このレンズに目を付けて、最初に1,200円で購入したのがNo.2675604。フィルター取り付け枠、絞り環にスレキズがあり、更にフォーカス環が重くて気に入らない。後ろのレンズには50年前の指紋がベッタリという代物だった。
続いて同じものを1,500円で購入、No.2340953。今度は絞り羽根がペッタリ張り付いて滅多に動かない。絞り環もやたら重い。フォーカス環も先に買ったものより更に重い。レンズは前が拭き傷だらけで、重症な線キズもある。後ろのレンズはカビが繁殖中でスリガラスのような状態というものだった。
仕方なく3本目の同じものを1,000円で購入No.2870796。こちらも似たようなもので、後ろのレンズは、どれも甲乙付け難い。諦めて3本の良いとこ取りをすることにした。
最初に、絞りが軽快に開閉するものを最優先。この本体を基本にして、フィルター取り付け枠、フォーカス環はキズが少ないもの。フォーカス環の文字表示が綺麗なもの。そして、絞り環はアルミ梨地が綺麗で表示文字がしっかりしているもの。最後にマウントはスレ、キズの少ないもの、という基準で。それでも、ヘリコイドのグリス交換は避けられない。
じっくり分解しながら、部品レベルで無水アルコールを使って清掃する。フォーカスのヘリコイドも丁寧に古いグリスを拭き取って、アルコールで洗浄する。この時、うっかりヘリコイドの受け側の位置確認を怠ってしまった。組み立ては、ねじ込んで行き当たった所から1回転(360度)戻した所を無限遠点にした(大方この辺だろう)。前のレンズユニットも外して小カビ除去、埃も取る。
前のレンズユニットは絞りユニットに組み付けるが、この時、絞りユニットの横に絞り開閉の位置調整ネジ(3か所)がある。絞りユニット裏の機構動作を見ながら、開放又は最小絞りで調整する。
必ず、両端(開放で設定したら最小絞りも確認)で動作を確認する。尚、絞り開閉の微調整はマウントを外した裏からでも調整出来る機構があるので、あまり神経質になる必要はない。
それから前レンズユニットを取り付ける。後ろレンズユニットも外して一番外側のレンズをカニ目レンチで外す。小カビ、埃を取り、ブロアーしながら組み立てる。
今回は、スリガラス状レンズはさて置き、指紋付きレンズを清掃してみたが、どうしても白い斑点が残り、明らかに写りに影響があると思われるので、残る1台の方を外して清掃してみた。小カビを除去してみると、細かい拭き傷、縁の方にカビ痕・コーティング劣化が少しあるものの多少はマシかと思い、これを採用することにした。レンズを交換し、レンチで締めて、後ろレンズユニットを絞りユニットに手締めで取り付ける。
絞り環を取り付けて、マウントを取り付ける。フォーカスと絞りの動作を確認する。マウント面で見ると、無限遠点の時のリヤレンズユニットの出方が少し大きいように見える。ヘリコイドの受け側の位置調整で、行き当たった所から1回転(360度)戻しとしたが更に90度ほど戻し(合計450度)が必要だったかもしれない。しかし、無限遠点を少し通り過ぎるだけなので、気にすることはない。更にはアダプターを入手してカメラに付けて確認しなければ判らないので、このまま進める。フィルター取り付け枠を付けて、レンズ銘板を付けたら出来上がり。
梨地の白い絞り環も丁寧に清掃したので美しい。そしてクリックも小気味よい。フォーカス環も当然のことながら滑らかである。これで、一番前と一番後ろのレンズが美品なら何も言うことはないのだが。最初は50年も昔の随分地味なレンズだと思っていたが、それが見ているうちに何だか「カッコイイ」レンズに見えて来た。いや、これはなかなかのモノだと思う。
分解した時、どこからともなく現れた2mm角くらいの薄い金属製の板。2台で出て来たが、どこにどんな目的で使用してあったのかが解らない。3台目で慎重に確認しようとしたが、こちらには肝心の「板」が出てこなかった。結局「板」は残ってしまったが何等不具合があるでもなく、異常もない。
2019/12/12、どうしてもレンズが気掛かりでなんとなくオークションを眺めていたら、「絞り環が動かない」ということでジャンク品(200円)というものが出ていた。絞り環はどうでも良いが肝心のレンズはどうか、見た目はきれいに見える。さて、どうしたものかと思ったが、ダメもとで落札。
No.2734271。製番からすると、最後に購入したものより少し古いくらいのもので、まあ同時代のモノということになる。
さて、外装はどうか。何と、良いとこ取りした筈のモノより良いではないか。塗装落ちも殆ど無い状態で文字も清掃すればきれいになりそうだ。フィルター取り付け枠もきれいなものだ。肝心のレンズはどうか。何と、レンズも清掃前にしてはずいぶんきれいで、埃はあるが、カビ繁殖はないようだ。コーティングの劣化もあまり見受けられない。何のことはない、200円のジャンク品が一番いいレンズだった。「絞り環が動かない」という説明だったが、ちゃんと動くではないか。しかしよく見ると、絞り羽根に油が回っているのが見える。「絞り環が動かない」は実は「フォーカス環が動かない」の誤りのようで、ヘリコイドのグリス劣化でえらく重い。またも、分解清掃になるが4本目ともなれば勝手知った慣れたもので、「任しなさい」の一言である。
今度こそ、あの不思議な「四角い金属片」の所在を突き止めなくては、と今から意気込む。本機から前後のレンズを頂戴し、早速清掃して載せ替えた。
この際、あの不思議な「四角い金属片」の所在を突き止めなくては、と慎重に分解したが、遂に見つからなかった。もう、何度も分解しているので、無限遠点も行方知れずだが、いずれにしてもMount Adapterが無ければ無限遠点出しも出来やしない。
この頃、フォーカス環のデザインには「フラット・スリット」と「波型スリット」の2種類がある。1968年頃から「波型スリット」になったようで、「フラット・スリット」の方が古いモノであるらしい。見た目、「波型スリット」の方がクラシックに感じるが、実際はそうでもなかったらしい。
使用している小ねじも、製造番号からすると新しい番号だが-ネジが使用されているという不思議もあった。通常、新しいモノの方が+ネジというのがこの世界の流れのはずなのだが。
絞り環のクリック・ボールは、丁度基準線の真下にある。慣れてしまえば何の事も無いが、知らずに雑に扱えば、飛び出して行方不明になってしまう。とにかく実測φ1.25mmという小さい金属のボールである。これを運悪く紛失した方にアドバイス。φ1.2mmのボールは市販ボールペンの先端のボールで代用できる。ボールペンの芯の先端をニッパーで切るように押さえるとボールがポロリと外れる。出涸らしの(1.2mm太字用)ボールペンで充分である。お試しあれ。
Mount Adapterは数々あるが、今回はAmazonで「MD-NEX/YacosCamera/YIYO(株式会社一洋)/2,000円」を採用してみた。デザインは悪くないがレンズ側の嵌合が、金属同士が引き摺るような感じがあって、Lockも解除するときピンボタンに違和感がある。一度Lensを戻し方向へ回してからピンボタンを押すとLock解除がスムーズになる。決して使えないという訳ではないが、細かい操作感(感触)として今一の完成度。Body側は滑らかで、ガタもなく、Lockも申し分ない操作感だったが。
無限遠点出しの顛末はまた機会があれば書くとして、とにかくモノはヘリコイドのグリス交換、キッチリ無限遠点出しを完了して出来上がり、やっと写真を撮る気になったものである。どんな絵が出て来るか、実に楽しみですな。
MC ROKKOR-PF 55mmF1.7
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