9月16日、菅義偉新政権が発足した。その1か月前には誰も予想しなかった政権の誕生である。突如、安倍総理が持病の「潰瘍性大腸炎」の悪化を理由に総理総裁を辞任することを発表したあと、急浮上した後継候補が菅官房長官だった。7年8か月に及ぶ長期政権を官房長官として支えてきた菅氏が、安倍路線を継承するのに最もふさわしいというのが菅氏を支援することにした自民党内5派閥の口実である。14日に自民党総裁に当選したときも、16日の首班指名選挙で総理になったときも、記者会見の場で記者たちからもっとも問われたのは外交を担当したことがないことへの不安だった。菅氏は、「7年8か月、安倍政権の官房長官として安倍外交をずっとそばで見てきた」と反論したが、そんなことは別に気にするほどのことではない。現に安部前総理は第1次政権を樹立する前に担当した役職は官房副長官(森政権)、幹事長(小泉政権)、官房長官(小泉政権)だけで、外交も経済も担当したことはなかった。だけど、「外交の安倍」と呼ばれたし、アベノミクスというおかしな経済政策で長期政権を維持してきた。むしろ、外交にしろ経済にしろ、あまり「安倍路線の継続」にとらわれない方がいいと私は思っている。
●菅新政権は安倍政権の継承ではないかも⁉
確かに日本の官房長官は他国の報道官と違って、単なる政府のスポークスマンではない。総理の「女房」役として総理の相談相手になったり、時にはアド
バイスしたりもする、言うなら「総理の分身」のような存在だ。それだけに、菅氏が後継総理総裁になるということは、自身も主張しているように「安倍路線の継承」が最大の任務になるはずだった。が、どうやら安部路線の継承にとどまるような政治家ではないかもしれない。
総裁選中、菅氏は「自助・共助・公助」を自らの政治姿勢としてアピールしていた。当たり前と言えば当たり前すぎる、ほとんどスローガンとして意味を持たないような代物だ。立憲民主党の枝野氏は「自助」を最初に持ってきたことに対して「自己責任を強調する新自由主義だ」と批判したが、言葉尻をとらえるような批判はかえって国民の反発を買う。菅氏はこうした批判に反発を示さなかったが、私だったら「では共助や公助を優先しろというのか」と切り返していた。
もっとも菅氏は大差で首班指名選挙で総理が確定するや、組閣に当たって「改革」を強烈に打ち出し始めた。それも単なるスローガンだけでなく、携帯電話の料金値下げを恫喝的に迫ったり、地銀の統廃合を示唆したり、デジタル庁を新設して縦割り行政の打破に立ち向かおうという姿勢を明らかにした。縦割り行政の打破はこれまでの政権もスローガンとしては掲げてきたが、実際には強固な官僚組織に手を付けられなかった。
安倍前総理が官僚の人事権を内閣府が掌握して、内閣府に、本来なら厚労省が担当すべき新型コロナ対策の担当大臣を置いたり、また本来なら経産省が担当すべき経済再生の担当大臣をやはり内閣府に置いたり(ともに担当相は西村氏)、二重行政で内閣府が官僚組織の縦割り行政を破壊してきた。その結果、西村氏にあまりにも大きな権限が集中しすぎて、メディアもしっちゃかめっちゃかになってしまった。たとえば西村氏の肩書について、緊急事態宣言中は「新型コロナ感染対策担当相」としていたのが、宣言解除後は西村氏がコロナ感染拡大防止対策について発言しているときでも「経済再生担当相」という肩書を付けるなど、私はNHKや朝日新聞にいやというほどクレームを付け続けたが、最後までメディアは鈍感だった。
私自身は菅組閣で一番注目していたのが西村氏の扱いだった。一時は官房長官の菅氏の影が薄くなるほどコロナ対策と経済再生両立の中心人物として権限が集中し、菅氏との関係もぎくしゃくしているのではないかといった憶測も飛んでいたほどの西村氏をどう処遇するかで、菅政権と安倍政権の距離感を見定めようと思っていた。実際、組閣のふたが空いたら西村氏はいちおう内閣府の特命担当大臣として残りはしたが、安倍政権では担当を四つも持っていたのに、菅内閣では「経済財政政策」という、ラインではなくスタッフとしての特命担当大臣に押し込められた。明らかに菅政権は安倍政権の継承ではなく、自らの路線を新しく敷こうとしている。それにメディアが気付かないだけだ。
実際、菅氏が総裁選で大勝利を収めた直後の記者会見では、菅氏が今後総理大臣として「安倍路線」をどう進めていくのかを語ることはなかったし、記者たちからの質問もせいぜい「モリカケ問題」や「桜を見る会」などのスキャンダル問題についての質問が大半を占めた。「桜を見る会」は中止するということだが、記者からは「廃止ではないのか」という質問すら出なかった。「廃止」は復活することはないが、「中止」はそれなりの理由さえつければ、いつでも復活できる。菅政権が取り組むべき安倍政権の「負のレガシー」に、どれだけ手腕を振るえるかが、安定政権を築けるか否かにかかわっている。
●菅政権が取り組むべき、安倍政権の四つの「負のレガシー」
安倍政権の「負のレガシー」は、大きく分けて四つある。一つはスキャンダルまみれの8年間。モリカケ疑惑から始まり、桜を見る会、検察庁改革に名を借りた検察最高人事への露骨な介入、河合杏里氏への巨額な選挙資金提供など、表面化した問題だけでもこれだけある。が、これらの問題は他のメディアがこれからもしぶとく追及していくだろうし、私には特別な情報源があるわけでもないから私の手におえる問題ではない。スキャンダル・レガシーの追及は週刊誌やテレビのニュースショーにお任せする。
二つ目は「アベノミクス」と自らも称してきた経済政策の失敗だ。アベノミクスの目的はあくまで「デフレ不況」からの脱出であり、そのために日銀・黒田総裁とタッグ・マッチで超金融緩和政策を7年8か月にわたって続けてきた(今も継続中)。確かに大企業は史上空前の利益を計上し、株価もバブル期に比べれば足元にも及ばないが、少なくともリーマン・ショック時からはかなり回復した。コロナ禍で雇用状況は悪化したが、その前はバブル期に匹敵するくらいの売り手市場になり、安倍前総理は「アベノミクスで400万人超の雇用を生んだ」と胸を張ったが、アベノミクスは株価対策や雇用対策のための政策ではなかったはずだ。肝心の目的である「デフレ脱却」「2%の消費者物価上昇」という目的はどうなったのか。
三つめが集団的自衛権行使を可能にした安保法制で、かえって米トランプ大統領から足元を見られて「在日米軍経費をもっと負担しろ」とまで要求されるに至った安全保障政策だ。安倍政権は安全保障の柱として「抑止力」を最重要視しているが、日本が「抑止力」の名のもとに敵基地攻撃の軍事力を強めれば、それは近隣諸国にとっては直ちに「脅威」となる。安倍政権が、別に日本を標的にしたわけでもない北朝鮮の核・ミサイルの開発を脅威ととらえてきたことを考えれば、日本の軍事力強化を近隣諸国が脅威と感じない方がおかしいだろう。そもそも軍拡競争は、お互いに「抑止力」を口実にすることで激しくなるのが常だ。政治家もメディアもそのくらいの常識はわきまえてほしい。
四つ目は拉致問題や北方領土問題など外交案件を何ひとつ解決できなかったこと。一時は「外交の安倍」と言われるほど世界中を飛び回ったが、国内政治と同様、各国首脳と「お友達」関係を築くことが目的だったのか。そう言われても仕方がないほど、見るべき外交成果はほとんどない。確かに安倍さんは歴代総理のなかではギネスものと言ってもいいほど外国歴訪に熱心だったが、外交成果として何があっただろうか。核禁条約にも反対し続けたが、「核保有国と非保有国の橋渡し」としてどんな国際的役割を果たしてくれたのか。「橋渡し」という以上、核非保有国に「我慢しろ」では通るわけがないことくらい子供でも理解できる。お友達のトランプに「お前、もう核やめろ」となぜ言えない。
●意外に高い菅政権への評価
毎日新聞と社会調査研究センターは17日、JNN(TBS系列のテレビニュース・ネットワーク)と共同で菅新内閣の緊急世論調査を実施した。内閣支持率は64%と高く(第2次安倍政権発足時は52%)、菅総理が強調してきた庶民派のイメージ作りが成功したのかもしれない。また自分自身の実績として総務相時代に創設した「ふるさと納税」を世論誘導に利用した作戦が成功したのかもしれない。
あるいは、安倍前総理が辞任表明した途端、危険水域まで下落していた内閣支持率が大幅に反発した流れに乗れたのかもしれない。いずれにせよ、菅新政権への期待は、何かを変えてくれそうな予感を国民が抱いた結果かもしれない。
ただ政治はあくまで結果であり、どう結果を出すかがこれから問われることになる。毎日系の世論調査で注目すべきは、これまでの世論調査で常にトップだった「ほかの内閣よりよさそうだから」という消去法的支持選択だったのが、今回は支持理由のトップが「政策に期待が持てそうだから」で35%を占めた。かつて内閣支持の理由で「政策への期待」がトップになったのは細川政権の時と民主党政権の時くらいで、圧倒的勢力を誇る与党に対する支持理由のトップに「政策への期待」という消去法ではない積極的支持理由が出ることはまずない。ふつう2番目の支持理由になるのは「人柄が信用できそうだから」で、「政策への期待」は相当ランクが低いのが常だ。与党政権の発足で「政策への期待」が高まったのは田中角栄総理誕生の時以来ではないか。
ただ、菅政権の支持理由の2番目には「安倍政権の路線を引き継いでくれそうだから」が30%を占め、ちょっとちぐはぐな感じがしないでもない。
というのは、「政策への期待」は改革を求めての期待であり、菅総理自身、組閣に当たって「改革」をかなり強調しており、現状維持を意味する「安倍政権の路線継承」とは相反する理由になるからだ。
3位には「人柄に好感が持てる」が入り27%を占めた。これは秋田の田舎から高校を卒業して上京・就職し、苦学して法政大学を卒業したという、田中角栄に似た「立志伝」的人物像がメディアとくに民放のニュースショーによって植え付けられたせいかもしれない。
安倍路線を文字通り継承するのかどうかは、今後の経緯を見てみないとわからないが、少なくとも安倍氏が全幅の信頼を置いていたとみられる西村氏を表舞台から遠ざけたことが、今後の政権運営にどういう影響を及ぼすか。いちおう形の上では二重行政は消去できたが、厚労省や経産省の官僚が政治家の顔色を窺わなくてもいいような状況を作り出せるか、霞が関が「忖度村」から脱出させることが菅政権の最初の仕事になる。
これから否応なく菅政権が取り組まざるを得ない安倍政権の「負のレガシー」を何回かにわたって検証していく。
●菅新政権は安倍政権の継承ではないかも⁉
確かに日本の官房長官は他国の報道官と違って、単なる政府のスポークスマンではない。総理の「女房」役として総理の相談相手になったり、時にはアド
バイスしたりもする、言うなら「総理の分身」のような存在だ。それだけに、菅氏が後継総理総裁になるということは、自身も主張しているように「安倍路線の継承」が最大の任務になるはずだった。が、どうやら安部路線の継承にとどまるような政治家ではないかもしれない。
総裁選中、菅氏は「自助・共助・公助」を自らの政治姿勢としてアピールしていた。当たり前と言えば当たり前すぎる、ほとんどスローガンとして意味を持たないような代物だ。立憲民主党の枝野氏は「自助」を最初に持ってきたことに対して「自己責任を強調する新自由主義だ」と批判したが、言葉尻をとらえるような批判はかえって国民の反発を買う。菅氏はこうした批判に反発を示さなかったが、私だったら「では共助や公助を優先しろというのか」と切り返していた。
もっとも菅氏は大差で首班指名選挙で総理が確定するや、組閣に当たって「改革」を強烈に打ち出し始めた。それも単なるスローガンだけでなく、携帯電話の料金値下げを恫喝的に迫ったり、地銀の統廃合を示唆したり、デジタル庁を新設して縦割り行政の打破に立ち向かおうという姿勢を明らかにした。縦割り行政の打破はこれまでの政権もスローガンとしては掲げてきたが、実際には強固な官僚組織に手を付けられなかった。
安倍前総理が官僚の人事権を内閣府が掌握して、内閣府に、本来なら厚労省が担当すべき新型コロナ対策の担当大臣を置いたり、また本来なら経産省が担当すべき経済再生の担当大臣をやはり内閣府に置いたり(ともに担当相は西村氏)、二重行政で内閣府が官僚組織の縦割り行政を破壊してきた。その結果、西村氏にあまりにも大きな権限が集中しすぎて、メディアもしっちゃかめっちゃかになってしまった。たとえば西村氏の肩書について、緊急事態宣言中は「新型コロナ感染対策担当相」としていたのが、宣言解除後は西村氏がコロナ感染拡大防止対策について発言しているときでも「経済再生担当相」という肩書を付けるなど、私はNHKや朝日新聞にいやというほどクレームを付け続けたが、最後までメディアは鈍感だった。
私自身は菅組閣で一番注目していたのが西村氏の扱いだった。一時は官房長官の菅氏の影が薄くなるほどコロナ対策と経済再生両立の中心人物として権限が集中し、菅氏との関係もぎくしゃくしているのではないかといった憶測も飛んでいたほどの西村氏をどう処遇するかで、菅政権と安倍政権の距離感を見定めようと思っていた。実際、組閣のふたが空いたら西村氏はいちおう内閣府の特命担当大臣として残りはしたが、安倍政権では担当を四つも持っていたのに、菅内閣では「経済財政政策」という、ラインではなくスタッフとしての特命担当大臣に押し込められた。明らかに菅政権は安倍政権の継承ではなく、自らの路線を新しく敷こうとしている。それにメディアが気付かないだけだ。
実際、菅氏が総裁選で大勝利を収めた直後の記者会見では、菅氏が今後総理大臣として「安倍路線」をどう進めていくのかを語ることはなかったし、記者たちからの質問もせいぜい「モリカケ問題」や「桜を見る会」などのスキャンダル問題についての質問が大半を占めた。「桜を見る会」は中止するということだが、記者からは「廃止ではないのか」という質問すら出なかった。「廃止」は復活することはないが、「中止」はそれなりの理由さえつければ、いつでも復活できる。菅政権が取り組むべき安倍政権の「負のレガシー」に、どれだけ手腕を振るえるかが、安定政権を築けるか否かにかかわっている。
●菅政権が取り組むべき、安倍政権の四つの「負のレガシー」
安倍政権の「負のレガシー」は、大きく分けて四つある。一つはスキャンダルまみれの8年間。モリカケ疑惑から始まり、桜を見る会、検察庁改革に名を借りた検察最高人事への露骨な介入、河合杏里氏への巨額な選挙資金提供など、表面化した問題だけでもこれだけある。が、これらの問題は他のメディアがこれからもしぶとく追及していくだろうし、私には特別な情報源があるわけでもないから私の手におえる問題ではない。スキャンダル・レガシーの追及は週刊誌やテレビのニュースショーにお任せする。
二つ目は「アベノミクス」と自らも称してきた経済政策の失敗だ。アベノミクスの目的はあくまで「デフレ不況」からの脱出であり、そのために日銀・黒田総裁とタッグ・マッチで超金融緩和政策を7年8か月にわたって続けてきた(今も継続中)。確かに大企業は史上空前の利益を計上し、株価もバブル期に比べれば足元にも及ばないが、少なくともリーマン・ショック時からはかなり回復した。コロナ禍で雇用状況は悪化したが、その前はバブル期に匹敵するくらいの売り手市場になり、安倍前総理は「アベノミクスで400万人超の雇用を生んだ」と胸を張ったが、アベノミクスは株価対策や雇用対策のための政策ではなかったはずだ。肝心の目的である「デフレ脱却」「2%の消費者物価上昇」という目的はどうなったのか。
三つめが集団的自衛権行使を可能にした安保法制で、かえって米トランプ大統領から足元を見られて「在日米軍経費をもっと負担しろ」とまで要求されるに至った安全保障政策だ。安倍政権は安全保障の柱として「抑止力」を最重要視しているが、日本が「抑止力」の名のもとに敵基地攻撃の軍事力を強めれば、それは近隣諸国にとっては直ちに「脅威」となる。安倍政権が、別に日本を標的にしたわけでもない北朝鮮の核・ミサイルの開発を脅威ととらえてきたことを考えれば、日本の軍事力強化を近隣諸国が脅威と感じない方がおかしいだろう。そもそも軍拡競争は、お互いに「抑止力」を口実にすることで激しくなるのが常だ。政治家もメディアもそのくらいの常識はわきまえてほしい。
四つ目は拉致問題や北方領土問題など外交案件を何ひとつ解決できなかったこと。一時は「外交の安倍」と言われるほど世界中を飛び回ったが、国内政治と同様、各国首脳と「お友達」関係を築くことが目的だったのか。そう言われても仕方がないほど、見るべき外交成果はほとんどない。確かに安倍さんは歴代総理のなかではギネスものと言ってもいいほど外国歴訪に熱心だったが、外交成果として何があっただろうか。核禁条約にも反対し続けたが、「核保有国と非保有国の橋渡し」としてどんな国際的役割を果たしてくれたのか。「橋渡し」という以上、核非保有国に「我慢しろ」では通るわけがないことくらい子供でも理解できる。お友達のトランプに「お前、もう核やめろ」となぜ言えない。
●意外に高い菅政権への評価
毎日新聞と社会調査研究センターは17日、JNN(TBS系列のテレビニュース・ネットワーク)と共同で菅新内閣の緊急世論調査を実施した。内閣支持率は64%と高く(第2次安倍政権発足時は52%)、菅総理が強調してきた庶民派のイメージ作りが成功したのかもしれない。また自分自身の実績として総務相時代に創設した「ふるさと納税」を世論誘導に利用した作戦が成功したのかもしれない。
あるいは、安倍前総理が辞任表明した途端、危険水域まで下落していた内閣支持率が大幅に反発した流れに乗れたのかもしれない。いずれにせよ、菅新政権への期待は、何かを変えてくれそうな予感を国民が抱いた結果かもしれない。
ただ政治はあくまで結果であり、どう結果を出すかがこれから問われることになる。毎日系の世論調査で注目すべきは、これまでの世論調査で常にトップだった「ほかの内閣よりよさそうだから」という消去法的支持選択だったのが、今回は支持理由のトップが「政策に期待が持てそうだから」で35%を占めた。かつて内閣支持の理由で「政策への期待」がトップになったのは細川政権の時と民主党政権の時くらいで、圧倒的勢力を誇る与党に対する支持理由のトップに「政策への期待」という消去法ではない積極的支持理由が出ることはまずない。ふつう2番目の支持理由になるのは「人柄が信用できそうだから」で、「政策への期待」は相当ランクが低いのが常だ。与党政権の発足で「政策への期待」が高まったのは田中角栄総理誕生の時以来ではないか。
ただ、菅政権の支持理由の2番目には「安倍政権の路線を引き継いでくれそうだから」が30%を占め、ちょっとちぐはぐな感じがしないでもない。
というのは、「政策への期待」は改革を求めての期待であり、菅総理自身、組閣に当たって「改革」をかなり強調しており、現状維持を意味する「安倍政権の路線継承」とは相反する理由になるからだ。
3位には「人柄に好感が持てる」が入り27%を占めた。これは秋田の田舎から高校を卒業して上京・就職し、苦学して法政大学を卒業したという、田中角栄に似た「立志伝」的人物像がメディアとくに民放のニュースショーによって植え付けられたせいかもしれない。
安倍路線を文字通り継承するのかどうかは、今後の経緯を見てみないとわからないが、少なくとも安倍氏が全幅の信頼を置いていたとみられる西村氏を表舞台から遠ざけたことが、今後の政権運営にどういう影響を及ぼすか。いちおう形の上では二重行政は消去できたが、厚労省や経産省の官僚が政治家の顔色を窺わなくてもいいような状況を作り出せるか、霞が関が「忖度村」から脱出させることが菅政権の最初の仕事になる。
これから否応なく菅政権が取り組まざるを得ない安倍政権の「負のレガシー」を何回かにわたって検証していく。