続・切腹ごっこ

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「少年悲歌」中康弘通著 1/4

2008-02-11 | ★レビュー(本)

 中康弘通・著、「少年悲歌」(1979年発行)という本を読んだ。去年の秋に譲り受けた書籍群の中の一冊だ。この本は切腹を扱った短編小説集である。小説の内容は大きく分けて2つに分類される。1つは幕末や終戦時が舞台で実際に青年・少年が腹を切って果てる物語、もう1つは現代(といっても発行年の1979年より以前)が舞台で、切腹フェチの青年・少年、あるいは切腹フェチの女性が登場する物語。
 長くなるので4分の1ずつあらすじを紹介する。

◆紅梅吹雪(昭和42年9月)
 源義経の腹心、佐藤四郎忠信は“かや”という女が忘れられず、危険を承知で京に独り舞い戻ってくる。しかし、かやの裏切りで屋敷は頼朝方の兵に包囲されてしまう。奮戦の後忠信は彼を真に慕う少女あかねの見ている前で見事な立ち腹を切る。

◆凶夢聚楽第(48年12月)
 関白豊臣秀次は、秀吉に斬りかかるが惜しくも取り逃がすという凶夢を見た。彼は正室の操を好色な秀吉に奪われていた。秀次はポルトガル人宣教師フローレを聚楽第の奥、美女の侍る大浴場に案内する。秀次の乱行は度を増していき、ついに高野山で寵愛する小姓3人を供に腹を切る。3人の中でもひと際美しい不破万作とは、もしかすると不破のお万の方という美女ではなかったのか‥

◆若衆武士道(49年5月)
 新之丞という見目麗しい寵童小姓がいた。彼に心を寄せる森山内記という武士が、領内で狼藉をはたらく浪人集団を鎮圧した褒美に新之丞を賜りたいと申し出る。願いは聞き入れられ、新之丞は内記とともに暮らすようになる。
 ある時、新之丞の親類の治太夫の紹介で、江戸の武芸者が藩を訪れた。藩の指南番として内記が受けて立つが相手に花を持たせるためわざと負ける。武芸者はその夜酒宴の席で、内記と藩主を暗に貶し新之丞の手をとって弄んだ。その話を聞いた内記は激昂し武芸者を斬り、「自分の紹介で招いた武芸者を斬られて黙っていては武士が立たない」と刀を抜いた治太夫をも斬り伏せた。
 本来親類の仇を討つべきところだが、内記に向ける刀は持たぬと新之丞は介錯もなく十文字に切腹。改めて切腹を仰せつかった内記も十文字に腹を切った。

◆花の若衆(43年8月)
 十八の采女は恋の病に伏せっていた。想うは采女と同じく小姓で十六の右京。やがて二人は互いの想いを打ち明け相思相愛の仲になった。しかし美しい右京を想う者は采女のみにあらず。右京に袖にされ、茶坊主にそそのかされた細野主膳という男が、可愛さ余って憎さ百倍と右京を狙う。しかしあえなく返り討ちに遭う。主膳に非があるのは誰の目にも明らかなれど、喧嘩両成敗の原則に則り右京は切腹と決した。
 右京が辞世を記し終わったその時、右京に駆け寄る采女。二人は「後世は一つ蓮の上に‥」と向かい合って腹を切る。一文字に切り終えると、抱き合うようにして鳩尾を刺し違え、二人同時に果てた。


◆峰の松風(44年9月)
 時は幕末、但馬の国の片田舎にも動乱の風は吹き荒れた。維新のために同志を募りながら転戦し、自分の村に滞在している南八郎こと河上弥市に、庄屋の娘お小夜は想いを寄せていた。しかし情勢が不利と見た一部の農民の裏切りに遭い、南八郎は逃亡の末、お小夜の見ている前で立ち腹を切って果てた。
 その時の悲壮な姿は、時代が変わり、夫を持ち息子・孫が生まれ、年老いてからもお小夜の脳裏から消えることはなかった。

◆黎明悲歌(42年12月)
 初美は、兄の親友で軍人だが今は療養している岡野を秘かに慕っていた。岡野は色白で年齢よりも若く見え、24歳ながら美少年のような雰囲気があった。
 昭和20年8月15日、うちへ訪ねてきた岡野と兄は二人で腹を切ろうと話し合う。話を聞いた初美もいっしょに腹を切らせてほしいと頼む。拒む二人に初美は岡野を慕っていることを打ち明ける。次の日、岡野と初美は婚姻届を出し、軍服とセーラー服姿で祝言をあげた。
 一日だけの結婚生活を送ったその翌日、岡野と兄は鎧通しと懐刀で切腹。しかし、初美はいっしょに腹を切らなかった。「子供を授かっていれば、あとを追って死なずにその子を育てる」という岡野との約束があったからである。そして‥、秋になり初美にその兆候が表れた。


 最初の6話は全て、若衆や軍人が実際に切腹する物語だ。どの話も切腹の場面は凄惨な中にも妖艶な雰囲気が漂っている。時代背景もしっかりしているので、物語の背景にも想像を膨らませることができた。
 この本には1話ごとにほぼ1枚の挿絵がある。衣服を寛げ腹を露わにし短刀をかまえているもの、腹に突き立てた刀を引き回し血が飛沫いているもの。男もの女もの両方あって、絵柄も見るからに数十年前という感じだが、なかなかイイものもあった。構図等、切腹絵の参考にしたい。

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少年悲歌 (1979年)
中康 弘通
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