小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

朝日はとうとう、ここまで堕ちたのか。

2020-03-02 05:03:41 | Weblog
 私は決して朝日新聞に悪意を持っているわけではない。実際、親が朝日新聞を購読していたこともあって子供のころから朝日新聞に親しんできた。フリーのジャーナリストとして仕事をしていた時は朝日以外にも数紙を購読していたが、いまは朝日1紙だけである。そのためか朝日の記事に対して見方が厳しくなったのかもしれないが、しばしば「お客様オフイス」に電話やブログでクレームをつける機会が多くなったとは思う。
 朝日は数年前、大きな汚点を残した。慰安婦問題の誤報である。発端は吉田清治なる人物のでっち上げ「慰安婦狩り」告発にあった。その時期、吉田を英雄視して旧日本軍の慰安所問題を追及したのは朝日だけではなかった。ほぼすべてのメディアが朝日と同様の報道をした。河野洋平氏(当時官房長官)がいわゆる「河野談話」を発表して「慰安婦狩り」に軍の関与があったと認めたのも、朝日だけの責任とは私も思っていない。
 が、吉田が慰安婦狩りを証言した済州島で、地元紙が調査をして、そういう事実はなかったことを明らかにしたのち、ほとんどのメディアは吉田証言がでっち上げだということを認め、記事の訂正を行った。が、朝日だけはなぜか記事の訂正をしなかった。
 朝日には長い間、主筆制度がなかった。主筆制度が復活したのは2007年。朝日新聞社をいったん定年退職した船橋洋一氏が当時の秋山社長の肝いりで復社して主筆に就任したのである。その船橋氏が主筆就任の弁をこう書いた(私の記憶による)。「アジア太平洋戦争(※この表現は岩波用語)以降、朝日のジャーナリスト魂は権力にあくまで食らいつくことにある」と。実は戦時中、軍に最も協力した大手新聞社は朝日だった。だから敗戦後、GHQから追放された新聞記者は朝日がダントツに多かった。振り子の原理で、戦後の朝日は反政府の姿勢を強めることになった。60年安保闘争時、『朝日ジャーナル』は左翼系言論人の殿堂ですらあった。記者志望の学生は就職活動で朝日に殺到し、朝日も受け入れた。そうした事実を知っている人は、もう朝日にはいない。
 いずれにせよ、戦後の朝日は反政府ジャーナリズムとして言論界に君臨してきた。慰安所問題をめぐる誤報も、そうした雰囲気の中で生じた。戦時中の政府や軍の不祥事には見境なく飛びついたと言ってよい。吉田が済州島で慰安婦狩りをしたという「創作話」も、裏付けをとることなく事実として記事にした。他紙が吉田証言はでっち上げであったことを明らかにしたのち、ようやく朝日は裏付け取材に動いたが、依然として誤報だったことは認めず「真偽は確認できない」と逃げた。ジャーナリズムとしてあるまじき姿勢である。
 朝日がようやく誤報を認めて訂正記事を紙面に掲載したのは2014年8月5日である。しかし、謝罪はなかったとされ、ニュース・タレントの池上彰氏が朝日に月1回のペースで連載していたコラム『新聞ななめ読み』で「朝日は謝罪すべきだ」と書いたところ、朝日から掲載を拒否されるという事件が生じた(この事件が他紙によって大きく報じられて朝日はのちに全文掲載した)。
 実は慰安婦問題は二つに分けて考えなければならない。一つは「慰安所設置は軍の指示だったか」という問題と、「慰安婦の『強制連行』に軍が直接関与していたか」という問題である。すでに資料として明らかになっていることは慰安所設置に関しては軍の指示があったという事実であり、それを裏付ける資料も見つかっている。が慰安婦の「強制連行」(いわゆる「慰安婦狩り」)に関して軍が直接関与したかについては、そうした「事実」を裏付ける資料は一切見つかっていない。この二つの問題が、依然としてごっちゃにされているきらいはある。
 確かに「慰安婦狩り」はあったと思う。元慰安婦だった韓国女性の証言がすべて虚偽だったとはいいがたいからだ。いまでも警察官が犯罪を起こすケースがしばしば報道される。かといって、個々の警察官の犯罪行動に警察庁の関与があったなどと主張する人はいるまい。だから当時の末端の兵士の一部が「慰安婦狩り」をしただろうことは想像に難くない。この問題をごっちゃにしてしまったのが、いわゆる「河野談話」であり、本来なら朝日は誤報のみそぎとして河野談話の検証作業を徹底的に行うべきだった。
 いずれにせよ朝日はこの誤報問題を契機に姿勢を改めたかに見えた。たとえば読者に対応する窓口を、それまでの上から目線的な「読者広報」から「お客様オフイス」に変えた。そしてしばらくは読者の意見に対しても、それまでの傲慢さは影を潜めた時期があった。が、活字離れが進んで新聞の定期購読者が減少し始め(定期購読者の減少は即広告収入の減少を意味するだけでなく、新聞折込チラシを大きな収入源としてきた新聞販売店にとっては死活の問題になっている)、しかもNHKや電通で生じた過労死事件が社会問題化し、朝日の取材力が低下し始めた。
 そこに降ってわいたように救いの主があらわれた。安倍総理の働き方改革である。それに、待ってましたとばかりに飛びついたのが朝日だった。読者窓口の「お客様オフイス」の大改革である。「自分たちの給料の一部くらい、自分たちで稼げ」と上から命じられたのかどうかは知らないが、読者からの電話代で一儲けしようと考えたようだ。
 それまでの「お客様オフイス」への直通番号は 03‐5540‐7615 だった。この電話番号の場合、IP電話なら3分8.4円、かけ放題の携帯電話なら無料だった(無料の時間制限がある携帯もある)。が、いまの直通番号はナビダイヤルの 0570‐05‐7616 だけである。ナビダイヤルは受信側が自由に通話料を設定できるNTTコミュニケーションズの商品である。振込詐欺グループが所在地を特定できないように携帯電話を使用しているように、ネットなどで高額商品を販売している悪徳業者がやはりナビダイヤルだけで客に対応している。なお朝日のナビダイヤル通話料金は固定電話やIP電話からは1分10円、携帯電話からは20秒10円である。そこまで読者からぼったくらないと「お客様オフイス」を維持できなくなったのだろうか。しかも読者へのサービスも低下した。「お客様オフイス」の営業時間も平日は9:00~18:00、土曜日は9:00~17:00、日祝日は閉店休業。なんと優雅な勤務体制なのだろう。
 なお、まともな会社も最近ナビダイヤルを採用するケースが増えていることは事実である。たとえばNHK「ふれあいセンター」のナビダイヤル番号は 0570‐066‐066である。が、市外局番と同様の通話もできるように直通のIP電話番号も用意しており 050‐3786‐5000 である。この番号になら固定電話だと通常の市外電話料金がかかるが、IP電話なら3分8.4円、かけ放題の携帯電話なら無料だ。NHKがなぜ普通の市外局番ではなくIP電話を使っているかは実は理由がある。NHKの「ふれあいセンター」は東京・渋谷の放送センター内ではなく、川崎・武蔵小杉に設置されているからだ(「ふれあいセンター」はNHKの一部門ではなく子会社)。ただしFAXだけは放送センターで受け付けている。なお朝日もFAXだけは市外局番で受け付けている。
 朝日の「お客様オフイス」は「通話料で儲けてはいない」と言い張るが、ではなぜ従来の市外局番の直通番号を残さないのか。本当に読者の方に顔を向けようと言うなら電話だけでなく、受付時間もライバルの読売新聞のように年中無休9:00~22:00まで窓口を開けばいいじゃないか。

【追記】なお、私は1分10円もかかる「お客様オフイス」への電話はばかばかしいので朝日新聞社の代表番号 03‐3545‐0131 にかけて「お客様オフイス」につないでもらっていたが、とうとうそういう方法も使えなくなった。つないでくれるのはつないでくれるのだが、もう私からの電話だということがわかっているようで、電話口に出た「お客様オフイス」の担当者がいきなり「何度も説明しているように、ナビダイヤルにかけなおしてください」と言われ、電話が一方的に切られてしまう。
 説明とは、読者である私が納得できる理由を述べることだと私は思っている。朝日が執拗に政府に対して説明責任を求めるのも、政府の説明が国民を納得できる内容ではないからだと私は考えている。で、朝日の「お客様オフイス」が読者に納得できる説明責任を果たしているか。否、である。「お客様オフイス」が説明したことは 「代表電話は緊急の事件や情報の提供のためだ。その電話回線がふさがると、そういう対応ができなくなる」だけだ。だが、この説明はうそだということはすでに私は確認している。いかなる用件でも、代表番号に電話した場合、「お客様オフイス」にしかつながない。近いうちにブログで明らかにするが、朝日の愛読者として政府の詐欺法について情報提供してあげようと思い、政治部か社会部につないでほしいと頼んだが、代表電話へのお電話は「お客様オフイス」にしかつなげません、とつれない返事が返ってきた。だったらなぜ「お客様オフイス」は代表番号ではなくナビダイヤルでしか受け付けないのか、その説明責任を朝日の「お客様オフイス」は果たしていない。実際、代表番号が緊急の事件や情報提供のため」だけに設けられているのなら、電話の目的によって政治部や社会部につながないとおかしい。実際、かつては「社会部につないでください」と頼めば、そうしてくれた。何度か情報提供したこともある。私が現役時代、何度も朝日の記者からコメントを求められたこともある。いま、どういう目的で代表番号を設けているのか、その説明を代表番号の交換手に求めて担当部門につないでほしいとお願いしても「はい、わかりました」と、「お客様オフイス」につながれ、いきなり「小林さん、ナビダイヤルにかけなおしてください」とだけ言われ、電話を切られてしまう。なぜ代表番号とナビダイヤルしかない「お客様オフイス」の電話を別に設けているのか、その説明責任を果たしてもらいたい。