服部です。美食の国、ベルギーの話の続きを。
9月8日に書いたB&Bは早々に予約したのですが 出発も間近になったある日のことブルージュの地図を見ていて B&Bのすぐそばに有名な三ツ星レストラン”De Karmeliet”があることに気がつきました。せっかくだから行ってみようという話になり 日本から電話で予約。8月29日に桂子さんと3人でブルージュに行き B&Bに荷物を置いた後 予約しておいた12時きっかりにレストランへ。
私たちが最初のお客、まず 正面奥にある庭を見渡すコーナーでアペリティフを。
(画像フォルダーの写真を見てください)
桂子さんと二人でフランス語のメニューの解読に取り掛かりましたが これが難しい!60ユーロのコースを食べる予定ですので 前菜から一つ、主菜からひとつを選ぶのですが、、さんざん迷い、英語でも質問し(「xxとはなんですか?」ばかり、でも親切に教えてくれました。)結局前菜は夫が冷製トマトスープ、私たちはトマトのファルシーなんとか(トマトに詰め物をしたものかと思ったら全然違っていましたが、、)。メインディッシュは夫も桂子さんもお魚のポワレを選んだので私は別のものにしようと「トマトのタルト」のナントカを頼んでみました。前菜もトマトなのに またトマト、それにタルトって??と疑問がいっぱいですが これも取材の一環です。何が出てくるかを楽しみに。メニューが決まって アペリティフの白ワイン(アルザスのものだったか?)がグラスに注がれると こんな美しいアミューズブーシュ(口取り)がしずしずと運ばれてきました。
ミニトマトとバジルのタルトレット詰め、いわしのマリネにビーツ、大きなスプーンに載っていたのは多分マグロ、白いカップにはムール貝と生ハム、手前の焼き菓子みたいなものはお菓子ではなくて ガーリックの効いた塩味です。
それからいよいよテーブルに案内されたのですが 真っ白なクロス、テーブルや壁際のお花のアレンジメントもスタイリッシュ、格調高いレストランです。ギャルソンたちも品が良く、私たちを迎えてくれてメニューを渡してくれた女性も背が高くて見惚れるほど美しい人でした。私は夫のしわだらけのジャケットや昨日行ったワーテルローの土がついて汚れている自分の靴が気になり始めました。(高級レストランとはいえ ランチなら気軽に行けるかなと思って来たのですが)桂子さんはきちんとしたマダム風の装い。(写真は画像フォルダーに)
前菜はまず眼福!
一番右は ピメント、なす、トマトなどのマリネーにチーズを重ねてかためたもの(まあ、なんというおいしいさ!)、上にのっていたのはアーモンドスライス。一番左がミニコロッケ、ふわっとしたチーズにオリーブなど。夫のところには深い四角いお皿の真中にこんもりとなにかが盛られたのが運んでこられました。「あれっ、スープのはずなのに」と思っていたら ギャルソンの持ってきた小さな銀のポットからトマトスープがお皿に注がれました。ちょっと面白い演出です。
夫と桂子さんが選んだお魚料理。
魚のポワレに野菜各種のソテー添え、手前の白いものはほとんどソースのようにゆるいマッシュトポテト、それに上に載っているのはなにか貝のマリネのようなものでしたよね、桂子さん?
さて私のメインディッシュ、トマトのタルトのなんとか です。この色彩はマティスの絵のよう。タルトにチーズ、肉のトマト煮を入れて上にトマトの薄切りを並べています。その上にアーモンドを散らして。タルトはまだパリっとしていて とろりとしたチーズ、煮たトマト、生のトマトが絶妙のバランス、食べてしまうのが惜しいような素晴らしい美味でした。付け合せのサラダは細く切ったレタスやサラダ菜、万能ねぎにコリアンダーの風味、ドライトマトが入っていました。あまりに感動したためか写真はピントが合っていません。
ワインとおいしい料理とすばらしい雰囲気に陶然としてきたころ デザートの時間に。まず様々なプチフールの盛り合わせと小さく四角に固めてチョコレートをかけたフランボウワズのアイスクリーム。「食べたいけれどもう食べられないわね。でもせっかくだから 一つくらいは」と私は杏のタルトレットを食べました。私はこのレストランを訪れた人の体験記を読んでいたので まだこれからデザートが運ばれてくるであろうと思っていたのですが 他の二人は信じない様子。でもやはり 来ました、魅惑のデザート!これで一人前です。
左から びわ(多分)にシャーベット、チョコレートムース、スフレにラズベリーアイスクリーム。まあ、なんという幸せ、「もう食べられないわね」はどこへやらペロリと食べてしまいました。(まあいいや、帰ったら断食でもなんでもすればいいさ!今は取材、取材!)
桂子さんは「今度は主人のお誕生日に来たいわ!」また気軽に来られるところにお住まいの彼女がうらやましい私たちでした。食後の飲み物に紅茶を頼んだらこんな鉄瓶で出されてびっくり。「日本のものですか?」と聞くと「はい、日本のです。」とにっこりするギャルソン。この日泊まったB&Bでもこの鉄瓶が使われていたし 鉄瓶を売る店も見かけたのでB&Bのオウナーに聞いてみたら 最近人気なのだそうです。「またこの鉄瓶は高価なので 高級感があるのがいいのでしょう」とのことでした。残念なことに この紅茶ははっきり言ってまずかったので 減点!紅茶にはけっこううるさい私です。すばらしいランチだったのに このお茶でがっかりでした。コーヒーを頼むべきでした。
さて優雅なランチの後でいささか気だるい気分の私たちでしたがこの後またマルクト広場に歩いて行きました。(朝は駅から修道院などを見学しながら広場まで歩いてきたのです。)夫は「腹ごなしに鐘楼(高さ83メートル)に登ってくる」と申します。私は桂子さんと母のお土産を買ったり 広場に面した郵便局を見学したり。外国に行ったら必ず見たいのが郵便局とスーパーなのですが 夫といっしょの大忙し旅行ではなかなかチャンスがありません。今回はどちらも見学できたので満足です。郵便局ではかわいい猫の切手やオランダ語のグリーティングカードを手に入れました。
4時ごろブリュッセルにもどる桂子さんと別れて 私たちはバスでダームという小さい町に向かいました。観光客でいっぱいのブルージュにくらべてひっそりと静かでした。立派な教会があります。私も「腹ごなし」に43メートルの教会の塔に登り、町を散策。古本市(もちろんオランダ語の本ばかり)をのぞいたり アントワープから来たというお年寄りの団体さんに話しかけられたり、カフェでミネラルウォーターを飲みながら絵はがきを書いたり。帰りは船に乗り 運河沿いののどかな景色を楽しみながらブルージュにもどってきました。
夕方になると日帰りの観光客はいなくなって町は静かになりました。駅からまたゆっくり景色を眺めながら朝通った道を歩いていると 夫は「やっぱりお腹がすいてきた、ビールが飲みたいなあ」と言います。私はフルーツにお茶くらいでいいなあ。結局B&Bのそばに小さいスーパーをみつけて夕食の買出しをして帰りました。ひらめの燻製とハムとチーズを少しづつ、パン、ネクタリンとトマト、それにビール。B&Bにもどると オウナー夫妻に「De Karmeliet”はどうでした?おいしかったですか?」と聞かれました。彼らは行ったことがないそうです。「それはそれは おいしかったですよ!すっかり飽食したので夕食はこれです。」とスーパーの袋を見せると 笑いながら「寒くなかったら外のテーブルで召し上がれ」とお皿やフォークを貸してくれました。人懐っこく近寄ってくるオウナー夫妻の猫たちと遊んだりハムをおすそ分けしたりしながら 優雅な庭での夕食でした。一生忘れられない幸福な一日でした。