イーサン・ホークが演じるジャズトランペッター、チェット・ベイカーの生き様を描いた映画「Born To Be Blue」(ブルーに生まれついて)を川崎のシネマ109で観てきた。コンパクトなスペースで気分良く映画に浸ることができた。
映画の描き方としては1950年代半ばの絶頂期を過ぎて麻薬に溺れ演奏活動に支障をきたして、なんとか往時のジャズ演奏の復活を企図しながらも思うようにいかなくなったチェットに焦点を当てている。1960年代に入ったイタリアでの麻薬逮捕による国外追放事件から再びヨーロッパ各地を流浪する60年代後半までの時期に該当する。
何とも不安定な居心地のアメリカにおける恋人との愛憎模様を交えた再生物語の谷間に這うように流れるチェット・ベイカーのおはこ曲がどんな流れ方をして、イーサン・ホークがどのように憑依するのか?ここだけが興味のポイントである。イーサン・ホークは歌が良かった。オクラホマなのかカリフォルニアなのか?判然としないが田舎の景物を遠近化した場所に流れる曖昧に霞む「ブルールーム」にもジャズを感じた。仮復活の端緒に噛みしめるように歌う「アイブ・ネバー・ビーン・イン・ラブ・ビフォー」チェットここにあり!の感極まるバラッド、これを聴いていて心の奥底に嗚咽が走るのを防ぐことができなかった。
初冬の雨の日に映画館の闇で聴いたこの曲は私にとっての大切な歌として仕舞われたことは言うまでもない。チェット・ベイカーが日頃好きな知人たちの顔を思い浮かべた。
そこで12月10日(土)は午後からこの映画に触発された知人達を誘ってチェット・ベイカーの好きな演奏曲を各自2曲選出してもらうCD鑑賞会を開くので是非とも推薦曲を持ち寄って頂きたい。午後14時〜 、会費 コーヒー・菓子付き 1000円