小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

総選挙を考える⑥ 選挙結果を「事前」総括する。自民大勝、立憲健闘の陰で希望と公明は?

2017-10-19 14:39:17 | Weblog
 今日は未明から小雨が降りだしたようだ。一日雨だという。投票日まであと3日。今度の選挙を天が嘆いた「涙雨」なのだろうか。
 もう選挙結果はもう目に見えているので、きょう19日の時点であらかじめ選挙総括をしておく。メディアは「現時点での選挙情報調査では自民圧勝の勢いだが、まだ投票態度を決めていない有権者が約4割もおり、その人たちの動向次第で不確実な要素もある」というが、投票率が前回の総選挙では52.66%であり、投票態度を決めていない約4割の大半が無党派層であれば、その傾向は従来と基本的には変わらない。これまでも直前まで投票態度を決めていないという有権者はつねに4割前後はいたし、結局「選択肢」がないまま投票日を迎え、投票を棄権した有権者が多かった。
 前回の解散に当たって安倍総理は、消費税増税時期の延期を解散の「大義」にする予定だったが、野党第1党の民主党がのってこなかったので仕方なく「アベノミクスの継続について国民に信を問う」と「大義」を変えた。が、アベノミクスの成果と言われても、輸出企業は為替差益をため込み株価は上昇したが、一般庶民の収入は一向に増えず、かといって野党も「アベノミクスは失敗だった」との主張も出来ず、有権者はしらけきった選挙であった。私は「選択肢のない選挙」と断じ、投票率の最低記録更新を予測した。
 今回の総選挙に際し、安倍総理は当初「消費税増税分の使途変更」を解散の「大義」にしようとしたが、メディアが「2年も先のことをいま決める必要があるのか。第一、2年後に消費税を増税できる経済情勢にあるかどうかわからないではないか」「大義なき解散だ」と批判し、その後安倍総理は「大義」を二転三転させた挙句、最終的には北朝鮮危機対策と少子高齢化対策を「国難」と位置づけ、「大義」を「国難突破解散」に変えた。まさに「解散のための解散」であり、「大義」は解散を正当化するための口実に過ぎないことをこれほど明々白々にしたことは、かつてなかった。「まだ投票行動を決めていない」という有権者は、今回の選挙にしらけきっているからだろう。前回記録した最低投票率新記録を、さらに更新する可能性すらある。
 なお、メディアは今回は投票日直前の選挙情報調査報道は行わないだろう。前回は直前に「自民300を超える勢い」と報じた結果、投票率が戦後最低を記録したと思ったからだろうが、直前だろうが1週間前だろうが、調査の時期によって有権者の投票行動に大きな変化が生じるわけではない。選挙の争点が明確になり、有権者がその争点に対して強い関心を持てば、調査時期とは関係なく投票率は高まる。小池都知事が巧みに争点を作り出した都議選が、そのことを証明している。小池氏は、さすがにメディアの出身だけのことはある。

 それはともかく、今回の選挙ほど有権者をバカにした選挙はなかった。国民の「政治不信、ここに極まれり」と言いたくなるような選挙になった。選挙後の当選者や政党の行動が、さらに国民の政治不信をあおるだろう。そうなることも、ほぼ間違いない。
 選挙で、国民の政治不信を招いた最大の「戦犯」は、民進党の前原代表と希望の党・小池代表だろう。
 選挙後に関してあらかじめ予測しておくが、公明党が憲法改正問題について、「平和の党」という党是をかなぐり捨てて自民党にすり寄るだろう。民進党の前議員で無所属立候補した当選者は、立憲民主党に入るだろうし、希望の党からも脱落者が相当出る。「政治家の志」とは何なのか、が問われることになるのは間違いない。
 まず小池氏の「犯罪」容疑から検証する。小池氏の側近・若狭氏が自民党を離党して「日本ファーストの会」をたった一人で立ち上げた後、民進党から細野氏や長島氏が若狭グループとの新党結成の協議に入った。政治家としてのキャリアから考えても、若狭氏は新党の主導権を細野氏に奪われるとの危機感を抱き、小池氏に出馬を要請した。こうして小池氏が新党・希望の党の代表になる。問題は希望の党の党是は、この時点では何もなかった。せいぜい「しがらみのない政治」という、肝心の政策の中身がないスローガンだけの新党だったことだ。この時点で小池氏が政策を明確にして「安保法制容認」「憲法改正」を打ち出していれば、さすがに民進党の前原代表も小池新党にすり寄ることはしなかったであろう。それまでの、体を張って抵抗した安保法制反対の政治姿勢は何だったのかが問われることもなかったはずだ。
 が、前原氏の頭の中には「安倍政権を倒す」という一点しかなかった。そのため小池氏がどういう政治思想で国政新党設立に乗り出したのかを考慮せず、「反安倍勢力になるだろう」というはかない期待感だけで連携しようとした。前原氏は「民進党を解党して希望の党に全員合流する」という決断をしたようだが、希望の党との連携には「選挙協力」という方法もあったはずだ。そういう選択肢は最初から頭の片隅にもなかったのだろうか。
 そもそも民進党は、民主党時代から野合政党だった。そのため一時は衆院で308議席という空前の議席数を有権者から与えられていながら、党内での足の引っ張り合いで何も決められない政権として国民から愛想尽かしをされ、野党に転落した経緯がある。その後維新の会の江田グループと合流して党名を民進党としたが、「屋上屋を架す」数合わせの野合復活であり、メディアの世論調査でも支持率は低下の一途をたどっていった。
 最大限善意に解釈したとして、民進党の代表としての前原氏には、なんとしても党勢を回復しなければという使命感があったのかもしれない。そのうえ都知事選や都議選でカッコよく自民と対決して大勝を収め、一躍政界の寵児になった小池氏が代表に就任した希望の党は、まぶしいばかりの輝きを放っているかに見えたのだろう。
 が、小池氏の政治思想は自民党在籍中から、かなり保守的な立ち位置にあった。総裁選で改憲正統派の石破氏の応援団になったり、明らかに民進党の主張(いちおう最大公約数的主張として)とは相容れないものがあった。小池氏が希望の党の代表に就任したとき、自民党との違いを「しがらみのない政治」としか言わなかったことにも、前原氏が錯覚した要因があったのかもしれない。
 しかし、許せないのは小池氏の策士ぶりである。前原氏との会談で、「合流」を持ちかけたのはおそらく小池氏のほうからだと思う。痩せても枯れても民進党は衆院90人(すでに希望の党入りしていた細野・長島両氏を除く)、参院64人、計154人の国会議員を抱える大政党である。生まれたばかりの議員数数人の希望の党に呑み込まれる力関係では、本来ない。
 が、小池氏の策士ぶりは、前原氏との会談の席で希望の党の政治理念を明確にせず(新保守政党ぐらいのことは匂わせた可能性はあるが)、前原氏の「反アベの受け皿」づくりの一念を利用して、希望の党への「合流」を呑ませてしまったことだ。前原氏が民進党の両院議員総会で少数政党に呑み込まれる「合流」について「名を捨てて実をとるためだ」と弁解したのも、そうした背景があったからだと考えられる。
 世論の小池離れが始まったのは、民進党議員の受け入れについて「安保法制容認」「憲法改正」の踏み絵を踏まない人は「排除する」と言ったことだとされている。確かに「排除」という表現はきついが、その一言だけで「かわいさ余って憎さ百倍」になるほど国民は単純ではない。国民の小池離れが生じたのは「安保法制容認」「憲法改正」という二枚の踏み絵を設けたことで、小池氏の政治家としての立ち位置が明確になり、その結果、小池支持派とアンチ小池派が二分され、アンチ派のほうが多数を占めたことによる。だから小池人気が完全に崩壊したわけではない。
 また都議会の自民党会派をブラックボックスと批判して都議選で大勝利した都民ファーストの会から、小池都知事誕生に貢献し、都民ファーストの会の初代幹事長に抜擢された音喜多氏らが、新代表の選出プロセスの不透明さを追求、「都民ファーストの会こそブラックボックスそのものだ」と批判して離党したことも、「小池氏なら淀んだ政界に新風を吹き込んでくれるのでは」という国民の期待が裏切られたことへの反発も大きく作用したと考えられる。
 いずれにせよ、有権者の「小池離れ」が始まった途端、民進党から希望の党に鞍替えした立候補者が立ち位置を変え始めた。そのことも有権者の政治不信を増幅させている。私は10月7日に投稿した『総選挙を考える』シリーズの1回目『メディアを混乱させたのは「解散の大義」か? それとも前原・小池両氏の誤算か?』と題したブログでこう書いた。

 前原氏に言わせれば「安倍政権を打倒するには、市民連合主導の野党共闘より、いま『日の出の勢い』がある希望の党と組んだほうが有利だ」と考えたのだろう。が、「アベ打倒」は、どういう目的を達成するための手段だったのか。憲法違反の安保法制を廃止するためだったはずだ。それが右寄りだろうと左寄りだろうと、総選挙での民進党の基本的方針だったはずだ。小池氏と「合流」について合意した後になって「こんなはずではなかった」では済まされない。
 いや、そもそも小池氏が「安保法制容認」「憲法改正」を、公認申請した民進党議員に踏み絵とするとした時点で、本当に体を張って安保法制に反対してきた民進党議員が、その踏み絵を踏むとでも思ったのか。もし、そうなら、前原氏自身が、選挙に勝つためなら志も何も関係ない「政治屋」でしかないことを意味し、また実際に踏み絵を踏んで希望の党の公認を得た人たちは、地元の選挙区で有権者に自身の変節・転向についてどう説明するのか。国民をこれほどバカにした政治行動を、私はかつて見たことも聞いたこともない。彼らの政治行動の結果は、22日、有権者によって容赦ない審判を下されるだろう。

 昨日(18日)当たりからメディアが、民進党系希望の党からの立候補者の「反党選挙活動」が続出している状況を報道し始めた。自分が自分の意志で踏んだはずの「安保法制容認」や「憲法改正」の立ち位置を翻し始めたのだ。「小池神通力」が不発に終わった今、地元の選挙区で有権者の反発にあって立ち往生したためのようだ。いまさら立ち位置を再び変えたところで、有権者の政治不信は回復しない。
 今日の朝日新聞の記事によれば、17,18日に行った世論調査では、比例区投票先について自民党は34%(3,4日実施の前回調査では35%)と堅調だったが、第2位には立憲民主党が13%(前回は7%)と躍進し、希望の党を逆転したという。選挙後、無所属で立候補した前民進党議員や、希望の党から立候補しながら希望の党に反旗を翻した前民進党議員が立憲民主党に入った場合、立憲民主党が一躍第2党になる可能性が出てくる。民進党が野合政党だったことを考えると、立憲民主党はリベラル系として筋が通った政党になる可能性も高く、有権者にとっては明確な選択肢が出来ることにつながれば、現在の政治不信状況はかえって「雨降って、地固まる」になるかもしれない。
 いずれにせよ、自民・維新・希望と改憲勢力が3分の2を超えることは間違いなく、世論調査では安倍政権の続投には否定的だが、かといって自民大勝の状況下で「安倍おろし」の声が自民党内に生じる可能性はほぼなく、「安倍一強体制」が復活するだろう。そうなると党内世論も「安倍改憲論」で一気に集約される可能性が高くなり、改憲に慎重な姿勢を示していた公明党が窮地に陥ることは必至だ。
 これまで政治の「安定」は自公連立によって支えられてきた側面は大きく、自民党も安保法制や「共謀罪」についても公明党に譲歩しながら成立させてきた経緯があった。が、改憲問題では安倍政権が「もう公明党に譲歩する必要はない」と見極める可能性が出てきたわけで、そうなると公明党の立ち位置が難しくなる。連立政権の地位を維持することを最優先すれば、「平和の党」という党是をどこまで維持できるか、危うくなる。支持母体である創価学会との関係もややこしくなるだろうし、だいいち選挙のとき、最も頼りになるはずの公明党員がこれまでのように献身的な活動を担ってくれるか。山口代表がかじ取りを一つ間違えると、民進党・前原代表の二の舞を踏むことになりかねない。

 当初、このシリーズで書く予定にしていた人づくり政策(高度プロフェショナル制度)とアベノミクスの検証は、まったく選挙の争点にならなかったので、これでシリーズを終える。
 だが、選挙が終わり国会が始まれば、重要な政治テーマとして浮上する。とくに黒田・日銀総裁の異次元の金融緩和政策によって、金融機関はいま大きな爆弾を抱えており、いつ爆発してもおかしくない状況にある。
 私はすでに「迫りつつある金融危機」の原稿をほぼ書き終えており、ブログ投稿しようとしていた矢先に唐突に解散風が吹き出したため、投稿のタイミングを失ったが、月末か11月初めには投稿したい。
 最後に、安倍自民党の大勝は、少なくとも米トランプ大統領にとっては朗報だろう。内外に難問を抱え、いまや国内に信頼できる友人を少なからず失ってきたトランプ氏にとって、安倍総理は絶対に裏切らない友人だからだ。

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