NPO法人 地域福祉協会

清掃事業  森林事業(植栽・剪定)

ショートショート 音楽の遺伝子

2018-07-25 | 文学
夏の夜。


イギリスのある街。


音楽の演奏イベント。



「次は
ハンナ・ピールさんです」



くたびれた中高年で
溢れかえる会場。


清楚で
美しく
真面目そうなお嬢さん達が現れた。



どうせまた
訳のわからない歌を聴かされるのだろう。


演奏が始まる。


オルゴールのような楽器の音色。


美しいハーモニー。



どこかで
聴いたことがあるような
メロディー。


「あれ、かスタイル・カウンシルか何かけ?」

私は独り言を呟く。


「なあん、ニュー・オーダーやちゃ。
ブルーマンデーやねか」


隣にいた
スキンヘッドのおじさんが入ってきた。


「懐かしや。
こい若い者なよう知っとるなぁ」


「この若いこらな
80年代のブリティッシュロック
良く歌っとっちゃ」

「しゃんけ。知らんだちゃー」



あちらこちらで
中高年の似たような会話が
交わされたのであろう。


エンディングでは
中高年らしき人々の
大歓声が巻きおこっていた。


夜空に
真っ赤な三日月が
見えた。



おわり



高橋作