に書いてあるものは書体もしっかりしている傾向にあり、作品も高級なものが多い。
一方、同じ銘でも「太明」の方は、「太明嘉清年製」、「太明万暦年製」のように銘の翻案が行われたり、描き方が粗雑になる傾向がある、と指摘しているようです。

どうやらこの品は決して上手ではなく、いわゆる生活骨董の類のようですが、ワタシは結構好きだったりします。
ちなみに、元禄型物の琴高仙人図鉢は↓に掲載されています。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/329566