「ザ・コーヴ」を見てきた。感想を書こうと思うんだけど、何から書けばいいのか。
休日だから映画館(大坂、十三の第七芸術劇場)前で抗議活動か何かあるかも、なんて思ってたけど何もなく拍子抜けだった。観客の年齢層はバラバラ、子供はいなかったけど。150席くらいの客席は2/3くらいは埋まってたかな。
とりあえず、映画の概要を。
この映画は、リック・オバリーという“イルカ解放活動家”の日本での活動を撮影したものだ。この人は若い頃は、ドラマやショー用のイルカの捕獲や調教に関わっていたが、身近な1頭の死をきっかけに悔い改め、イルカショー反対運動に舵を切る。捕獲してある網を切ってイルカを逃がし逮捕されたことも少なくないようだ。太地町のイルカ漁への抗議もこの一環である。
彼らが訴えるのは、「イルカは知能が高く、自己を認識することもできる。人間の命を助けることもある友人である。イルカショーなどを強制してストレスを与えることは止めるべきで、苦しめた上に殺戮する追い込み漁などはもってのほかだ。イルカの体には食物連鎖の関係から基準を超える水銀が蓄積しており、そういう観点からも食べるべきではない。」ということ。
映画のクライマックス、オバリーは太地町の住民や漁師たちの妨害を掻い潜って、イルカがされる“隠された入江”(立ち入り禁止区域)の撮影を試みる。そのためにフリーダイバーや撮影班等からなるチームが結成される(監督曰く『オーシャンズ11』にも劣らない)。彼らは監視のいない夜に入江に侵入し、岩場や水中に数台のカメラを設置。据え置きの無人カメラは、イルカ漁の現場と真っ赤に染まる入江の撮影に成功する。
オバリーたちの姿勢は、世界中のほとんどの人が知らない「こんな残酷なこと」を、隠ぺい(?)しているこの町から全世界に向けて知らしめる!ということで一貫している(僕はイルカ漁の存在を知っていたし、鯨食も有りだという考えなのでショックはなかったけど、知らない人が見たらけっこうショックなのかも)。
ごく簡単に書くとこんな内容の映画。
それぞれのシーンの映像から受ける印象は下記のような感じだ。
まず、幾度となく挟まれる賢く可愛いイルカの映像と、入江で血を流しながら逃げ惑うイルカたちの映像は対照的で、単純にそれだけを見るなら、「なんとかしてこのイルカを救わなければ!」という気持ちが湧きおこってくるだろう。アメリカ人には「わんぱくフリッパー」というイルカと少年の交流を描いたドラマがよく知られているらしく、そのドラマのシーンがよく出てきた。
撮影を妨害してくる地元住民や警察は、映画を見る限り粗暴でけっして頭が良さそうには見えない(編集によってそんな風に見せている)。映画の後半、入江に侵入するシーンは赤外線カメラなどを使い、スパイ映画のようなノリで、エンターテイメント的な見せ場でもある。海水が、血で文字通り真っ赤に染まるイルカ漁のシーンは確かにインパクト大である。10年ぐらい前にネット上で初めて見たイルカ漁の映像よりもインパクトがあった。
ただ映画の中で語られる情報については鵜呑みにすることには抵抗がある。1年に捕獲されるイルカの頭数や売却額、イルカの体内に蓄積した水銀の数値などの数値や、イルカ肉をクジラ肉と偽って販売しているという主張など。水俣病のメチル水銀汚染とイルカ肉の水銀蓄積を結びつけようとしているのも違和感を覚えた。1つを疑うと他にも疑いたくなる部分がいろいろ出てくる。
以前、NHK総合の「クローズアップ現代」という番組で、この映画を取り上げていた。
オバリーやスタッフたちが太地町で撮影していた時期は、イルカ漁を撮影しようとする外国人たちがたくさん滞在していたらしい。例のシーシェパードが、イルカ漁の映像に懸賞金を出したからだ。そのため地元住民たちが警戒し、映画の中でも過剰に反応しているように見えるのだという。
また番組では「編集で作られたシーン」というのも紹介していた。血を流しながら網から逃げてやがて死ぬイルカを、フリーダイバーの女性が間近で見て涙する、というシーンがあるのだが、イルカのカットと涙する女性のカットは編集で繋いだだけであるという。別の日に、実際に女性はイルカの悲惨な様子を見たのは事実らしいのだが。
番組では日本人のイメージする“ドキュメント”と、アメリカ人、少なくともこの映画の撮影スタッフたちがイメージする“ドキュメント”とはかなりかけ離れたものなのかもしれない、と言っていた。この映画のように、自分たちの主張がまず有り、その主張を広めるために必要な映像を編集するのが彼が考えるドキュメントなのかもしれない。事実を淡々と取材し、まとめるという感じではない。
そして主張を広めるためには手段を選ばないということを、この映画自体が物語っている。立ち入り禁止区域に侵入し、警察にも嘘をつく。悪びれる様子はない。そんな調子なので、イルカ漁に関する情報自体の信ぴょう性を疑いたくなるのだ。
映画の中で「あんたらは牛を食べる。うちらはイルカを食べる。それは文化だ。」という住民たちの主張が紹介される。それについて書きたいが、話が長くなるので次回に続く⇒
休日だから映画館(大坂、十三の第七芸術劇場)前で抗議活動か何かあるかも、なんて思ってたけど何もなく拍子抜けだった。観客の年齢層はバラバラ、子供はいなかったけど。150席くらいの客席は2/3くらいは埋まってたかな。
とりあえず、映画の概要を。
この映画は、リック・オバリーという“イルカ解放活動家”の日本での活動を撮影したものだ。この人は若い頃は、ドラマやショー用のイルカの捕獲や調教に関わっていたが、身近な1頭の死をきっかけに悔い改め、イルカショー反対運動に舵を切る。捕獲してある網を切ってイルカを逃がし逮捕されたことも少なくないようだ。太地町のイルカ漁への抗議もこの一環である。
彼らが訴えるのは、「イルカは知能が高く、自己を認識することもできる。人間の命を助けることもある友人である。イルカショーなどを強制してストレスを与えることは止めるべきで、苦しめた上に殺戮する追い込み漁などはもってのほかだ。イルカの体には食物連鎖の関係から基準を超える水銀が蓄積しており、そういう観点からも食べるべきではない。」ということ。
映画のクライマックス、オバリーは太地町の住民や漁師たちの妨害を掻い潜って、イルカがされる“隠された入江”(立ち入り禁止区域)の撮影を試みる。そのためにフリーダイバーや撮影班等からなるチームが結成される(監督曰く『オーシャンズ11』にも劣らない)。彼らは監視のいない夜に入江に侵入し、岩場や水中に数台のカメラを設置。据え置きの無人カメラは、イルカ漁の現場と真っ赤に染まる入江の撮影に成功する。
オバリーたちの姿勢は、世界中のほとんどの人が知らない「こんな残酷なこと」を、隠ぺい(?)しているこの町から全世界に向けて知らしめる!ということで一貫している(僕はイルカ漁の存在を知っていたし、鯨食も有りだという考えなのでショックはなかったけど、知らない人が見たらけっこうショックなのかも)。
ごく簡単に書くとこんな内容の映画。
それぞれのシーンの映像から受ける印象は下記のような感じだ。
まず、幾度となく挟まれる賢く可愛いイルカの映像と、入江で血を流しながら逃げ惑うイルカたちの映像は対照的で、単純にそれだけを見るなら、「なんとかしてこのイルカを救わなければ!」という気持ちが湧きおこってくるだろう。アメリカ人には「わんぱくフリッパー」というイルカと少年の交流を描いたドラマがよく知られているらしく、そのドラマのシーンがよく出てきた。
撮影を妨害してくる地元住民や警察は、映画を見る限り粗暴でけっして頭が良さそうには見えない(編集によってそんな風に見せている)。映画の後半、入江に侵入するシーンは赤外線カメラなどを使い、スパイ映画のようなノリで、エンターテイメント的な見せ場でもある。海水が、血で文字通り真っ赤に染まるイルカ漁のシーンは確かにインパクト大である。10年ぐらい前にネット上で初めて見たイルカ漁の映像よりもインパクトがあった。
ただ映画の中で語られる情報については鵜呑みにすることには抵抗がある。1年に捕獲されるイルカの頭数や売却額、イルカの体内に蓄積した水銀の数値などの数値や、イルカ肉をクジラ肉と偽って販売しているという主張など。水俣病のメチル水銀汚染とイルカ肉の水銀蓄積を結びつけようとしているのも違和感を覚えた。1つを疑うと他にも疑いたくなる部分がいろいろ出てくる。
以前、NHK総合の「クローズアップ現代」という番組で、この映画を取り上げていた。
オバリーやスタッフたちが太地町で撮影していた時期は、イルカ漁を撮影しようとする外国人たちがたくさん滞在していたらしい。例のシーシェパードが、イルカ漁の映像に懸賞金を出したからだ。そのため地元住民たちが警戒し、映画の中でも過剰に反応しているように見えるのだという。
また番組では「編集で作られたシーン」というのも紹介していた。血を流しながら網から逃げてやがて死ぬイルカを、フリーダイバーの女性が間近で見て涙する、というシーンがあるのだが、イルカのカットと涙する女性のカットは編集で繋いだだけであるという。別の日に、実際に女性はイルカの悲惨な様子を見たのは事実らしいのだが。
番組では日本人のイメージする“ドキュメント”と、アメリカ人、少なくともこの映画の撮影スタッフたちがイメージする“ドキュメント”とはかなりかけ離れたものなのかもしれない、と言っていた。この映画のように、自分たちの主張がまず有り、その主張を広めるために必要な映像を編集するのが彼が考えるドキュメントなのかもしれない。事実を淡々と取材し、まとめるという感じではない。
そして主張を広めるためには手段を選ばないということを、この映画自体が物語っている。立ち入り禁止区域に侵入し、警察にも嘘をつく。悪びれる様子はない。そんな調子なので、イルカ漁に関する情報自体の信ぴょう性を疑いたくなるのだ。
映画の中で「あんたらは牛を食べる。うちらはイルカを食べる。それは文化だ。」という住民たちの主張が紹介される。それについて書きたいが、話が長くなるので次回に続く⇒
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