豊橋番傘 平成２１年６月号 掲載句

　　　（リンクしている写真川柳の写真は　「花の庵」さなえさん　よりおかりしています）


<推せん句>　（４月号近詠より・寺部　水川　選）

　　吠えてみて自分の位置をたしかめる

　　
<近詠>　

　　雑草のひとつひとつにある名前


　　折り合わぬ雑草どうし距離をおく


　　隙のない正論ひとを追いつめる


　　拳など出さぬ笑ってかわしきる



<課題句>

　「音」　（岡部　英夫　選）

　　脇役に徹してハモるこの和音

　　再生のできぬ音色に酔いしれる


　「皿」　（細井　道子　選）

　　愛情もときには毒も盛った皿


　「まじめ」　（寺部　水川　選）

　　あのひとの顔が浮かんだ楷書体

豊橋番傘 平成２１年５月号 掲載句

<近詠>　

　　なにごともなかったようにさくら咲く


　　散りぎわのさくらひときわ匂いたつ


　　なにもかもゆるしたようにさくら散る


　　もういいよもういいのよと散るさくら



<課題句>

　「逃げる」　（川辺　昭子　選）

　　幸せがするりと逃げた舌足らず

　　追いかけてほしくて逃げる恋ごっこ

　　逃げるほど追いかけてくる影ひとつ



　「予感」　（寺部　水川　選）　

　　距離感が変わるよな気のする今夜

　　さよならの風を感じる温度の差



　「揃う」（竹下　健作　選）は、選外でした。





　　　　　　　　　　　　　　　　

豊橋番傘 平成２１年４月号 掲載句

　　（リンクしている写真川柳の写真は、
　　　
　　　　「花の庵」さなえさん　「浮浪草の気吹」浮浪草さんより　おかりしています）


<近詠>　
　　
　　手のひらでやんわり返す風の向き


　　吠えられて吠え返さずにいるつよさ


　　吠えてみて自分の位置をたしかめる


　　つりあった天秤なにも欲しがらぬ



<課題句>

　「茶」　（鈴木　順子　選）　

　　結論が出ぬまま冷めたお茶ふたつ

　　ごちそうのあとにお茶漬けほしくなる


　「逢う」　（寺部　水川　選）　

　　こころにも薄化粧してひとと逢う


　　逢うたびに秘密がひとつ増えてゆく



　「叱る」（鈴木　かずお　選）は、選外でした。





　　　　　　　　　　　　

豊橋番傘 平成２１年３月号 掲載句

　（リンクしてある写真川柳の写真は

　　　「花の庵」さなえさん　「浮浪草の気吹」浮浪草さんより　おかりしたものです）


<推せん句>　（１月号近詠より・寺部　水川　選）

　　恋多き女でいつも満たされず


<近詠>　

　　日々あらたこころの花を生けなおす


　　平凡な幸せがいい日々の酒


　　ほどほどの酔いで家路は忘れない


　　修羅を秘めひと平凡に添いとげる



<課題句>

　「積む」　（郡山　弘子　選）

　　練習を積んで無心の大舞台

　　ふかい溝うめる石積むひとつずつ


　「親子」　（須崎　東山　選）　

　　いつまでも子供でいたい親の家

　　遺伝子が嘘をつけずに似る親子

　　血を分けた者どうしゆえ濁る川


　「手紙」　（寺部　水川　選）　

　　さよならの言葉をさがす重いペン

　　追伸に添えた言葉が照れている