けっこう長い雨に倦んでいたら少し晴れ間がのぞいてよい散歩日和になった。北鎌倉のDさん、葉山のT女と連絡しあってお昼のC級グルメとお茶でもしようという話になる。予約していた大和のT会病院で検診を済ませてから、保土ヶ谷バイパス、朝比奈インター、京急神武寺、池子付近の山道を通って逗子警察署裏の中華店「高雄」でそれぞれ合流する。Dさんは昔譲ったスーパーカブの90CCで横須賀線の線路沿いに、ぴったり30分でやってくる。T女は地元だから134号の海沿いから長柄橋経由でクルマなら20分くらいの近距離だ。「高雄」は看板が幼稚で安っぽく見えるところがあるから、のれん地だとか看板の色具合で店の品格を判断しようとする人が見逃しやすい中華店である。
逗子といっても桜山の外れで東逗子に近いところにある。ちょうどお昼のピークがひいた時間でタイミングがよい。行列になるほどの店ではないが客捌きがいいから、よい間合いの食事ができる。三人とも総合格闘技っぽいパフォーマンス過剰な「家」系中華を嫌うことで一致するところがあるので、ここの昔風町場の中華屋らしい平凡味をひいきしている。今回は自分が塩味スープの五目そば、お二方はサンマーめん、大粒で餡がむっちりと詰まっている餃子は一皿を分け合うことにする。
もう季節は乾期になっているから大汗をかいてフウフウいいながら食べることもない。五目そばは全く澄んで鶏ガラ系の上品なスープにも関わらずコクがある。五目の具には茹でた人参の細切りが二本浮いているところが他店とちがう色どりだ。これが大きかったら嫌気のさすところだが面白い。色味のよい具を選んで食べながら、スープを啜る。チャーシューもドンコ椎茸も美味い。お隣の二人も藤沢「古久家」に似たきっちり仕上げたサンマー麺を十分に味わいながら、時々この真夏の回顧話をしている。
食後のお茶はすぐ前に「きりぎりす」という秋めいた名前のコーヒー店があるが、やめてT女宅の大きな居間で遠望する海や溢れる緑の植樹を愛でながらお茶することになった。餃子分をT女が出してくれたから、お茶うけのお菓子をセブンイレブンで買う。一瞬、途中に点在する「マーロウ」のプリンでもと思ったがとどまる。上質な町場のC級グルメを凌いでしまう悪しきコストパフォーマンスを招いてしまい自分的にはいかにもバランスが悪い。セブンイレブンの割高だが美味の煎餅、ロールケーキなどをつまみながら、T女宅の天然ジュース、抹茶、煎茶などを楽しみながら夕暮れまでの時間を過ごす。