Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

郁子(むべと読む)

2014-10-24 06:07:29 | 自然

午後から雨があがったが曇り空が続いている。おまけに関東地方の温度は14℃とある。さすが旧暦の「寒露」とはよくネーミングしたものだ。傷めた右腰のリハビリを兼ねて午前中にしていた内勤のPC入力を切り上げて、午後から戸外調査へ出る。JR保土ヶ谷駅の駅施設にはお決まりのチェーン食事処しかない。そこで、昔、古本屋の水野書店があった侘しい東口(東海道)の建て替え待機中といった趣きの商店街を物色する。

古い店だが毅然とした清潔を感じる日本蕎麦屋「高之家」へ入る。昼飯は「たぬき蕎麦」550円也。あっさりとした上品な味、雑節の強調がない醤油出汁が美味い。小学校低学年のころ、井土ヶ谷に住んでいたことがあった。そこから永田の台地を上がって保土ヶ谷の踏切がある線路際へ来て半日も往来する東海道線の列車を眺めていたことがあった。無窮風時間である。いまの真言宗「大仙寺」の境内を正面にみる「踏切」に来て特急「出雲」「さくら」「つばめ」等の通過を飽きずに眺めていたものだ。そのころ住んでいた井土ヶ谷上町からこの踏切まではどうみても片道2キロはある。少年の健脚を思い出しながら、クルマの騒音ばかりに包まれる旧東海道程ケ谷宿本陣付近を歩く。

 

表通りは国道1号線だが一歩裏路地へはいると、今井川が流れる閑寂な瀬戸ヶ谷町等という住宅街がある。由緒ある旧地主の庭に実る熟柿を仰いでいたら、生け垣の常緑樹の繁みに隠れるようにぶら下がっている「郁子(むべ)」をみつけた。「いくこ」ではなく「むべ」と読ませる先人の風雅なのだろう。いわゆる「あけび」の親戚で晩秋には熟すると甘い実がつまっている。「あけび」は熟すると果皮が裂けるが「郁子」は裂けない。朝鮮李朝などではこの「郁子」の特大品を貢上物にしていたようだ。業務用SDカードを外して自分用SDに変えて生け垣を撮らせてもらう。犬も歩けば棒ではなく郁子(むべ)にあたるという、ちょっぴりよい日になった。


カラス瓜

2014-10-19 06:56:50 | 自然

土曜日は近頃植木屋さんとしての腕をあげてきたDさんとJR山手駅で合流、そこから数分の二番目の妹宅へ植え木の伐採応援にでかける。座間からはバイクでちょうど一時間かかった。片道27キロだ。しばらく通っていない二俣川付近にある大池公園の横を通って今井町、法泉町等の保土ヶ谷丘陵地区へ抜ける道を思い出すことができた。 永く無精を重ねている妹宅は植木が好き放題に繁茂している。旦那のN氏も珍しくヨットレジャー等へエスケープせずに手伝い要員として自宅待機していた。10時過ぎから4時までが伐採、剪定をする。柿の木、月桂樹、楓、山茶花の類をどんどん切る。住宅が密集していて、隣の家に枝がはみ出したり、柿の実が落ちたり、色々気をつかうことがあるらしい。積まれた枝木を刻んで等分のサイズにしたり下草を抜く雑役を妹旦那と分担する。作業の合間に山茶花や南天の木の隙間から朱色の実をぶらさげて蔓を絡ませている数個のカラス瓜を発見。都会の住宅では珍しい「わびさび」感が漂ってよい気分になる。

きっかり4時に終えて道具をしまっているDさんと妹旦那とコーヒーでも飲もうという相談をした。ちょうど本牧通りの鷺山入り口信号の前にオープンしたてのカフェがあると妹旦那の弁、仕事上のお得意さまでもあるとのことでそこへ寄ることにした。

 

焼き菓子、ケーキを売っていてカフェスペースもあるお店だ。6月にオープンしたばかりとの話である。コーヒーはオールドビーンズの濃いブレンドが美味い。甘党の妹旦那はロールケーキにイチジクとラズベリーを添えた洒落たスイーツを食べている。カロリーが恐ろしい自分は小さな焼き菓子の「マドレーヌ」にする。老舗中華「奇珍」の隣にある店「ルシェルシュ」だが少し鄙びた旧横浜の香りがする街並みにも元町風のニューフェイスが現れているようだ。バイクに揺られてきたカラス瓜、今朝は信楽の焼き締壷になじんでくれて朝の光を浴びている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=klefEs4npUI


ジャズはやっぱりパラゴンだ

2014-10-12 09:31:38 | JAZZ

荻窪でも五日市街道に近いDr桜井宅へのジャズ巡礼は土曜日の薄暮時間帯になってしまった。秋の夕暮れは早い。四季に一度の訪問だが、フェアチャイルドのアーム故障が執念の取り組みによって修理が完成したようである。アーム内部の極細ポールネジが折れたまま、半分が嵌ってしまってどうにも手の施しようがなかったと聞いていた。どこか精密工具を作っている工場へ出かけて特注のネジまで作らせたらしい。

「アホノミクス」の経済効果の余波を受けて歯科診療も暇で景気が悪いとこういう作業に情熱をかけると桜井氏と二人で戯言を交わす。このアームにGEのバリレラカートリッジを付けて1950年代のジャズに限ったモノラルLPをパラゴンで鳴らす、そういうマニアックな狙いが私を招待する根っこにある。これはそうとうよく鳴ってきていると推測しながら指定席へ座らせていただく。自慢や睥睨というよくあるオーディオ病理にかかっている人による招きならお得意の現存在分析の嗅覚が働いてパスをするところだ。桜井さんが所有する各種オーディオシステムがいよいよ完成に向かって深化したことを確認したくて夕刻からの3時間を試聴タイムにする。

 

トーレンス124、テドラプリアンプ、マークレビンソンのチャンデバ、アンプジラパワーアンプの2台マルチ駆動、JBLパラゴンという音の入り口から出口への各種装置でお互いになじんでいるお宝LPを聴く。デイブ・ペル楽団の歌姫、ルシー・アン・ポークがコンボ編成のバンドを従えて歌っているなんとも麗しく愛しいアルバムだ。私などは月に数回、この歌手が唄っている「イージー・リビング」や「タイム・アフター・タイム」に聴き惚れてあっというまに20年という時を経ている始末だ。モードレコードはウエストコーストにあったが、すぐに倒産してしまった不運の会社だ。しかしいつまでも手元においておきたい愛すべきアルバムがたくさん残っていて、現在は輸入盤ショップでは「VSOP」から再発CDを見かけることがある。

パラゴンというスピーカー、いつも置くだけ、見るだけ、撫でるだけ状態の儘になっている金持ちステータス品の印象が強いが、桜井邸のパラゴンは強力な現役続行をしている稀有な見本だ。地下室は往年の吉祥寺「アウトバック」内でジャズを浴びているような錯覚に陥る圧倒的能率に包まれる。バリレラ針、アーム感度の安定、アンプジラパワーの精密なるブレンド力の賜物である。ものすごく濃厚で分厚い中域サウンドが左右両翼のスピーカーから押し寄せてややレンジ感を狭めたセンター音場を合成する。癒えたフェアチャイルドに付いているGEのバリレラ針は針圧は7グラム、モード盤オリジナルモノラルLPをがっちりと捉えて美しく正確な回転風景を繰り広げている。

一曲目の「シッティング・イン・ザ・サン」を聴いて分かった。ミディアムに気持よく流れる歌+コンボジャズの典型のような1950年代らしい曲である。こういう粋な歌はみんなに聴いてもらいたい不変の価値がある。桜井さんの狙いはライブハウスの前席の臨場性を、自宅で再現するという贅沢である。それも音響面を投げていない上質ライブハウスのそれである。平凡な装置だったら歌と駆け引きしているバッキングのテナー、トロンボーンは埋没した遠景のような音になるが、こちらは音が充満しているのに、個別楽器はグイグイとルシー・アン・ポークの伝法なのに可憐な声を彩って前に押し出す。

この辺の綱引きのマクロ風景は、ただ音がデカイだけの、昔のジャズ喫茶とは違った精緻な隈どりをもたらすから、桜井さんのパラゴン奏法は昔の機器をたくさん常用しているにも関わらず昔風ではないことに気がついた。こうしたアナログがもたらす出汁の相乗効果にどっぷり浸かってしまうと、あとから次々と繰り出す高解像力を誇るシステムの音は今、スーパーマーケットでよく見かける「白出汁」みたいなもので、パラゴンの個性の前に色あせてしまうものだから、オーディオというものは始末に負えないということを痛感することになる。

https://www.youtube.com/watch?v=zZiz9L2vSpQ

荻窪へ

2014-10-11 09:35:29 | JAZZ

台風19号が襲来するまえに四季に一度の荻窪ジャズ&オーディオ巡礼に向かう。カビと心中はしたくないからオーディオ書庫に早朝の空気と光をとおす。

名前失念の花が昨夜から咲きだした。林檎とトースト1枚、コーヒーの朝食で高い数値の肝臓脂肪は減るのだろうか?座間、京王線武蔵野台、JR武蔵境、荻窪という用件を消化しながらの電車乗り継ぎルートである。手土産はそれぞれ座間駅「ポエム」パン店の葡萄パンを持って行こうと思っている。今日から好きなジャズをどうぞ!楽しんでみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=qwg54-8pZGg


バイクで茅ヶ崎「開高健記念館」へミニツーリング

2014-10-05 21:32:37 | その他

先日、まとまった話が旧友3人と自分を足した秋晴れミニツーリングだ。板橋のYさんが250cc、港北のHさんが250cc、北鎌倉のDさんが90cc、自分は70ccの原付2種というなんとも不揃いなバイクが参集するというラインアップである。逗子の中華&生そば店「高雄」に集まって腹ごしらえしてから、Hさんが提案の開高健記念館まで一走りしようということで一致する。時間の約束事ではパンクチュアルな連中ばかりだ。座間、大和、長後、藤沢、鎌倉、逗子という手慣れたコースを街のチョイ乗り感覚で走って来たが所要時間は1時間と強かかる。

予想よりも早めに到着したが他の二氏はもっと早く着いてすぐ前のコーヒー店「きりぎりす」でコーヒータイムをしている。これに便乗したが飲んでみたコーヒーの優れた焙煎力と香り高い味覚に驚く。コーヒーカップも素晴らしい。仕入先の農園産地名を明示してあり、形の異なる珈琲豆の麻袋、ポリ袋が店内にぎっしりレイアウトされいかにもコーヒー命というパッションが漲っている小さなお店に好感を感じた。

「高雄」での腹ごしらえはこのまえが五目麺だったから、チャーハンを注文する。さすが「高雄」だけあってほっこりした焼き飯の火加減が絶妙だ。これまた香料の効いた細片のチャーシューをすくいながら噛みしめるアタリのメニューだった。

逗子からの134号海岸道路は土曜日の観光渋滞が腰越漁港付近まで断続している。90ccのDさんによる地元土地勘を頼って山の上にある住宅街の迷路風迂回道を追随していたら江ノ電の「鎌倉高校前」の下り坂に出くわす。ここから江の島、辻堂、茅ヶ崎までの海岸道路は渋滞もなく気持のよいツーリング気分に浸ることができた。菱沼海岸に近い「開高健記念館」は58歳で逝去した開高健の旧宅を一般公開したお洒落な洋館である。

今は茅ヶ崎市に移管されているらしい。湘南海岸特有の松林はこの洋館付近にも点在している。生原稿、書斎、初出掲載雑誌、単行本、大型渓流魚の剥製、膨大な秘蔵ワインなどの良質展示品にしばし見惚れる。「裸の王様」「夏の闇」「フィシュオン」「ベトナム戦争従軍記」等を愛読した時代をふと思い出す。またNHKで老作家になった井伏鱒二へのインタビュー時に敬意を込めて接している開高健のテレビ画像に映ったこれまた良質な眼差しも想い出す。

洋館を彩る名コピーライター、名作家ならではの箴言を刻んだ碑板も味わいがあるから、暇がある人には是非訪問してほしい静かな名所である。