(続き)
「ヨウ君ごめんね。
ららみ先生はいつも、『優しい音で弾いてね』って言っているのに、
今日に限って、『元気な音を出してね』って言われたから、
ヨウ君はビックリしちゃったんだよね。」
と私が言うと、ヨウ君は、少し安心したお顔で頷きました。
「普段の練習の時は、
『優しい音で練習してね』って指導しているのだけど、
今日のレッスンでは、
発表会に向けて、ちょっと芸術的な演出をしようと思ったの。
ちゃんと、その事を説明すればよかったのに、
いきなり『強く弾いてね』と言ってごめんなさい。」
ヨウ君は、私の説明を聞いて、納得したようでした。
次の日、私はお母様に電話をして、レッスンの様子を話し、謝りました。
「実はヨウはアスペルガーなのです。
なので、何時もと違うことを言われると、混乱してしまうのです。」
と仰いました。
ヨウ君とテツ君の兄弟を紹介してくださった方から、
2人共ADHDだとは伺っていたのですが、
ヨウ君がアスペルガーだったとは知りませんでした。
アスペルガーのお子さんは、何人も指導したことがあり、
その特徴は把握していたつもりでした。
ですが、ヨウ君がアスペルガーとは思いもしなかったのです。
当たり前のことですが、アスペルガー症候群も千差万別です。
一見したところ、そうは見えないヨウ君に対して、
私は配慮が足りなかったのだと思いました。
そして、ご兄弟のレッスンをお引き受けする前に、
もっと深く、お母様にお話を伺うべきだった、と後悔しました。
まだまだ勉強が足りないな~と、大いに反省した出来事でした。