
あるところに、決して裕福ではない家族が住んでおりました。
家族はお父さんとお母さんと男の子5人の兄弟。
裕福では無かったので、昼間はお父さんもお母さんも働きに出ており、兄弟は5人でいつも留守番をし、兄弟の面倒は、一番上のお兄さんの吾郎君が看ていました。
5人のおやつは、吾郎君が作る小麦粉を捏ねて焼いて砂糖をまぶした、ホットケーキとは言えない様な粗末な物。
どれも同じ大きさに焼いているのだけれど、子供の目は物指よりも正確。
焼きあがったその粗末なお菓子をお兄さんたちは我先にと大きそうなのを取って行く。
一番小さそうなのが一番下の子のチビのおやつ。
食べ盛りの5人兄弟は自分のおやつだけじゃ足りなく、まだ食べ終わらないチビの小さいお菓子をむしり取る。
小さいチビのおやつはあっという間にお兄さんたちに取られて無くなってしまう。
そんな暮らしが続いた有るとき、吾郎君にチビが泣きながら言った。
「こんな家もう嫌だ・・・ボクたち本当の兄弟じゃないんだ・・・」
吾郎君は考えた、ある時から一番小さそうなお菓子を自分で取るようにした。
同じ大きさに焼いてるつもりでも、その中でいつも一番小さそうなお菓子を自分が取る。
あるとき、吾郎の下の弟が「吾郎兄ちゃんのお菓子いつも小さいから、俺の少しあげる。」とちぎって吾郎の皿に入れてくれた。
その下の弟も「俺のも少し吾郎兄ちゃんにあげる。」
俺も、俺もと・・・
いつもおやつを取られていた一番下のチビも「俺も兄ちゃんにあげる!」
吾郎兄ちゃんがいつも少しの損をするように成ってから、兄弟がお菓子を奪い合うことも無くなった。
有るときチビがニコニコして吾郎に「兄ちゃん、ボクたち本当の兄弟だな。」
少しの損が大きな愛に成って返って来たというお話でした。
先週の義弟の結婚式で教会の牧師先生の話の一つです。
何と言うか、私の仕事にも通じるお話で、今を生きていくうえで誰もが忘れがちだけど忘れちゃいけないようなお話だと思ったので、覚えているうちの記事にしてみました。