幼い頃の思いよみがえって私怖いんです
幼かった頃この草の穂を「シタキリクサ」と呼んでいました。
子どもって世の中のこと何にも知らないからいろんなことをして楽しんで大きくなっていくんですよね。大人が知らないことでも、大人から見ればバカらしくてくだらないことでも、危険なことでも、怖いことでも、いろんなことして楽しんで大きくなっていくんですよね。
幼かった私たちの仲間のひとりがこのクサの穂を摘んで舌をこすって鏡を見たら舌から血が滲んで出ていたんです、これは大発見でした。早速仲間の前で実演して見せました。仲間の皆ははその発見に感動し、すぐにそれをまねて実行しました。そしてみんなが血の滲む舌を見せ合い感動し満足しました。クサの穂には小さな実がついていてぎざぎざになっているんです。それで舌をこすれば小さく傷ついて血が滲むのです。
92歳の老体の私、このクサを見てそのときの情景をはっきりと思い出しました。血が出ていたんですからたぶん痛かったと思うんです。でもその痛みの感覚は全く思い浮かびません、思い浮かぶのはみんなで血の滲む舌を見せ合った時の満足感と喜びの思いなんですよ。
92歳の爺いになった今の私は、子どもってなんとまあ無謀で怖いことをするもんだとあきれかえっているんです。でもその舌切り草で舌を切ったのはそのときの一度だけです。子どものときではありますけどほんとにばからしいことして楽しんだ私、恥ずかし恥ずかしです。
でもほんとはそんなこといっぱいっぱい繰り返して大きくなって爺いになった私なんですけどね。