かんぽ生命の不祥事が令和時代最初で、最大級の社会的問題になっている。なぜここまで不祥事が拡大してしまったのか。
郵政3事業を束ねる日本郵政は、今年4月かんぽ株の一部を売り出してかんぽ株の保有比率を89%から65%程度に引き下げた。一気に全発行株数の4分の1の株を放出したことになる。この時期かんぽ株は上場以来の最高値水準にあった。問題は全国の郵便局局員が詐欺まがい(間違い。反社会勢力以上の詐欺行為)で高齢者をだまし、手数料稼ぎに奔走したことを、今年4月のかんぽ株放出時前に、日本郵政グループトップが知っていたか否かということにある。
実は昨年4月24日、NHKは詐欺にあった被害者からの通報だけでなく相当数の内部告発を根拠に『クローズアップ現代』で、この詐欺商法を報道していた。今年ではなく、昨年だよ。しかもNHKは番組制作にあたり、郵政グループトップへの取材を申し入れていたが、取材に応じたのは日本郵便の佐野公紀常務執行役員で、佐野氏は取材に対して「信頼を失う行為が、少なくない数、起こっている。会社として非常に深刻。郵便局に対しての信頼を失ってはいけない。改めないといけない」と、NHKに寄せられた情報を肯定する発言をしている。昨年4月には日本郵便の常務執行役員が確認している社内の不祥事(また間違えた。反社会集団同様の詐欺行為)を、郵政グループのトップが全く知らずに今年4月に高値でかんぽ株を放出して、その株を購入した株主に対して巨額の損害を与えたことについての責任を取らないということは、日本郵政グループは山口組など暴力団以上の悪質詐欺集団と断定せざるを得ない。
暴対法では末端の組員の犯罪行為に対しても、組トップの責任を追及できるように、いまなっている。反社集団そこのけの詐欺行為を組織的に行ってきたことが明らかになった以上、日本郵政グループに対しても暴対法を適用すべきだ。とまでは私も極論するつもりはないが、日本郵政グループトップの責任は免れ得ない。おそらくかんぽ生命株を購入した株主からは損害賠償請求の集団訴訟が起こされることは間違いない。
ただ多少、日本郵政とくに中核の日本郵便には気の毒な面があったのも事実である。日本より早く郵便事業の民営化を始めてきたヨーロッパでも、郵便事業の赤字体質には悩まされてきた。例えば1994年に民営化されたスウェーデンは、同様に赤字に悩むデンマークと2009年に郵便事業を統合、直営郵便局を順次廃止して地域の食料品店やスーパーなどへの業務委託を進めると同時に(現在はほぼ100%業務委託を完了、直営郵便局は全廃されている。はがきや封書の料金も大幅にアップし、郵便物の集配も今では週1日に減らしている。これほどサービスを低下しても赤字は減らず、両政府からの補助金なしには事業継続が不可能になっている。
国鉄民営化の結果を見てみよう。それまでは赤字垂れ流し路線でも、国や地方自治体が赤字を補填していたが、民営化によって自助努力で何とかしろ、ということになった。結果JRは赤字路線の廃止や第3セクターへの移行によって新幹線など儲かる路線にサービスを集中することにより経営体質を改善できた。第3セクター路線は国鉄時代の統一距離制乗車賃から切り離され、乗車賃の引き上げや地域の魅力を独自に盛り込むなど、国鉄時代とは一味違う経営努力によって黒字路線化に成功してきた。そうしたことが郵便事業にはできなかった。封書やはがきなどのユニバーサル・サービス事業は世界中どこでも統一料金制をとらざるを得ない宿命にあったからだ。
通信というユニバーサル・サービス事業は、郵便物と電話の二つが主流だったが、いまはメールが加わり、しかも主流になりつつある。しかも郵便物にとってかつての競争相手だった固定電話は、道路1本隔てても隣接自治体地域への電話料金は市外料金が適用されている。固定電話の場合、地域ごとに設置されている交換機を経由するから、自動的に市外通話料金が計算されてしまうからだ。そうした地域料金制を郵便物の場合、採用できない。しかも郵便物の集配業務はほぼ100%労働集約型の業務だ。将来ドローンが集配業務を行うようになるかもしれないが、各家庭のポストへの配達は不可能になり、登録先のコンビニやスーパーでの集配にせざるを得なくなる。現在の郵便局はそのまま残すにしても、郵便局での郵便業務は激減できる。もちろん速達は廃止して(配達日を週1日にしている国は速達を廃止している)、小包を除き一般郵便物の料金は大幅にアップして統一する。小包の場合は現在でも料金を距離制にしている(郵便局の窓口でないと小包類は発送できないからだ)。
そうやって郵便事業の赤字を解消しない限り、全国各地の郵便局は郵便事業の赤字を埋めることができない。かんぽ生命の詐欺商法が蔓延した根本的な原因は郵便事業の赤字体質をどうするかという政策を考えずに、ただ民営化して競争原理を持ち込めば郵便局のサービスもよくなり、体質も強化されるだろうと安易な考えで行った郵政民営化による。ノルマに追われ高齢者をだましてまでかんぽで利益を上げざるを得ない状況に職員を追い込んだのは、まさに政治の貧困による。 もちろん郵便局職員の大幅削減も避けられないし、統廃合も大胆に進める必要もあるだろう。これまで親方日の丸体質でやってきた付けは、当然払わなければならない。
その一方で、はがきや封書の料金引き上げを規制してきた総務省も、発想を転換する必要がある。総務省の公務員もよく考えてもらいたい。先に書いたように郵便物の集配業務は、将来はドローンで行うようになるかもしれないが、現時点ではまだ典型的な労働集約型業務である。あなた方総務省の職員が、自分が郵便物を配達すると考えたとき、はがき1通62円、封書1通82円の報酬で配達業務をやれると思いますか。それも最終配達職員の手取り料金ではなく、最終配達するまでに相当のコストがかかっているはずで、仮に最終配達のコストを3分の2としてもはがき40円、封書55円程度の配達コストで郵便事業を賄えると思いますか。そういう状態を放置してきたことが、今回の組織的詐欺行為の底流にあったことを、総務省はしっかり認識してもらいたい。まず郵便物の集配コストにどのくらいかかっているかの徹底的調査と、現在の集配体制の見直しによるコスト削減、郵便局の統廃合やそれに伴う人員整理など、可能な限りの手を打って、将来も郵便物が減り続けることが必至な郵便事業をどう立て直すかの抜本的対策を構築することだ。
なお、郵政トップの引責辞任は免れ得ないとしても、郵政グループを反社会集団にしてしまったことは、単に引責辞任だけでは済まされない。これほど多くの被害者を組織的に出した行為は、たとえ意識的な行為ではなかったとしても、その犯罪性を問わないということはありえない。少なくともNHKが昨年4月にかんぽ生命の詐欺的商法を明らかにしていながら、今年7月10日での記者会見でかんぽ生命の植平光彦社長は「4月の(かんぽ生命株)売り出しのタイミングで問題は認識していなかった」と責任逃れの発言をしている。少なくとも昨年4月にNHKはかんぽ生命の佐野常務執行役員の証言をとっている。佐野常務が承知していて、植平社長は知らなかったですませられる話か。
ノルマに追われて高齢者に詐欺を働いた郵便局職員は、気の毒だとは思うが、自分が犯した犯罪行為でどれだけ多くの人を苦しめたか。人員整理の最初のターゲットになることは覚悟すべきだろう。ノルマに追われたあなたたちも被害者であることは私も認めないわけではないが、自分がノルマに追われて犯した罪は少なくとも法律が認める「正当防衛」ではない。
郵政3事業を束ねる日本郵政は、今年4月かんぽ株の一部を売り出してかんぽ株の保有比率を89%から65%程度に引き下げた。一気に全発行株数の4分の1の株を放出したことになる。この時期かんぽ株は上場以来の最高値水準にあった。問題は全国の郵便局局員が詐欺まがい(間違い。反社会勢力以上の詐欺行為)で高齢者をだまし、手数料稼ぎに奔走したことを、今年4月のかんぽ株放出時前に、日本郵政グループトップが知っていたか否かということにある。
実は昨年4月24日、NHKは詐欺にあった被害者からの通報だけでなく相当数の内部告発を根拠に『クローズアップ現代』で、この詐欺商法を報道していた。今年ではなく、昨年だよ。しかもNHKは番組制作にあたり、郵政グループトップへの取材を申し入れていたが、取材に応じたのは日本郵便の佐野公紀常務執行役員で、佐野氏は取材に対して「信頼を失う行為が、少なくない数、起こっている。会社として非常に深刻。郵便局に対しての信頼を失ってはいけない。改めないといけない」と、NHKに寄せられた情報を肯定する発言をしている。昨年4月には日本郵便の常務執行役員が確認している社内の不祥事(また間違えた。反社会集団同様の詐欺行為)を、郵政グループのトップが全く知らずに今年4月に高値でかんぽ株を放出して、その株を購入した株主に対して巨額の損害を与えたことについての責任を取らないということは、日本郵政グループは山口組など暴力団以上の悪質詐欺集団と断定せざるを得ない。
暴対法では末端の組員の犯罪行為に対しても、組トップの責任を追及できるように、いまなっている。反社集団そこのけの詐欺行為を組織的に行ってきたことが明らかになった以上、日本郵政グループに対しても暴対法を適用すべきだ。とまでは私も極論するつもりはないが、日本郵政グループトップの責任は免れ得ない。おそらくかんぽ生命株を購入した株主からは損害賠償請求の集団訴訟が起こされることは間違いない。
ただ多少、日本郵政とくに中核の日本郵便には気の毒な面があったのも事実である。日本より早く郵便事業の民営化を始めてきたヨーロッパでも、郵便事業の赤字体質には悩まされてきた。例えば1994年に民営化されたスウェーデンは、同様に赤字に悩むデンマークと2009年に郵便事業を統合、直営郵便局を順次廃止して地域の食料品店やスーパーなどへの業務委託を進めると同時に(現在はほぼ100%業務委託を完了、直営郵便局は全廃されている。はがきや封書の料金も大幅にアップし、郵便物の集配も今では週1日に減らしている。これほどサービスを低下しても赤字は減らず、両政府からの補助金なしには事業継続が不可能になっている。
国鉄民営化の結果を見てみよう。それまでは赤字垂れ流し路線でも、国や地方自治体が赤字を補填していたが、民営化によって自助努力で何とかしろ、ということになった。結果JRは赤字路線の廃止や第3セクターへの移行によって新幹線など儲かる路線にサービスを集中することにより経営体質を改善できた。第3セクター路線は国鉄時代の統一距離制乗車賃から切り離され、乗車賃の引き上げや地域の魅力を独自に盛り込むなど、国鉄時代とは一味違う経営努力によって黒字路線化に成功してきた。そうしたことが郵便事業にはできなかった。封書やはがきなどのユニバーサル・サービス事業は世界中どこでも統一料金制をとらざるを得ない宿命にあったからだ。
通信というユニバーサル・サービス事業は、郵便物と電話の二つが主流だったが、いまはメールが加わり、しかも主流になりつつある。しかも郵便物にとってかつての競争相手だった固定電話は、道路1本隔てても隣接自治体地域への電話料金は市外料金が適用されている。固定電話の場合、地域ごとに設置されている交換機を経由するから、自動的に市外通話料金が計算されてしまうからだ。そうした地域料金制を郵便物の場合、採用できない。しかも郵便物の集配業務はほぼ100%労働集約型の業務だ。将来ドローンが集配業務を行うようになるかもしれないが、各家庭のポストへの配達は不可能になり、登録先のコンビニやスーパーでの集配にせざるを得なくなる。現在の郵便局はそのまま残すにしても、郵便局での郵便業務は激減できる。もちろん速達は廃止して(配達日を週1日にしている国は速達を廃止している)、小包を除き一般郵便物の料金は大幅にアップして統一する。小包の場合は現在でも料金を距離制にしている(郵便局の窓口でないと小包類は発送できないからだ)。
そうやって郵便事業の赤字を解消しない限り、全国各地の郵便局は郵便事業の赤字を埋めることができない。かんぽ生命の詐欺商法が蔓延した根本的な原因は郵便事業の赤字体質をどうするかという政策を考えずに、ただ民営化して競争原理を持ち込めば郵便局のサービスもよくなり、体質も強化されるだろうと安易な考えで行った郵政民営化による。ノルマに追われ高齢者をだましてまでかんぽで利益を上げざるを得ない状況に職員を追い込んだのは、まさに政治の貧困による。 もちろん郵便局職員の大幅削減も避けられないし、統廃合も大胆に進める必要もあるだろう。これまで親方日の丸体質でやってきた付けは、当然払わなければならない。
その一方で、はがきや封書の料金引き上げを規制してきた総務省も、発想を転換する必要がある。総務省の公務員もよく考えてもらいたい。先に書いたように郵便物の集配業務は、将来はドローンで行うようになるかもしれないが、現時点ではまだ典型的な労働集約型業務である。あなた方総務省の職員が、自分が郵便物を配達すると考えたとき、はがき1通62円、封書1通82円の報酬で配達業務をやれると思いますか。それも最終配達職員の手取り料金ではなく、最終配達するまでに相当のコストがかかっているはずで、仮に最終配達のコストを3分の2としてもはがき40円、封書55円程度の配達コストで郵便事業を賄えると思いますか。そういう状態を放置してきたことが、今回の組織的詐欺行為の底流にあったことを、総務省はしっかり認識してもらいたい。まず郵便物の集配コストにどのくらいかかっているかの徹底的調査と、現在の集配体制の見直しによるコスト削減、郵便局の統廃合やそれに伴う人員整理など、可能な限りの手を打って、将来も郵便物が減り続けることが必至な郵便事業をどう立て直すかの抜本的対策を構築することだ。
なお、郵政トップの引責辞任は免れ得ないとしても、郵政グループを反社会集団にしてしまったことは、単に引責辞任だけでは済まされない。これほど多くの被害者を組織的に出した行為は、たとえ意識的な行為ではなかったとしても、その犯罪性を問わないということはありえない。少なくともNHKが昨年4月にかんぽ生命の詐欺的商法を明らかにしていながら、今年7月10日での記者会見でかんぽ生命の植平光彦社長は「4月の(かんぽ生命株)売り出しのタイミングで問題は認識していなかった」と責任逃れの発言をしている。少なくとも昨年4月にNHKはかんぽ生命の佐野常務執行役員の証言をとっている。佐野常務が承知していて、植平社長は知らなかったですませられる話か。
ノルマに追われて高齢者に詐欺を働いた郵便局職員は、気の毒だとは思うが、自分が犯した犯罪行為でどれだけ多くの人を苦しめたか。人員整理の最初のターゲットになることは覚悟すべきだろう。ノルマに追われたあなたたちも被害者であることは私も認めないわけではないが、自分がノルマに追われて犯した罪は少なくとも法律が認める「正当防衛」ではない。
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