歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

むめ

2010年01月26日 | 徒然 -tzure-zure-
おそらく この世で一番愛おしいと想う香りが、

今、

自分のちいさな部屋に、満ちているのです。


  

  Prunus mume
  バラ科サクラ属


梅。





最初は ひとつしか咲いていなかったのです。


部屋のあたたかさにつられて か
ポコポコ、ポンポン、
次から次に咲いています。

予想を上回る早さで。
今や、5分咲きくらいかしらん。


部屋に満ちる 香りの濃度も
じわじわ現在進行形で、格段に増しているような気がします。


一番好きな香りが、
今、すぐ傍にある。


「こんな贅沢なことがあって、良いのだろうか。」

と、

なんだか申し訳ないような、
畏れ多い気にすら、なっています。


一番好きな香りだとはいいながら
梅の枝を 個人的に入手し、自分の部屋に生けたのは、初めてのことです。





仕事で訪れた「立川」という

東京のようで 東京でないような 
不思議な“田舎感”のある土地で、出逢いました。


旧い大きな通り沿い、
旧い大きな家の門先に、

手書きの「どうぞ」。

バケツに入れて置かれてあった、切り花。


ふつうにお花屋さんでお買い求め、となると
まず有り得ない、
非常に良心的すぎる、破格のお値段。

しかも、上等。
すこぶる状態の良い、たわわなつぼみつきの枝が、
ぜいたくに、束になって。


「今朝切ったばかりなんですよ。」

と、
そのお家の、おばあさん現る。


「いいにおいでしょう。

 においだけでも、たのしんでってくださいねえ。」


まだ、ほとんどつぼみ状態でした。
だけど、
すでに佳い香り!

つぼみからすでに、芳醇に、香っているのです。

すっかり、やられました。


白梅と、紅梅を、一束ずつ 頂く事に。

(白梅のほうは、展示最終日を迎えた朔さんにあげました。)



嬉しさがあふれて来たのは、
帰りの電車に乗っているときでした。



壊れやすい 繊細な宝物を抱えるように、
そっと、
新聞紙で包まれたそれを、大事に大事に、でもしっかりではなくて、そおっと、抱えて。


 「花を抱えて帰る。」

  風流だなあ。
  、、、いいなあ、そういうシチュエーション。


って、想えて。

新聞紙の包みに隠れながら、
心の底まで にっこりと 笑顔になってしまったのでした。





ああ、ほんとに。

「こんな贅沢なことがあって、良いのだろうか。」

と、
戸惑うほどに 素敵な香りが、満ちているのです。

まさに今、この瞬間も。
まさか、この部屋に。


風が吹いてるわけじゃないので、香りが絶えず鼻もとに舞い込んで来るわけではない。

だから、
自発的に吸い込もうと、くんくん、あるいはもっとがんばって、ふんぐぉーー!と、
「深呼吸」、してみてしまう。


かといって、
それですんなり、こちらの思惑通りに鼻に入って来る ってものでもなく、

花の香りは気まぐれで。

たまに、ふっとよぎる すきま風だか、ささやかな空気の動きで、

ふっと、香るのです。

気を抜いた時に。


それがまた、佳い。


しかし、
いいのだろうか。
こんな自分の、こんな部屋にあって。

恐縮なのです。
身の丈に合っていない気がして。
なんだか、畏れ多いのです。





一番好きな香りだから?

もう、好きすぎて、
こんなお傍にあらっしゃられるのが、畏れ多い!と思うのでしょうか。


こんな感情を、何と言うだろう。


愛おしいあまりに畏れ多い。
好き故に、かえって近寄り難い。


もしかしたら、
平安時代に使われていた古語に、的確なのが、なんか、ありそうな気がします。
「いと○○○し」、みたいな。
憶測ですが。





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