Super-Multi-Coated TAKUMAR 50mmF1.4
20191229にUpしたように「Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mmF1.8」は既に手元にあるが、Pentaxはこの1本だけだった。ある日ある時何故か「Super-Multi-Coated TAKUMAR」という名前が気になり、1.4をどうしても使ってみたくなった。例によって、評判などあちこち閲覧してみたが、特別なレンズと言う訳ではない。しかし、個性的なレンズであることは判った。先ず、外せないのは、トリウムレンズであることだろう。別にトリウムが好きと言う訳ではないが。
これぞと思うものを落札した(No.6129974)が、とんだ食わせ物で、レンズはカビカビで被写界深度の表示環を固定しているイモネジが3本とも無い。分解するまでも無く、とんだ訳アリだった。笑えるのは、「開放固定専用」などと商品説明があったが、要は絞りが動かないというもの。原因は、分解後の組み立てで、Auto/Manualの「押しピン」が脱落、それとMountの組み立てに誤りがあったためで、「押しピン」はMountの中に転がっていた。正しく組み立てるとちょっと渋いが、絞り開閉はOKで、Auto/Manualも機能するようになった。レンズのカビはかなり綺麗に取れるかもしれないが、イモネジには困った。このレンズには前後キャップもフィルターも無かったので随分割高になった。
どうしてもイモネジが欲しくて、適当なものは無いかと物色してみる。かなり外装にキズがあるが、それらしいものを見つけて落札(No.4800405)。これも勿論「Super-Multi-Coated TAKUMAR」である。キズが多いだけに安かったが、こちらも負けないくらいヒドいもので、やはり分解済みのもの。ネジが紛失したのか、違うものを使っていたり、中も外装に劣らず相当にキズだらけだった。
唯一の救いは、レンズがそれなりに綺麗でカビも少ないこと、イモネジが付いていることだった。それに、前後キャップも付いている。レンズの黄変は先のも後のも似たようなもので、これはこれで良しとする。
上段左から下段右へ、前レンズから最後のレンズまで並べてある。上段下段の間には絞り羽根の開閉がある。周囲が黒くシールしてあるのが合わせレンズなのだが、上段右端は合わせレンズではないらしい。絞りから後ろ(下段)の3群4枚に色が付いている。明らかに黄変なのは、そのうちの1群2枚の合わせレンズである。3枚目、4枚目も変色しているように見えるが、これはSky Lightと同じような色で、コーティングによるものであろう。
【ニコイチ】
全て、「良いとこ取り」をして完成させる。いずれも分解してあったので、何が正しいのか判らず、今までの経験的な判断で組み立てた。ちょっと難しかったのはMountの組み方と無限遠点の調整。
Mountは昔のレンズシャッターに似たような構造になっている。組み違えると、全く機能しない。
無限遠点と最短距離はセットで、両方が取れないとヘリコイドの嵌め口を替える必要がある。6条のヘリコイドで、3mm/嵌め口(60°)のステップでレンズの伸長に関わる。また、繰り出しが大きすぎると絞りの連動棒が外れてしまい、Auto/Manualの操作が出来なくなる。
位置関係に全く余裕はなく、そのポイント以外は全て何かしら不都合が生じることになるようだ。
全ての部品を取り付けて、完成した「Super-Multi-Coated TAKUMAR 50mmF1.4」は、レンズのカビ・汚れも無くなり、Focus環の滑らかな操作感を取り戻し、絞り環の軽快なクリック感も復活して見事に現役復帰した。ヘリコイドの清掃・新しいグリスの添加、Mountの清掃・注油の甲斐があったというものだ。絞り羽根も多いので、綺麗な玉ボケが期待できる。開放の「とろけるボケ」と絞って「中央重点」の描写がどんなものか、いや待ち遠しいね。