Tokyo Walker

諸事探訪

Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mmF1.8

2019年12月29日 15時23分39秒 | カメラ

 Old Lensと言えば、SMC Pentaxは外せないだろう。勿論、中古2,550円で落札(2019/03/17、Yahoo Auction)。前後キャップ付だった。中古と言っても程度は良くて、前オーナーはほとんど使用していなかった様子である。保存環境も良かったのだろう。外装、Lens共に健全である。勿論、フォーカス環や絞り環の操作性にも問題ない。コーティングの劣化も全くないとは言わないが、そのまま充分使用可能という状態であった。

 本機が作られたのは、例のトリウムレンズ使用の後期より以前(1964年)のもののようで、トリウムレンズ特有の黄変は無い。「Super-Multi-Coated」というのは7層コーティングのことのようで、「青色と紫色の二色に輝く美しいコーティング。描写はぐっと現代的になり、発色がよく、逆光耐性も向上した」と評価されている。まあ、逆光時のフレア、ゴーストは出て当たり前の時代ではあったが。

 焦点距離「55mm」のLensは、1958年に誕生した「PENTAX K、PENTAX S」のセットレンズとして開発されたようで、コーティング技術によってレンズ表面の乱反射を押さえ、「ダブルガウス」から更に表面数の多い「変形ダブルガウスタイプ」にしたことにより、一眼レフに必要不可欠なバックフォーカスを確保した上で、「ハイエンドな明るさも実現した」という評である。

 その後、全世界で400万台以上を売り上げベストセラーとなった「PENTAX SP/1964年」のセットレンズとして「Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mmF1.8(Filter軽49mm)」が登場する。凡そ55年前に発売されたものである。やがて、SPの嵐は幻のごとく消え去り、その終焉と共に本機も生産を終了する。

 その原因は、Mountの形状にあるのかもしれない。この頃、M42 Mount(プラクチカスクリュー・マウント)は一般的であり、他の多くのメーカーも採用していた方式である。しかし、一部にバヨネット方式が採用され始め、その正確性、優位性、機能拡張性が不動のものとなりつつあった。Pentaxがバヨネット方式に切り替えたのは最後のメーカーだったように記憶している。そこにはベストセラーを出した成功体験が、技術革新の障害となったのかもしれない。

 1958年に誕生した「55mmF1.8」系は1975年にK Mount化されたものが最後となった。そして、この後継は1977年、「SMC PENTAX」に託される。φ49mmで通してきたフィルター・サイズもここでφ52mmに変更された。但し、部品面やLensの形状などでは結構互換性があるらしい。

 半世紀という時空を超えて、目の前にやって来た「Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mmF1.8」だが、モノとしてその完成度の高さを改めて感じ、敬意を表するものである。




Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mmF1.8





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