「マット・スカダー」シリーズ-6作目
『聖なる酒場の挽歌』原題:When the Sacred Ginmill Closes(聖なるジンミル(酒場)が閉まるとき)
ローレンス・ブロック著 田口 俊樹訳
前作「八百万の死にざま」の最後にAAの集会で、「マットと言います」「私はアル中です」と吐露し泣いていましたが・・・ その10年後、彼は一滴も飲んでいません。 ここに至るまでには相変わらず飲んでいました。 そして探偵(知人に便宜を図る仕事)を3件ほど受けていて、その顛末を回想するように語っていました。 「アームストロングの店」「モリンシーの店」「ミス・キティーの店」の店主、使用人、それらの店の常連客やその知人・友人が絡み合った事件?の解決が書かれていました。 マットには後味の悪い結果もあったようですが、見事「罠」を仕掛けていました。 許されることではありませんが、仇をうってあげたのですね、と思うしかありません。 登場人物のその後も語っていましたが、淡々と、でも人間らしさがあってマット自身も落ち着いてきたんだなぁ~と感じさせるものでした。 もう「アル中」に戻らないで!と言ってあげたくなりました。
題名のヒントになった歌詞がありましたので、ご紹介しておきましょう。 YouTubeで探して聴いてみました♪🎧♪
~Last Call:Dave Van Ronk~
And so weve had another night だからもう一夜僕らは過ごした
Of poetry and poses, 詩と散文の夜を
And each man knows hell be alone みんな孤独になるのがわかっているから
When the sacred ginmill closes. 聖なる酒場が閉まるときには
And so well drink the final glass だから最後の杯を僕らは交わそう
Each to his joy and sorrow ひとりひとりの喜びと悲しみに
And hope the numbing drink will last 麻痺した酔いが続くよう
Til opening tomorrow. せめて明日が始まるまでは
And when we stumble back again 足をひきずり僕らは帰る
Like paralytic dancers 体が麻痺したダンサーのように
Each knows the question he must ask 何を問わねばならないか誰もがみんなわかってる
And each man knows the answer. そして答えがわかってる
And so well drink the final drink だから最後の杯を僕らは交わそう
That cuts the brain in sections 脳味噌を切り刻んでくれる杯を
Where answers do not signify そこでは答えは意味がない
And there aren′t any questions. そもそも問いがないのだから
I broke my heart the other day. こないだ僕は悲嘆にくれた
It will mend again tomorrow. けれど明日にはなおるだろう
If I'd been drunk when I was born 生まれた時にもし酔ってたら
I′d be ignorant of sorrow. 悲しみなんか知らずにすむのに
And so well drink the final toast だから最後の祝杯を僕らはあげよう
That never can be spoken: 二度と言われぬ祝辞を言おう
Heres to the heart that is wise enough 砕けて楽になるべきときを知っている
To know when it's better off broken. 賢い心に乾杯と
そして、題名に「挽歌」が用いられたのは・・・
マットが受けた「知人に便宜を図る仕事」に関係して死んでしまった者たちに送られたものだったのでしょう。