Diary Of 酒田の人

田舎住まいの60代サラリーマンの趣味の日々

回想の古伊万里 74(白抜き茄子の図三寸皿)

2020-07-31 20:22:46 | 古伊万里
古伊万里の世界では五寸と七寸では市場価格に大きな差があるのは前々回に書きましたが
世の中には小皿や豆皿を専門に収集している方も結構居るようです。
そこで、今回はウチにあるお皿の中で最も小さなサイズの品を紹介したいと思います
「白抜き茄子の図三寸皿」


茄子文様は藍九谷の時代から見られますが、やはり中期末~後期の品が多いように思われます
この品は江戸後期に多く見られるデザイン(茄子の配置)の品で、縁の立った器形の豆皿です。
薄瑠璃の中に白抜きで茄子文が描かれており、上品な印象の品であるように感じます


縁の部分の画像ですが、この狭い場所に細かく連続文様(?)が描かれています
もしや型紙摺りか?、とも思ったんですが、どうやら手書きの文様のようです。
江戸後期の品だとして、時代を考えるとこんな豆皿に手間をかけてコスト的にまにあったのかは不明です。


裏面は寛政期に見られる文様のないタイプですが、伊万里か平戸、もしくはそれ以外の産地の品かは
ワタシ程度の経験では判断できません。

酒田ではお盆の精霊棚に飾るお盆飾りの中に、「白ナス」がありますが、この品を見るとお盆飾りを思い出すワタシです。


上の画像は借り物ですが、右上の白いのが「白ナス」です
あとは、ハマナス、ほおずき、カボチャ、梨、青リンゴといった品が盆飾りに使われます。

回想の古伊万里 73(染付竹文七寸皿)

2020-07-26 20:10:47 | 古伊万里
 古伊万里の世界の大先輩であるDr.kさんのところで、自分で修復された松竹梅文鉢が紹介されています
そででワタシも便乗してウチで一番のブチ割れというか大傷物を紹介したいと思います。

「染付竹文七寸皿」


寛文期に良く見られる見込みの外側に陽刻が施されたタイプの品で、この品の場合は波頭文が陽刻されています
見込み部分にはこの時代の品らしい濃い目の染付で竹文が描かれていますが、なかなか上手い構図だと思います。


この時代の陽刻は鋭いことで知られていますが、この品もくっきりとした陽刻で、そこそこ良い土が使われているようです


裏面を見ると良くわかるように、四つに割れたのをうまく接着していいます
恐らく近世に割れたものだと想像されますが、幸いにして欠けがなかったことで、このように原型をとどめています。
この品は地元の骨董祭りで十数年前に買ったもので、ブチ割れにも関わらず3万円を超える立派なお値段が付いていました
交渉の結果安くしてもらいましたが、今なら買わないかも知れません。

さて、この品ですが同じ品が英国のバーレーハウスの所蔵品にあり、この時代の品が欧州へ輸出されたことを物語っていますが
研究によると、当時VOCの船員が私的に持ち込んだものであろうという結論に達しているようです。
ちなみに、骨董の世界で「ブチ割れ」というのは、完品だったら名品という品に使う言葉のようで
そういった意味では、この品などは「ブチ割れ」ではなく、単なる大傷物かも知れませんね。

回想の古伊万里 72(藍九谷花文五寸皿)

2020-07-21 23:45:55 | 古伊万里
 伊万里の収集をある程度続けていくと、やはり自分の好みがはっきりしてきます
とはいえ、色絵柿右衛門や鍋島、色絵古九谷、藍柿右衛門の優品などは、いくら好きでも経済的に無理というのが
サラリーマンが収集する古伊万里の限界だったりします。
それでも比較的に安価で十分に時代もあり、収集の対象として満足感の髙かったのが寛文期の染付の品で
結果的にワタシの好みは寛文期の藍九谷と相成った訳です。

前置きが長くなりましたが、今回の品も寛文期の特徴を持つ染付五寸皿です。
「藍九谷花文五寸皿」

この時代の品にわりと良く見られる、三方に同じ文様を配置したデザインの品で、それぞれの文様の中は
この時代を代表する技法と言っても過言ではない「墨弾き」で、なにやら花と葉のようなものが描かれています。

正直なところ、この丸みのついた菱形の文様が何であるのかは判然としませんが、文様の中に墨弾きで描かれているのは
どうやら「梅の花」のようには見えます。

裏面は寛文期~延宝初期に見られるタイプの描き方で、落款はあまり見たことのない銘が入っています

同様のデザインの七寸皿を以前に見かけたことがありますが、ワタシの買える値段ではなかったように記憶しています。
(五寸と七寸のあいだには、大きな壁があります)

回想の古伊万里 71(染付菊に雲気文五寸深皿)

2020-07-15 21:08:39 | 古伊万里
江戸期の古伊万里には様々な落款が見られますが、前回紹介した「古人」などと同じく延宝期に見られる落款に
「車輪福」があります。(別名「車落款」)。
この車輪福も優品が多いことで知られる落款で、なかなか入手できず、ウチにあるのも今回紹介する品だけです。
「染付菊に雲気文五寸深皿」


直径14.5cm、高さ5cmほどの深皿で、白く上質な土、清麗な発色の染付、そして細かい筆致
盛期伊万里の技術水準の高さを感じさせる品で、業者さんが「藍柿右衛門」と称して売るにはふさわしいレベルの品でしょうか。
中央部を白抜きしたデザインも延宝~元禄あたりに見られる特徴のひとつではあります。
裏面の唐草も丁寧な絵付けになっており、このあたりからも上手の品であることが伝ってきます


さて、高台内の落款に注目して下さい

さて、問題はこの品の落款です。↓がその画像ですが、ウチの品はちょうど目跡があって判りにくくなっていますが
この落款が「車輪福」です。
左がウチの品で、右が借りてきた画像です


基本的には「福」の変形であろうことは想像できますが、この落款の特徴は福の字の「田」の部分の形状にあります
大八車の車輪のような形をしています。この部分から「車輪」というネーミングになったのは間違いないところでしょう。
この品は今から16年程前に、ヤフオクで23000円で落札したように記憶しています。
(当時としてはかなり安く入手できたように思いますが・・・)



回想の古伊万里 70(染付菊文変形皿)

2020-07-11 21:05:02 | 古伊万里
回想の古伊万里シリーズも70回目を迎えました。
ワタシの場合、古伊万里歴は20年そこらですので、在庫がさほど多くありませんので(おまけに最近は全く買えていない)
このままだと、あっという間に終了してしまいますので、出し惜しみをしているというのが現実です。

さて、今回登場する品は、今から15年程まえに栃木県の日光にある骨董屋さんからネットを通じて購入した品です
「染付菊文変形皿」


ヨコ13cmXタテ10cmほどの小皿で、見ての通り縁に金直しのある傷物です
時代的には江戸中期、下がっても元禄あたりと思われますが、業者さんによっては「藍柿」として売る方もいそうです。


四方に菊文を描き、中央は白抜き、そして菊文の外側の部分は余白を残さず濃みで塗りつぶしています
この濃みの部分は特に上手という印象ではありませんが、中期の品らしい品格は感じられます。
傷物ながらこの品を購入しようと思ったのは、当時まだまだ初心者だったワタシが落款に惚れたからに他なりません。


中期の伊万里で上手の品が多いことで知られる、「古人」(いにしえびと)銘です
盛期の伊万里で上手の品が多いことで知られる銘としては、「金銘」、「嘉」、「車輪福」、そして「古人」あたりが有名で
「金銘」などは贋作も多いようですし、本物はサラリーマンの入手できる値段ではありません。
この品を購入した頃は伊万里全体の価格が高く、人気のある落款(何じゃそりゃ)は高く値付けしているケースが多かったのは確かです。
そんな訳で、予算との兼ね合いでなんとか入手したのがこの品です。


今思えば落款で品物を選ぶというのも、まるっきり素人の発想なんですが、当時はそれでも満足したものでした。