小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

総務省に物申す(Ⅱ) 郵便料金値上げに敢えて反対するわけではないが…

2023-12-20 01:15:38 | Weblog
前回のブログに続いて総務省が抱える問題点を検証する。そのため記事のタイトルも【総務省に物申す Ⅱ】とした。
前回は6G対応の携帯電話共同基地局建設構想について注文を付けたが、今回は郵便事業に対する無能な行政について問題点を指摘する。
まずは直近のはがき・定形郵便物の料金値上げ問題についてから。

●小泉元総理は元祖「一強体制」の構築者だった
小泉元総理の功罪について、私はもう少し若かったら総検証したいのだが、日本人男性の平均寿命をすでに超えた今では正直、体力的に無理だ。が、なぜか私の論理的思考力だけはむしろ発展途上状態にあるようだ。
私事だが、今年9月熱中症で入院した病院で、1日ぽけっとテレビやスマホのネット記事を見ているだけでは刺激がなく、談話室においてあった「数独」パズルに初めて取り組んで、その面白さにはまった。
もちろん私が若かったころは「数独」パズルなどなかった。将棋や碁といった古くからある頭脳ゲーム以外に私が若いころ盛んだったのはオセロとルービックキューブくらい。いまはさまざまな脳トレ・パズルが開発され、私が通っているディサービス事業所にもいろいろな脳トレ・パズルが置いてあり、また事業所管理者が高齢者の脳力低下防止に熱心なこともあり、そうしたパズルにのめりこんだことも今の私の思考力に大きな影響を与えていると思う。
私事はさておいて、「思い込み」がいかに危険か、これ以上ない事例が小泉氏の「郵政民営化」だった。私は郵便局とりわけ地方の旧特定郵便局で生じた「かんぽ生保」の詐欺的商法を生んだのは小泉「郵政民営化」の「負の遺産」の一つであること、また「安倍一強体制」のルーツが「小泉一強体制」にあったことは、これまでもすでにこのブログで明らかにしてきたが、これからも私の思考力が衰えない限り「民主主義とは何か」や「官と民との健全な関係はどうあるべきか」をブログで論理的検証をしていきたいと思っている。

政府の郵政民営化への取り組みは1990年代に生じた。第1次橋本内閣がスタートさせた「行政改革会議」で行政改革の目玉になったのが郵政民営化だった。公共事業の民営化はすでに中曽根内閣の時代に国鉄や電電公社などの民営化で実現していたが、中曽根内閣では民営化し損ねた公共事業体が4つあった。その一つが郵政民営化であり、公共放送事業体のNHKである。なお日本高速道路公団と日本住宅供給公社はその後、民営化された。
小泉氏にとって郵政民営化は1979の大蔵政務次官就任時からの念願であり、宮沢内閣の郵政大臣時代、橋本内閣の厚生労働大臣時代にも強く主張し続けていた。ちなみに厚労省はいま責任能力を完全に喪失しつつあるが、これも小泉氏の「負の遺産」の一つである可能性が強いと思う。
2001年4月、総理に就任した小泉氏は、自らの政治生命を賭して郵政民営化に乗り出した。郵政民営化関連法案は2005年7月5日、わずか5票差で衆院を通過したが、8月8日には参院で否決された。両院とも自民党本部は議員に党議拘束をかけていたが、かなりの造反議員が続出したとみられている。衆院で可決した法案が参院で否決されても、衆院で再可決すれば、衆院優位の制度があるため法案は成立するのだが、参院で否決されたこの場合は衆院での再可決が困難と予想され、小泉氏は衆院を解散し「国民に信を問う」挙に出た。

●小泉元総理はこうして「一強体制」を築き、その手法を安倍氏が踏襲
特定郵便局の局長は地方では名士扱いされており(代々世襲が原則)、自民党議員にとっては有力な選挙基盤となっている。その利権にメスを入れる郵政民営化は地元に有力な地盤・看板・金バンに恵まれない議員たちにとっては、郵政民営化は自分の選挙にとっては死活を制しかねない重要問題になる。
労働政務次官など政府の要職を歴任した東京都・練馬区の小林興起衆院議員(当時)も、小泉「郵政民営化」に反旗を翻した一人。そうした反郵政民営化議員を小泉氏は「党議拘束違反」を名分に除名処分にして、造反議員の選挙区には刺客候補を落下傘擁立するという強硬手段に出た。私の名前と多少似ているので間違えられることが多い興起議員の選挙区には現東京都知事の小池百合子氏をぶつけた。
2005年9月11日に実施された総選挙では「郵政民営化」を支持した与党立候補者が衆院で3分の2を超える圧勝になった(ただし公明党は3議席減)。その結果、小泉氏は「一強体制」を確立、以降、小泉総理に歯向かう議員は影をひそめることになった。
この「小泉手法」を利用して「一強体制」を築くことに成功したのが安倍元総理だ。モリカケ問題で窮地に陥っていた安倍氏に、北朝鮮の金正恩がとんでもないプレゼントを(意図せずに)贈った。2011年9月、米韓合同軍事演習に抗議して、日本の襟裳岬上空をかすめるミサイルを発射したのだ。日本に対する敵視政策でもなければ、日本攻撃の意図も全くなかった北朝鮮のミサイル発射だったが、安倍氏にとっては「棚ボタ」的プレゼントになった。
安倍氏はすぐ反応し、「戦後日本の最大の危機」と国民の危機感をあおり、突如、解散に打って出たのだ。私に言わせれば「疑惑隠し解散」だが、安倍氏は「国難突破解散」とアドバルーンをぶち上げた。ただでさえ日本国民は拉致問題などをめぐって北朝鮮に好感情は持っていない。そうしたことも重なってこの年の総選挙で自民党は圧勝し、安倍氏は「一強体制」を築いたのだ。
大半のメディアは安倍氏を「一強体制の元祖」のように扱っているが、元祖「一強体制」の構築者は小泉氏であった。小泉氏の場合、比較的メディアから好感を持たれていたため、小泉氏が遺した「負の遺産」にはあまり関心を寄せないようだ。いま、岸田内閣の支持率が低下の一途をたどっているが、何か「棚ボタ」的プレゼントが舞い込んできて、岸田氏が解散総選挙に打って出て自民が圧勝でもすれば、岸田氏も小泉・安倍氏に次ぐ「三代目組長(間違えた、組長ではなく一強)になれるかもしれない。いまのところ、そうした「神頼み」は期待薄のようだが…。

●はがきは85円、定形郵便(現在84円と94円)が110円に
12月18日、総務省は通常郵便料金の大幅値上げを決めた。はがきは現行の63円を85円に、定形郵便物は現行84円(25グラム以下)と94円(50グラム以下)だったのを一本化して110円に値上げするというのだ。消費税部分を除けば本体の値上げは30年ぶりだという。
総務省は現状の郵便料金のままだと4年後には日本郵便の赤字が3000億円超に膨らむと見込んでいるようだが、毎日新聞によると値上げしても2026年には再び赤字体質になるという。
私は値上げそのものには必ずしも反対ではない。問題は郵政事業を民営化しながら経営の自由度をほとんど認めていない政府の郵政政策だ。
そもそも小泉「郵政民営化」の目的は、「民ができることは民に」という「官と民のすみわけ」による公共事業の効率化にあった。
その「建て前」だけは悪くない。実際、国鉄の民営化ではかなりの経営自由度をJR5社に認めたし、実際、JR各社は赤字路線をどんどん切り捨ててバス事業に転換したり、「どうしても残してほしい」という地元の要請が強い地域では「第3セクター」に移して地元にも鉄道を維持するための負担を求めてきた。赤字路線を合理化することで、黒字路線のサービスを充実させライバルの航空各社との競争でも有利に立っている。
電電公社も民営化して東西NTTや携帯電話のドコモ、フリーダイヤルやナビダイヤルなどNTTが提供するサービスとの競争関係を作り、またかけ放題携帯電話やIP電話に対抗して来年から市外電話料金体系を廃止して市内・市外の電話料金を一本化することで固定電話の競争力を回復しようとしている。
が、郵政民営化ではこうしたメリットが全く生じていない。小泉氏はヤマトに郵便事業参入の期待を寄せていたようだが、「信書」は扱えない、参入する条件として「全国規模で集配事業を行う」というユニバーサル・サービスを義務付けたため、ヤマトは参入を取りやめたことがある。
たまたま大和はセブン・イレブンと提携してメール便という新業態を開発し、一時は大成功を収めつつあった。が、配達でトラブルが続出した。ヤフオクなどのネット・オークションで商品券や株主優待券などの金券類をヤマトと契約した配達人がネコババするケースが頻発し(私も被害にあった)、メール便の信頼が喪失したためである。実際、私は地元の郵便局管理職の方から聞いたことがあるが、封筒をさすっただけで中身が金券類だとわかるようだ。
またメール便に限らず、配達先が過疎地の場合、ヤマトは(ヤマトに限ったことではないが)丸損承知で郵便局に丸投げしてしまうようだ。
そこで常に出てくるのが「弱者切り捨てでいいのか」という議論である。
答えにくい議論ではある。数学的に言えば「最大公約数」を重視するか「最小公倍数」を重視するのかという議論にならざるを得ないのだが、正解はない。
かつて所得倍増計画を強力に進めた故・池田隼人元総理は「貧乏人は米を食え」「中小企業の一つや二つ潰れても」と最大公約数的発言をして顰蹙を買ったことがあるが、国民全員が同じ付加価値を上げられる仕事をして、報酬も同じといった社会環境が仮に実現したとしても、居住環境もすべて平等などということは実現不可能だろう。
正論(社会的に大きな損失を伴うようなケースでは弱者切り捨てもやむを得ない)が堂々と言えない政治の世界。そして「一強体制」を構築しながらも、地盤・看板・金バンに弱い議員のために敢えて非効率なユニバーサル・サービスを日本郵便に押し続けてきた小泉「郵政改革」。その付けをわれわれ国民が負わされる時が来たのが郵便料金の大幅値上げだ。

●日本郵便にユニバーサル・サービスを押し付けるな
江戸時代と違って、日本国民はどこに住もうと国家権力にとやかく言われる筋合いはない。自然の恵みや住み慣れた土地に愛着して過疎地に住み続けるのも国民一人ひとりの自由だし権利でもある。ただし、そういう人たちは都市並みの生活利便性は期待できない。
携帯普及率が延べではとっくに100%を超えている日本。実際には持っていない人もいるが、複数台を使い分けている人がかなりいるので延べ普及率は100%超えになる。そういう時代にアナログのはがきや手紙の集配に、過疎地に住む住民にも都市部と同等の利便性を保証するというのが日本郵便に課せられたユニバーサル・サービスだ。そんな非効率で非合理なことをやっている国は、少なくとも先進国では日本だけだと思う。
経済に限らず、需要と供給のバランスをどうとるかで、その国の民主主義についての成熟度が試される。過疎地の住民にとって生活の利便性の面での最も優先事項は郵便物の集配だろうか。
郵便物の集配なんか、毎日ではなくてもいい。ある程度にぎやかな街に出ないと買い物に不自由だし、クルマを持っていて自ら交通の利便性を確保している人は別として、そうではない人たちにとっては最も利便性を高めてもらいたいと思っていることは買い物か交通の利便性(できれば両立)だろう。郵便物の集配なんか、週に1回で十分という地域が、いわゆる過疎地なのだ。
弱者切り捨てに反対というなら、社会的弱者が本当に必要としている利便性を何とか実現するのが本来の政治の仕事ではないか。

この稿の締めくくりに入る。
郵政民営化を実現している欧米先進国は郵便物の集配についてユニバーサル・サービスを郵便事業者に押し付けてはいない。それぞれの地域の人口に応じて集配間隔を決める自由度を有しており、大都市部は毎日、地方都市は週3回、人口が少ない地域は週1~2回と集配間隔に差をつけている。そのことによって大半の事業所が黒字になるように経営の自由度が担保されている。
そうなると郵政民営化はだれのための行政だったのか、そういう疑問をなぜメディアは持たないのか。
すでに述べたように、地方に多い旧特定郵便局の局長はその地域の名士であり、選挙の時の巨大な集票機関である。つまり国会議員の集票機関としてどうしても維持しなければならないのがユニバーサル・サービスなのだ。
郵便局に過度の重荷を背負わせたりしなければ、かんぽ生保の詐欺は生まれなかった。職員が自分の成績を上げるために自己責任で詐欺的行為に走るケースはかんぽ生保だけでなく、民間の保険会社や他の業界でもしばしばみられるが、大規模かつ組織的な詐欺行為が横行した背景には郵便局とりわけ地方の旧特定郵便局の負担増が背景にあることを総務省は明確に認識すべきだろう。

ここまででかなりの文字数になって、私も疲れた。NHKの問題については多分次回のブログに書く。
一つだけ書いておくが、NHKは受信料を10%下げた。経営努力によって値下げを実現したのかと思いきや、とんでもない詐欺値下げだった。というのは12月以降、BSは1波だけになった。地上波2波と合わせて現在NHKが放送しているのは3波である。つまり視聴者に対する公共放送サービスは4分の3に縮小した。職員数も4分の1を削減したというなら値下げ10%も経営努力として評価するにやぶさかではないが、職員数は維持しているようだ。

【追記】上記記事の原稿は18日午後2時半頃には完成していた。ブログへのアップは翌19日早朝に行う予定だったが、偶然にもその日の午後7時のニュースおよびニュースウォッチ9でNHK自から社会部職員が私的飲食費を取材と称して不正に着服していたことを報じた。
 私は個人のスキャンダルは現役時代も扱ってこなかったし、スキャンダル記事を売り物にするようなジャーナリストにはならないことを基本的スタンスとしてきた。ただし組織的スキャンダルは組織の体質に基づくケースが多く、そのようなケースはスキャンダルを生む組織的体質は検証記事を書いてきた。
 今回のNHK社会部の使い込みスキャンダルも、一種の奢り体質の内部腐食が進行しつつあるという懸念を持たざるを得ない。NHKという巨大組織を維持するためのなりふり構わぬ方策が今回の値下げ詐欺という新詐欺手法を生んだとも考えられる。午後6時台の『首都圏ニュース』の「私たちは騙されない」で、NHK自らが開発した「値下げ詐欺」という新手法の解明を求めたい。
 なおNHKの受信料問題をブログで書くのは初めてだが、実はNHKふれあいセンター(東京・渋谷の放送センターではなく川崎・武蔵小杉)の番組担当部門のスーパーバイザーや受信料担当部門の責任者、さらに東京・渋谷の放送センターの受信料部門の誰も私の主張には反論できなかった。
 【総務省に物申す Ⅲ】でNHK受信料制度の欺瞞性を明らかにする記事は新年早々にブログアップするつもりだが、この記事はNHKの経営を支えてきた受信料制度を根幹から揺るがす内容になる。乞うご期待。