安倍総理が、今国会の重要法案と位置づけていた「働き方改革」関連法案のうち、裁量労働制の拡大がとん挫した。厚労省が行った労働時間の実態調査がでたらめで、そのデータを根拠にして「裁量労働制の労働時間のほうが一般労働者の労働時間より短いというデータもある」と、国会で答弁した安倍総理の面目が丸つぶれになったためである。
どうしてそんなでたらめなデータが出てきたのか。厚労省の調査がずさんだったせいか。それとも「働き方改革」関連法案を何が何でも成立させるために、都合がいいようにデータをねつ造したためか。ねつ造したにしては、あまりにもお粗末なやり方と言えなくもないが、調査がずさんだったとすれば調査にかかわった職員や官僚は義務教育をちゃんと受けてきたのか、と疑いたくなるほどのひどさだ。
政府は調査をやり直して再度裁量労働制の拡大を法制化するとしているが、こんなでたらめな調査をした職員たちに再調査させても、国民は納得しないだろう。とにかく、一国の総理に赤っ恥をかかせた厚労省幹部の責任は軽くない。事務次官以下、責任を取って引責辞職に追い込まれる官僚の数がどのくらいになるか、見ものではある。
厚労省の責任問題はさておくとして、私は「働き方改革」の考え方そのものに少なからず疑問を抱いていた。
政府の産業競争力会議(議長・安倍総理)が、労働時間を基準に賃金を支払うのではなく、労働の成果に応じて賃金を支払うよう賃金制度を改めるという「成果主義賃金制度」導入の検討を開始したのは2014年5月である。私はこの時、3回にわたって(5月21~23日)『「残業代ゼロ」政策(成果主義賃金)は米欧型「同一労働同一賃金」の雇用形態に結び付けることができるか』と題するブログを書いた。少なくとも、この時期、安倍内閣は「同一労働同一賃金」を念頭には置いていなかった。ただ、労働界や野党から「残業代セロ政策」と批判された「成果主義賃金制度」を、その年6月に改定する予定だった成長戦略に盛り込むことだけしか考えていなかったようだ。
この時期の「成果主義賃金制度」は年収1000万円以上の従業員を対象にしたもので職種は問わず、また年収1000万円以下の従業員でも本人が同意すれば対象にできるというものだった。この構想が3年半たって、同一労働同一賃金制を前提にした裁量労働制と高度プロフェッショナル制度として「働き方改革」関連法案になったという経緯がある。
私は制度そのものに真っ向から反対しているわけではない。先進国の中で異常に低いと言われている日本人の労働生産性向上と、また異常に長いと言われている長時間労働体質の根本的改善につながるのであれば、大いに結構なことだと思ってはいる。
日本生産性本部の集計によれば、2016年の日本人の1時間当たり労働生産性(付加価値)はOECD加盟国35か国中20位で、主要先進7か国の最下位であった(データが取得可能な1970年以降連続最下位を記録中)。一人あたりの生産性はアメリカやドイツの3分の2である。
日本人の能力がそれだけ低いのであれば、他の先進国に比べて労働生産性が低くても仕方がないと思う。が、私も一人の日本人として、そんな自虐的な気持ちには到底なれない。日本人の能力が、世界に冠たるほど優れているとまではうぬぼれていないが、先進7か国中50年近くにわたって最低の労働生産性を記録しなければならないほどの低能民族とはいくらなんでも思えない。
だとしたら、どうすれば日本人の労働生産性を向上できるのか。安倍内閣の「働き方改革」で、日本人の労働生産性が格段に向上できるのか。労働生産性を向上させることができないような「働き方改革」は長時間労働の蔓延化と過労死の増加しか結果しないのではないだろうか。
で、私は安倍さんの頭の中を180度ひっくり返してみることにした。つまり、裁量労働制は、給与に見合った成果を上げることだけを従業員に約束させ、勤務時間管理は完全に廃止することにしたらどうか、と考えてみた。具体的には裁量労働制や高プロ対象の従業員は、出退勤自由、仕事をする場所も自由、給料は定額で残業代はないが、1日の労働時間の制約も一切ない。ただし、裁量労働制や高プロ対象の仕事は厳密に制御され、対象以外の労働に従事した場合は無条件に時間外労働の対象として割増賃金を支払わせる。
さらに、長時間労働が会社にとっても大きな負担になるように、時間外労働の割増賃金基準を大幅にアップする。現在の25%増は50%増に、50%増は100%増に引き上げる。そうすれば残業が多い会社は人件費倒産に追い込まれるから、多くの会社は例えば1か月の残業は30時間以内に制限するようになる。
つまり「働き方改革」から「働かせ方改革」に成長戦略のスタンスを180度ひっくり返すのだ。そうすれば、長時間労働も過労死問題も一気に解決する。こうして労働生産性をアメリカやドイツ並みにアップすれば、自動的に労働時間もいままでの3分の2に減らすことができる。
私自身の経験から、翌日まで疲労を持ちこさずに仕事に集中できる時間はせいぜい1日4~5時間である。それ以上仕事をすれば、間違いなく集中力は低下するし、能率も下がる。ミスも増える。日本人の労働生産性が低いのは、そのせいであることにそろそろ気がついてもいいころだ。つまり、部下を長時間働かせる上司は「無能」という烙印を押せるような社会環境に転換していくことが、すべての問題を解決する道だ。
どうしてそんなでたらめなデータが出てきたのか。厚労省の調査がずさんだったせいか。それとも「働き方改革」関連法案を何が何でも成立させるために、都合がいいようにデータをねつ造したためか。ねつ造したにしては、あまりにもお粗末なやり方と言えなくもないが、調査がずさんだったとすれば調査にかかわった職員や官僚は義務教育をちゃんと受けてきたのか、と疑いたくなるほどのひどさだ。
政府は調査をやり直して再度裁量労働制の拡大を法制化するとしているが、こんなでたらめな調査をした職員たちに再調査させても、国民は納得しないだろう。とにかく、一国の総理に赤っ恥をかかせた厚労省幹部の責任は軽くない。事務次官以下、責任を取って引責辞職に追い込まれる官僚の数がどのくらいになるか、見ものではある。
厚労省の責任問題はさておくとして、私は「働き方改革」の考え方そのものに少なからず疑問を抱いていた。
政府の産業競争力会議(議長・安倍総理)が、労働時間を基準に賃金を支払うのではなく、労働の成果に応じて賃金を支払うよう賃金制度を改めるという「成果主義賃金制度」導入の検討を開始したのは2014年5月である。私はこの時、3回にわたって(5月21~23日)『「残業代ゼロ」政策(成果主義賃金)は米欧型「同一労働同一賃金」の雇用形態に結び付けることができるか』と題するブログを書いた。少なくとも、この時期、安倍内閣は「同一労働同一賃金」を念頭には置いていなかった。ただ、労働界や野党から「残業代セロ政策」と批判された「成果主義賃金制度」を、その年6月に改定する予定だった成長戦略に盛り込むことだけしか考えていなかったようだ。
この時期の「成果主義賃金制度」は年収1000万円以上の従業員を対象にしたもので職種は問わず、また年収1000万円以下の従業員でも本人が同意すれば対象にできるというものだった。この構想が3年半たって、同一労働同一賃金制を前提にした裁量労働制と高度プロフェッショナル制度として「働き方改革」関連法案になったという経緯がある。
私は制度そのものに真っ向から反対しているわけではない。先進国の中で異常に低いと言われている日本人の労働生産性向上と、また異常に長いと言われている長時間労働体質の根本的改善につながるのであれば、大いに結構なことだと思ってはいる。
日本生産性本部の集計によれば、2016年の日本人の1時間当たり労働生産性(付加価値)はOECD加盟国35か国中20位で、主要先進7か国の最下位であった(データが取得可能な1970年以降連続最下位を記録中)。一人あたりの生産性はアメリカやドイツの3分の2である。
日本人の能力がそれだけ低いのであれば、他の先進国に比べて労働生産性が低くても仕方がないと思う。が、私も一人の日本人として、そんな自虐的な気持ちには到底なれない。日本人の能力が、世界に冠たるほど優れているとまではうぬぼれていないが、先進7か国中50年近くにわたって最低の労働生産性を記録しなければならないほどの低能民族とはいくらなんでも思えない。
だとしたら、どうすれば日本人の労働生産性を向上できるのか。安倍内閣の「働き方改革」で、日本人の労働生産性が格段に向上できるのか。労働生産性を向上させることができないような「働き方改革」は長時間労働の蔓延化と過労死の増加しか結果しないのではないだろうか。
で、私は安倍さんの頭の中を180度ひっくり返してみることにした。つまり、裁量労働制は、給与に見合った成果を上げることだけを従業員に約束させ、勤務時間管理は完全に廃止することにしたらどうか、と考えてみた。具体的には裁量労働制や高プロ対象の従業員は、出退勤自由、仕事をする場所も自由、給料は定額で残業代はないが、1日の労働時間の制約も一切ない。ただし、裁量労働制や高プロ対象の仕事は厳密に制御され、対象以外の労働に従事した場合は無条件に時間外労働の対象として割増賃金を支払わせる。
さらに、長時間労働が会社にとっても大きな負担になるように、時間外労働の割増賃金基準を大幅にアップする。現在の25%増は50%増に、50%増は100%増に引き上げる。そうすれば残業が多い会社は人件費倒産に追い込まれるから、多くの会社は例えば1か月の残業は30時間以内に制限するようになる。
つまり「働き方改革」から「働かせ方改革」に成長戦略のスタンスを180度ひっくり返すのだ。そうすれば、長時間労働も過労死問題も一気に解決する。こうして労働生産性をアメリカやドイツ並みにアップすれば、自動的に労働時間もいままでの3分の2に減らすことができる。
私自身の経験から、翌日まで疲労を持ちこさずに仕事に集中できる時間はせいぜい1日4~5時間である。それ以上仕事をすれば、間違いなく集中力は低下するし、能率も下がる。ミスも増える。日本人の労働生産性が低いのは、そのせいであることにそろそろ気がついてもいいころだ。つまり、部下を長時間働かせる上司は「無能」という烙印を押せるような社会環境に転換していくことが、すべての問題を解決する道だ。
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