小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

総選挙で圧勝した自民党の勝因と、早くも表面化したおごり体質

2017-11-05 11:01:47 | Weblog
 選挙中、ほぼ1日おきに長文のブログを更新してきたため、私も疲労困憊の極に達し、しばらくお休みをいただいた。これからは通常のペース(週1~2回)に戻したい。今月1日から始まった特別国会ではモリカケ疑惑や憲法「改正」問題が浮上するだろうが、おりにつれブログで問題提起していきたい。
 総選挙の結果についてメディアはもっぱら野党の敗因(野党が分裂して自公政権に対する「受け皿」がなくなったこと)の分析に集中してきたが、今回は自民圧勝の勝因についてみてみたい。

 麻生副総理が「(自民党が)選挙で大勝したのは、北朝鮮のおかげ」と、つい本音を漏らしたことで、自民党内でちょっとした衝撃が走ったことがある。菅官房長官をはじめ、政権中枢は即座に「北朝鮮の挑発にしっかり対応できるのは自公だけという国民の判断を意味した発言だろう」と、火消しに奔った。
 私は10月7日から始めた連載ブログ『総選挙を考える』シリーズの4回目(14日投稿)でこう書いた。

「選挙落ちた。前原・小池、二人とも死ね」…そんなうめき声が希望の党に移った旧民進党立候補者から噴出するのは、あと1週間後だ。私が危惧した最悪のシナリオが進行している。
 希望の党が苦戦している原因は、ほとんどのメディアや政治評論家たちが解説しているような、小池氏が希望の党への「合流」の条件とした安保法制容認と憲法改正という踏み絵を踏まない旧民進党議員を「排除する」という発言ではない。確かに「排除」という言葉はきついが、それが原因ではない。
 最大の理由は、やはり私がこれまで何度もブログで指摘してきたように、それまで安保法制に体を張って抵抗してきた人たちが、選挙のために手のひらを返すように信念をかなぐり捨てたことへの、痛烈なしっぺ返しである。私は『総選挙を考える』シリーズの1回目(7日投稿)でこう書いた。
「踏み絵を踏んで希望の党の公認を得た人たちは、地元の選挙区で有権者に自身の変節・転向についてどう説明するのか。国民をこれほどバカにした政治行動を、私はかつて見たことも聞いたこともない。彼らの政治行動の結果は、22日、有権者によって容赦ない審判を下されるだろう」(中略)
 私はこれまで今回の解散劇を安倍総理の「自己都合解散」と命名してきた。が、今日から「たなぼた解散」と改名する。私のブログの読者はこの改名の意味はすぐお分かりと思うが、いちおう簡単に理由を説明しておく。
 安倍内閣の支持率はモリカケ疑惑や稲田防衛相の国会答弁問題で5~7月にかけて急落し、自民党内の反安倍勢力が公然とアベノミクス批判や安倍改憲論批判を始め、「安倍一強体制」の崩壊は時間の問題と思われていた。8月初めには内閣改造効果によっていったん支持率下落に歯止めがかかったかに見えたが、野党が要求していた閉会中審査が8月中に数回開催されたものの、肝心の安倍総理が外遊中で不在だったりと、政府は逃げ回っていた。当然9月の支持率調査では再び下落に転じて「安倍一強」にとどめが刺されると、私は内心思っていた。が、9月の世論調査で内閣支持率が一気にV字回復した。北朝鮮が8月29日、襟裳岬上空をかすめるミサイルを発射し、政府がJアラートを東北地方にまで流す大騒ぎをした挙句、これ幸いとばかりに「北朝鮮の脅威」をがなり立てた。
この事態をメディアが冷静に受け止めていれば問題は生じなかったが、NHKをはじめ安倍批判を強めていたメディアまで先を争うように「北朝鮮に対する圧力と制裁の強化」を主張した。まさに戦時中を想起させるほどで、こうした場合、政権への求心力が高まるのは歴史的必然でもある。9月の世論調査で内閣支持率が「たなぼた」的にV字回復したのはそのためで、安倍総理はこの千載一遇のチャンスに飛びつき、再び「安倍一強」を復活させるべく解散に踏み切ったというわけだ。
私はこの時メディアの報道姿勢を猛烈に批判した。私は一度も「北朝鮮の挑発」とブログで書いたことはない。私は一貫して米朝の「挑発ごっこ」と書いてきた。だいたい弱者のほうから強者に対して「挑発」を仕掛けるという自殺行為を行うことは、本来ありえない。TBSの『時事放談』で丹羽宇一郎氏が日本の対米開戦をたとえに「窮鼠、猫を噛む」危険性を指摘したことがあったが、これも私の主張のパクリではないかと思っている。
安倍総理が解散に踏み切るという事態になってメディアも報道姿勢を転換しだした。その結果、10月の世論調査では再び内閣支持率が急落し、私はブログで安倍総理は「(解散を)早まったと思っているかもしれない」と書いた。が、すでに述べたように、希望の党への民進党議員の「合流」で国民の政治不信が極限に達し、固い支持層に支えられている自民党の一人勝ちの選挙戦序盤となったのである。それゆえ私は今回の解散劇を、安倍総理にとって「たなぼた解散」になったと解釈することにしたというわけだ。

 麻生副総理の発言は「失言」でもなければ「説明不足」だったわけでもない。自民大勝の理由を本音で一部しゃべっただけだ。「一部」と書いたのは、あえて麻生氏が言わなかったことがあるからだ。どうせなら、政府が煽り立てた北朝鮮危機を、一緒になって盛り上げてくれたメディアへの感謝の気持ちも述べるべきだったと思う。
 実は9月中旬以降、私がずっと疑問に思ってきたことがあった。9月中旬というのはメディアの世論調査結果を見て永田町で解散風が吹き始めた時期である。それまでは頻繁にアメリカでのトランプ大統領の支持率動向を伝えていたメディアが、ばったり伝えなくなったことだ。
 が、ようやく最近ネットでCNNのトランプ大統領支持率調査の結果を知った。10月31日の調査だが、過去最低の37%を記録したという。ということは何を意味するか。トランプ大統領がツィッターで必死に北朝鮮に対する敵意丸出しの発言を繰り返しても、肝心のメディアが無視してきたことを意味する。むしろ「もう北朝鮮との『挑発ごっこ』はいい加減にしてくれ」と主張しているのではないか。メディアだけでなく、国民自身もそう感じているのではないだろうか。その結果がトランプ大統領の支持率調査に表れていると思う。

 選挙で圧勝した安倍政権はいったん口先で「謙虚に」「丁寧に」を繰り返していたが、その舌の根も乾かないうちに早くもおごりが出てきた。
 予算委員会などの国会審議で、議員の質問時間を獲得議席数で比例配分することを野党に要求し始めたのである。自民党の若手議員から「国会での質問をさせてほしい」という要請があったからだという。
野党は猛烈に反発したが、安倍総理が勝手に自分の判断でいろいろなことを決めだしたことに対して、小泉議員(自民党の筆頭副幹事長)が「党に何の相談もせずに総理が勝手に決めるのであれば、自民党は必要ない」と噛みついたのである。
 一方、小泉発言問題を問われた菅官房長官は「政府・与党は一体であり、与党を無視して政府が勝手に決めることはない」と弁明した。
 議員立法を除くと、基本的に法案提出権は政府にある。政府が与党議員の声を無視して法案を勝手に作り、国会に提出するといったことはちょっと考えにくい。小泉議員の怒りが事実に基づくものであれば、政府は与党議員の声を聞かずに法案を作っているということになり、与党議意にもしっかり質問時間を配分する必要があるだろう。
 が、菅官房長官の言い分が正しければ、政府・与党は一体なのだから、与党議員が質問する必要はないことになる。実際NHKの国会中継を見ていても、与党議員の質問は質問の体をなしていないことが大半である。質問時間が余って般若心経を唱え出す議員もいたくらいだ。
 予算委員会をはじめとする国会の法案審議は、自民党の若手議意の「顔見世興行」の場ではない。若手であっても、しっかりした意見があり、「たとえ与党議員であっても質すべきことはきちんと質す」という姿勢の人に質問の機会を与えるか否かは党内事情の問題である。あらかじめ質問時間の配分を決めておくというなら、基本的に政府提出の法案に対しては野党に7~8割の時間を配分するのは当然であり、民主主義の最低限のルールのはずだ。
 法案の作成過程で、若手議員にも十分意見を聞く機会を与党である自民党が作っておけば、法案内容に若手議員の声も十分反映されるであろう。それが党内民主主義のルールであり、党内民主主義のルールさえ機能していない与党が、党の欠陥を国会審議の場で補うなどという発想はおごり以外の何物でもないと言わざるを得ない。