Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

裏高尾の珍花「せっこく」

2015-06-07 06:21:25 | 自然

たまに立ち寄る焙煎コーヒー店「ふじだな」は裏高尾にある。裏高尾といっても分かりにくいがバス停の「小仏(こぼとけ)」がまじかの場所だ。「小仏」はよく中央高速道の渋滞情報に登場する場所で、東京都と神奈川の県境にある山深い峠の裾に位置している。ここへは国道20号の「南浅川」からの道が便利だ。

「ふじだな」はたしか週のうち後半の数日だけ開いている人生の余興者的ご夫婦が経営するコーヒー専門店だ。緑をたっぷり吸ってコーヒーも飲みたいという気分になったら出かけるとっておきの店へ一週間前に珍しく遊行した。店のサンデッキは梅の大木が覆っている。風も吹いていないのに梅の実がポロリと落ちる季節になったようだ。そこから対向した崖地の傾斜面に見えるマス釣り場の水景色を眺めるのが、この店における贅沢だといつも思っている。梅雨が目前になって今年の梅の成り具合などを店の奥さんに尋ねている時に「せっこく」という東洋蘭の一種が咲いているのを教わった。

サンデッキの横に聳える梅の木の幹の途中に白い花が群生している。初めて見る花だ。うっすらと赤色が隠れた白い5弁の花が微風に揺らいでいる。しかし梅の古木の幹からこんな美しい蘭がたくさん咲くのは不思議だ。葉っぱの厚ぼったいグリーンはいかにも蘭系統を象徴している。同行した八王子に住んでいるYさんも初めて見る花らしい。

帰って「ウイキペディア」を検索してみる。さすが「ウイキペディア」は心強い!ちゃんと丁寧な学者の解説が入っている。それによるとこの花は、岩や大木に着生する「着生植物」とのこと。「野外の個体は採集熱もあり激減。。。」とある。なんでもキメ細かい日本園芸界では江戸時代からこれを盆栽に移し替え栽培する習慣があったらしい。洋ランとして名前を聞く「テンドロビウム」はこの種類が交配親とのこと。和名「長生蘭」とある。ジャズの曲名は苦渋しながらも覚えているが、植物の名前はサッパリ!と思ったのは高知県立牧野植物園で膨大な山野草の種類を見物してからである。


板橋のにりん草

2015-04-15 19:43:45 | 自然

板橋区に住むYさんからかねて噂を聞いていた東京都区部では稀な野草「にりん草」の群生地が開花しているという情報メールが舞い込んできた。場所は高速5号線と国道17号が並行している高島平に近い「区立赤塚公園」の一角だ。

雨模様の10日、旧友のH氏と誘いあい訪ねることになった。初訪問のこの公園はのんびりしたした里山散歩道としての風情がいい。保存展示の古民家があったり、くちぼそ(もっご)、小鮒などを釣る池も住民に開放されている。外れの方には小さな地山の傾斜面がある。よく伸びきったケヤキの大木が点在していて清々しい林間の遊歩道だ。そこに「にりん草」をメインにした保存エリアが仕切られている。お目当ての「にりん草」はYさん達地域篤志家による数十年の計画的な保護運動の成果が実って今年も元気に開花している。Yさんから頂いておいた「残そう!崖線の自然」という冊子(セブンイレブン記念財団 助成発行物)を去年に読んで予備知識があったものだから、可憐で凛々しい小さな花の圧倒的な群落を目の当たりにするのが他人事に思えない。年に三カ月しか地上に現れないというにりん草は氷河期に生き残った花とYさんから聞いている。

公園の桜は葉桜の季節になっている。公園の樹木に囀る「シジュウカラ」の旋律とゆるゆると歩きながら聞くYさんの植物ナレーションが耳に心地よい。「にりん草」の近くに咲いている「タチツボすみれ」「ヤマブキ草」「ひかげすみれ」「にわとこ」「浦島草」「ひとりしずか」「野いちご」こちらも見逃すことができないそれぞれの精緻な春らしい色調を競っている。

庭木としては常識みたいな「アオキ」の花に雌雄の違いがあるというのもYさんの解説で初めて知った。地域の自然保護活動家もご多分にもれず高齢を迎えている。若い世代への継承もなかなか上手くいかない事情のようだ。Yさん達が健康を維持してにりん草をもっともっと増やす運動が長続きしてくれるように祈らずにはいられないひと時だった。


春がきた

2015-03-17 08:32:49 | 自然

休みといえば相変わらず専用庭の手入れを無精しながら諸所をほっつき歩いている。先日は逗子駅に近い亀岡八幡宮の骨董市、翌日は曽我別所の梅林を訪ねたり、勝手気ままな「無銭優雅」生活を楽しんでいる。明日18日はもはや春のお彼岸の入りだ。申し訳ないと思いながら仏壇にスーパー「オオゼキ」で買ってきた広島産5個398円というネーブルを供えて埃をはらう。仏壇には親父と「太平洋戦争」の末期頃28歳という若さで亡くなった先妻の「たね子」さんという見知らぬ故人、それから死別した自分の妻の位牌が同居している。ネーブルも饅頭もチョコも均等に三個づつ平等に供えることにしている。

 

ついでに専用庭の端っこの方で続けて咲きだした「雪やなぎ」「ヒヤシンス」「黄色スイセン」の中から「スイセン」を選んで手折る。これも砥部焼の一輪ざしに挿して仏壇周りに春の色を添えることにする。無精している専用庭の花類は植えて二年目を過ぎた頃から土に馴染んできた気配がある。いまのところ「モッコウ薔薇」「ヤマブキ」の枝木は色艶もよく育っているので初夏5月が楽しみだ。

逗子の亀岡八幡宮は相変わらず長閑な骨董市でお客も出展者も世間話を交えながら売り買いをしているのんびりムード。海岸から寄せてくる西からの風はさすがに3月らしい寒気を含んでいるが、緩やかな空気はすっかり春のものである。余生を「骨董売り遊び」に徹しているような同年輩とおぼしい紳士の広げている展示品はいつもながら安く小さな魅力品が潜んでいる。

旧家の解体時から出てきたような和洋折衷ランプシェードを買う。裾の長いフレアーは好みじゃないが胴部分に施してある丸い模様が職人芸の中の遊びを感じる。断線してある古いソケットを外し掃除する。そのあと陶器傘につけてあるアンティークなソケットにつけかえてみたら上手くおさまった。フィラメントが見える電球の予備ストックを使い実際に灯してみたらこれが夜の闇に静謐な温もりをもたらしてくれる。こうなるとブロッサム・デアリーのような心の中の恋人が弾き語りする「「THEY SAY ITS SPRING」みたいな小夜曲でも添えてみたくなるのが人情というものではないかと思う。


郁子(むべと読む)

2014-10-24 06:07:29 | 自然

午後から雨があがったが曇り空が続いている。おまけに関東地方の温度は14℃とある。さすが旧暦の「寒露」とはよくネーミングしたものだ。傷めた右腰のリハビリを兼ねて午前中にしていた内勤のPC入力を切り上げて、午後から戸外調査へ出る。JR保土ヶ谷駅の駅施設にはお決まりのチェーン食事処しかない。そこで、昔、古本屋の水野書店があった侘しい東口(東海道)の建て替え待機中といった趣きの商店街を物色する。

古い店だが毅然とした清潔を感じる日本蕎麦屋「高之家」へ入る。昼飯は「たぬき蕎麦」550円也。あっさりとした上品な味、雑節の強調がない醤油出汁が美味い。小学校低学年のころ、井土ヶ谷に住んでいたことがあった。そこから永田の台地を上がって保土ヶ谷の踏切がある線路際へ来て半日も往来する東海道線の列車を眺めていたことがあった。無窮風時間である。いまの真言宗「大仙寺」の境内を正面にみる「踏切」に来て特急「出雲」「さくら」「つばめ」等の通過を飽きずに眺めていたものだ。そのころ住んでいた井土ヶ谷上町からこの踏切まではどうみても片道2キロはある。少年の健脚を思い出しながら、クルマの騒音ばかりに包まれる旧東海道程ケ谷宿本陣付近を歩く。

 

表通りは国道1号線だが一歩裏路地へはいると、今井川が流れる閑寂な瀬戸ヶ谷町等という住宅街がある。由緒ある旧地主の庭に実る熟柿を仰いでいたら、生け垣の常緑樹の繁みに隠れるようにぶら下がっている「郁子(むべ)」をみつけた。「いくこ」ではなく「むべ」と読ませる先人の風雅なのだろう。いわゆる「あけび」の親戚で晩秋には熟すると甘い実がつまっている。「あけび」は熟すると果皮が裂けるが「郁子」は裂けない。朝鮮李朝などではこの「郁子」の特大品を貢上物にしていたようだ。業務用SDカードを外して自分用SDに変えて生け垣を撮らせてもらう。犬も歩けば棒ではなく郁子(むべ)にあたるという、ちょっぴりよい日になった。


カラス瓜

2014-10-19 06:56:50 | 自然

土曜日は近頃植木屋さんとしての腕をあげてきたDさんとJR山手駅で合流、そこから数分の二番目の妹宅へ植え木の伐採応援にでかける。座間からはバイクでちょうど一時間かかった。片道27キロだ。しばらく通っていない二俣川付近にある大池公園の横を通って今井町、法泉町等の保土ヶ谷丘陵地区へ抜ける道を思い出すことができた。 永く無精を重ねている妹宅は植木が好き放題に繁茂している。旦那のN氏も珍しくヨットレジャー等へエスケープせずに手伝い要員として自宅待機していた。10時過ぎから4時までが伐採、剪定をする。柿の木、月桂樹、楓、山茶花の類をどんどん切る。住宅が密集していて、隣の家に枝がはみ出したり、柿の実が落ちたり、色々気をつかうことがあるらしい。積まれた枝木を刻んで等分のサイズにしたり下草を抜く雑役を妹旦那と分担する。作業の合間に山茶花や南天の木の隙間から朱色の実をぶらさげて蔓を絡ませている数個のカラス瓜を発見。都会の住宅では珍しい「わびさび」感が漂ってよい気分になる。

きっかり4時に終えて道具をしまっているDさんと妹旦那とコーヒーでも飲もうという相談をした。ちょうど本牧通りの鷺山入り口信号の前にオープンしたてのカフェがあると妹旦那の弁、仕事上のお得意さまでもあるとのことでそこへ寄ることにした。

 

焼き菓子、ケーキを売っていてカフェスペースもあるお店だ。6月にオープンしたばかりとの話である。コーヒーはオールドビーンズの濃いブレンドが美味い。甘党の妹旦那はロールケーキにイチジクとラズベリーを添えた洒落たスイーツを食べている。カロリーが恐ろしい自分は小さな焼き菓子の「マドレーヌ」にする。老舗中華「奇珍」の隣にある店「ルシェルシュ」だが少し鄙びた旧横浜の香りがする街並みにも元町風のニューフェイスが現れているようだ。バイクに揺られてきたカラス瓜、今朝は信楽の焼き締壷になじんでくれて朝の光を浴びている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=klefEs4npUI