前回に続き、3年前に戴いた書籍の中の一冊を紹介する。
11年前に亡くなったうちのお祖父ちゃんはたしか明治42年生まれだった。この冊子はお祖父ちゃんが生まれるさらに8年前に発行されたということになる。凄く貴重な物なんじゃないだろうか。うちには江戸時代からある蔵みたいなもんはないので、この本より古い物って他にあんまり無いだろう。
藁半紙みたいな薄いページをめくるとパリパリ音がして、昔うちにあった「子供文学全集」っていう分厚くて古い本と同じ匂いがする。
“諸君!諸君が初めて國民軍に成るのは、十七歳の時ですが眞個(ほんと)に兵籍に入れられるのは、満廿一歳の時でありましやう。
其処でこの白虎隊の、勇壮活発なる少年達が、己に兵式の進退に通じて、初陣の功名を為た揚句、あの飯盛山の頂邊で、勇ましい最後を遂げたのは、實に何歳の時でありましたらう?”
(↑当時の難しい漢字が見当たらないので現在の漢字で表記してる部分もあります)
…という書き出しで始まる白虎隊の読み物。字の大きさや文章の簡単さ、漢字全てに仮名が振ってあることを考えると小学校低学年向けの冊子だと思われる。
大政奉還や鳥羽伏見の戦い、上野の彰義隊の話を経て会津戦争へ。鶴ヶ城が一ヶ月の籠城に耐えたこと、白虎隊の少年たちが勇ましく戦い立派な最期を遂げたことが、難しい単語を使わず簡単な文章で書かれている。戦いの場面の文章はテンポが良く、声に出して読むと講談調になりそうな感じだ。
発行年の明治34年とは、20世紀最初の年。昭和天皇が生まれた年で、与謝野晶子が「みだれ髪」を発表した年。ノーベル賞が創設され、ABO式血液型が発見された年でもあるそうだ。血液型による性格判断は少なくともこの年より以前にはなかったのだ。
この頃には白虎隊の逸話は一般に知られていて、賊軍という扱いも無くなっているようだ。逆に若年ながら大人以上の働きをしたと誉め讃えられている。
文章中、飯盛山で自刃したのがなぜか19人となっている。蘇生した飯沼貞吉(文章中では改名後の貞雄となっている)も数に入っているので、誰か1人名前が抜け落ちているようだ。19人の名前が書いてあるので調べてみると、津田捨蔵の名前が無かった。自刃した者としてまだ認識されていなかったのだろうか。
冊子の後半は兎の親子と白鷺を擬人化した文字通りのお伽噺が掲載されている。