安倍首相が国会運営よりも、参議院選挙のほうが「楽」であったと本音を漏らしたとのことです。彼の本音、心境をよく現しています。
自民党の選挙戦術が、今後の政治経済運営の現実との乖離を生み出し、国民の失望を一層増すこことは確実です。なぜならば、自民党を支持した多くの人は、自らの所得増加、好景気、生活レベルの向上を願って投票したからです。ところが、自民党が選挙戦術で取ったことは自民党の本音を可能な限り隠し、あたりさわりのない課題のみを語り、宣伝しました。
彼らの本音は、消費税率の5%から8%、10%への引き上げを行い、なおかつ、10%以上への引き上げを決めたい。このことで、全消費者(国民=選挙民)は収入の3から5%を自動的に税金として取り上げられます。見た目では、収入が3%から5%カットされたと同じことになります。実態の賃金は下がっていますので、輪をかけて可処分所得が減少することになります。失業率が高止まり、賃金が低下し、なおかつ消費税率の引き上げが追い討ちをかけます。このような現実に直面して、初めて、自民党が言う景気回復、景気対策が誰のためのものであるかがわかるのだと思います。転ばぬ先の杖といいますが、実際には転ばない限り、実感できない、分からないのだと思います。
TPP交渉参加で一次産業は壊滅的な打撃を受けます。一次産業の比率が高い地域では、失業者の増加、廃業、賃金の切り下げなどが広範囲に発生します。また、医療分野の混合診療解禁で、低所得者の医療水準は確実に低下します。義務教育を見たら分かります。都市部では義務教育の環境悪化、私学への入学が大勢となり、低所得者であればあるほど、充実した義務教育、高等教育の機会は奪われました。それと同じことが医療分野でもおきてきます。
原子力発電所は安倍自民党政権の元で、再稼動をします。50基ある原子炉はほとんど再稼動を認めるはずです。彼らは福島第一原発は自然災害による天災であり、電力会社には問題はなかった。確率が低い自然災害を理由として、稼動させになどはありえない。(石破幹事長の発言)政府が再稼動を容認したのだから、事故が起きれば、全面的に国家が責任を持つ。(NHK討論会での石場幹事長の発言)本当におごりと勝手な理屈です。税金を無責任な電力会社に無尽蔵のように投入しても恥じない自民党政権の本質がよく分かります。電力は最大ピーク時であっても足りています。それでも再稼動をさせる。事故で苦しむ避難者などはたいしたことがない。これが本音です。きっとまた50基の原子炉のどこかで事故が起きます。そのときに安倍、石場、自民党、公明党、維新の会橋下、みんなの党渡辺の責任を追及しましょう。
<安倍首相の感想>
安倍首相は参議院選挙から一夜明けた22日夜、東京都内で報道関係者と会食した。同席者によると、首相は「国会より選挙の方が楽だった」と感想を漏らしたという。大勝に終わった選挙結果に、気を良くしたようだ。首相はさらに、北海道から沖縄まで各地の選挙情勢の分析結果を披露しながら、「選挙区は読み通りだったけど、比例でもう少しいけると思った」と語ったという。
<社説>
参院選は自民、公明の政権与党が圧勝した。
国会の「ねじれ」は解消し、与党が衆参両院で過半数を確保する。
昨年12月に発足した安倍晋三政権の経済政策などの政治運営に有権者は一定の評価を与えたと言える。首相は国論を二分するような難しい課題の争点化を避けてきた。憲法や原発政策などがセットで支持を受けたわけではない。議論が不十分なまま、国の針路を大きく変える方向へかじを切れば将来に禍根を残しかねない。
数の力におごらず、国民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢が大事だ。
■巧みだった実績強調
選挙戦では与党の戦術の巧みさが目立った。
首相は経済政策の「実績」を繰り返し強調した。円安効果で輸出産業などの業績回復がみられることが、有権者に生活改善への期待感をもたらした。環太平洋連携協定(TPP)や原発再稼働など、国民の間に賛否両論がある政策で深入りを避けた。
選挙戦前半で改憲や外交安保問題などで「安倍カラー」を抑えたことも、無党派層や民主党に失望した有権者を引きつけた。その結果自民党は、全体の勝敗を左右する31の1人区の大部分で勝利し、比例代表の票も伸ばした。
さらに野党の共倒れが与党の圧勝を後押しする結果になった。
民主党、日本維新の会、みんなの党は複数区で当落線上の議席争いを展開した。政策面でも与党との差を示しきれず、批判票の受け皿として不十分だった。 自民との対決姿勢を明確にした共産党が議席を伸ばしたが、野党票は分散が目立った。重要テーマが多かったにもかかわらず投票率は前回に比べ落ち込んだ。野党の力不足が投票所への足を鈍らせたと考えられる。
■「改憲」の状況にない
首相の改憲への意欲はなお強い。
憲法改正の発議要件を衆参両院の3分の2以上から過半数にする96条の変更や、9条を変えて自衛隊の存在と役割を明記すると明言した。だが参院選を終えても改憲を前に進めるべき状況とは言い難い。自民党に日本維新の会、みんなの党の「改憲勢力」を合わせても、改正発議に必要な3分の2には届かない。自民党の「憲法改正草案」は平和主義の後退と国民の権利の制限などが盛り込まれ、問題が多い。衆参両院の議論も生煮えのままだ。
首相は集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更にも意欲を見せる。平和憲法を逸脱するもので、認められない。内向きな議論が外交関係に与える影響は無視できない。
中国、韓国との関係改善の糸口は見えない。侵略戦争と植民地支配への反省を表明した「村山談話」継承の再確認が不可欠だ。首相が前向きな8月15日の靖国神社参拝は、内外への影響が大きく、避けるべきだ。すでに中国、韓国では選挙結果に懸念の声が広がっている。
国民生活に直結する緊急課題も山積する。
看板政策である経済再生は前途多難だ。膨大な財政赤字改善は急務である。中期の財政計画をしっかり立て、来年度予算は借金頼みの公共事業依存型から脱却してもらいたい。低所得層や地方へのしわ寄せが大きい消費税増税は慎重な判断が必要だ。一体で進めるはずの社会保障制度改革の方向はどう定めるのか。
与党が原発再稼働の動きを強める中で、脱原発を明確に掲げた党や候補が票を伸ばした。各電力会社から再稼働に向けた申請が相次いでいる中で、慎重な態度が求められる。
TPPでは北海道をはじめ地域が受ける打撃を理解し、農業再生の道筋を明確に示さなければならない。
震災復興、原発事故被害者の支援も遅れている。政策の優先順位には細心の注意が必要だ。
■問われる野党の役割
参院選勝利を受けて首相は経済対策の効果を実感できるよう努力する考えを強調した。一方で「決めるべきものはスピーディーに進めたい」とも語った。
自公の巨大与党が数を頼みに暴走しないよう、野党の役割はこれまで以上に重大だ。民主党は昨年の衆院選に続いて結党以来最悪の結果となった。敗因を真剣に分析し、党の体質から抜本的に刷新しなければ復活の目はないと覚悟すべきだ。
野党の間では再編含みの動きも見られる。維新はみんなとの連携を模索する意向を示すが、大事なのは理念や政策の一致だ。数合わせの連携はもろさと背中合わせだ。各党間で政策ごとの連携を模索しながら、与党に対する対立軸を構築していくのが基本だろう。
連立を組む公明党は、改憲や集団的自衛権の解釈をめぐって自民党と対立する。「ブレーキ役」を果たすことができるかが、党の存在意義に関わる問題と心得るべきだ。