1曲に絞るのは、難しいね。
でも、これかな?
「in my life」
There are places I remember
All my life though some have changed
Some forever not for better
Some have gone and some remain
All these places have their moments
With lovers and friends I still can recall
Some are dead and some are living
In my life I've loved them all
生涯忘れられない場所がいくつかある
中には変わってしまった場所もあれば
永久に、悪くなってしまった場所
なくなった場所、昔のままの場所もあるけど
どの場所にもそれぞれに思い出がある
忘れられない恋人たちや友達との
死んでしまった人たち、元気でいる人たち
この人生で僕は、そのみんなを愛してきた……
最終回です。お付き合いいただきありがとうございました。感想をお待ちしております。
最終回は、さおりさんの語りです。
私は、遥希君から携帯電話を渡され、南君、広人君に、そして、私自身にも読み聞かせるように声に出して読んだ。
元気にしていますか。
僕も順調に治療のメニューを消化していますよ。ただ、来月、二十三日から選抜大会が開幕するので、少し、焦る気持ちもあります。みんなに応援してもらっているので、頑張って甲子園のマウンドに立ち、お礼をしたいと思っています。健康な時には、考えたこともなかったけれど、この病気が僕にたくさんの人たちに支えてもらっていることを教えてくれました、
世の中には、たくさんの病気に苦しむ人がいます。その中にぼくらと同世代の人もいて、夢や希望を見失っている人もいるでしょう。そんな仲間に、僕が投げ続けることで、勇気づけることができれば、幸せだなあなんてね。
ハルキ君のお父さんが僕の目標です。ハルキ君との約束を達成し、元気に働いている。僕も何としても甲子園までには間に合わせたいと思っています。
ハルキ君たちの大漁祭での太鼓やバンドは、僕を元気にしてくれたよ。ありがとう。そして、約束するよ。三月二十三日、僕は甲子園のグランドに立つ姿をハルキ君たちに届けます。
もし、僕が選手宣誓できるなら、それはよっぽど、運がないと難しいけど・笑
これまでの感謝の気持ちと、いろんなことで悩んでいる人、生きる希望を失っている人を元気にする、そんな、最後まであきらめずプレーすることを宣誓したいなあ、なんてね。少なくても、僕を支えてくれた人たちには心の中で、こんなふうに宣誓しながら行進します。
ハルキ君も、小学校卒業まで、あと、一か月くらいかな…
本文は、ここで終わっていた。
この後に、追伸とあって、こう書かれてあった。
息子の携帯電話を整理していたら、坂田さんあてのメールが送信されずに残っていました。まだ、何かを書こうと思ったのでしょう。失礼と思いながら、送らせていただきます。少しでも亡き息子の気持ちにふれていただければ思います。
追伸は、高杉君のお父さんから。送信日は、二○○七年三月二十三日。北澤高校が北海道の代表として、胸を張り、堂々と甲子園のグランドを行進した日。そして、遙希君たちがこれからに向けて、小学校を旅立った日。
次の朝、「今日は、二人で舞鳥に帰る」という二人を緑川の駅で見送った。改札を抜けていく二人の背中を見ながら、これからもこの子たちのこれからを南君と一緒に、いつまでもいつまでも見つめていたいと思った。
家に帰ると、二人からのメッセージがテーブルの上においてあった。
「先生みたいな先生になるよ! ハルキ」
「先生が務める学校を僕が建てるよ! ヒロト」
30話です。コツコツ整理していきます。
九回の裏。六対五。これを守りきれば優勝だ。
「北澤高校選手の交代をお知らせします。…ピッチャー…高杉君、背番号『1』」
再び、高杉コールが球場一杯に広がる。およそ三か月の入院生活、大病を克服した北澤のエースは、また、この円山球場のマウンドに帰ってきたのだった。
投球練習を終えた高杉君は、ゆっくり空を仰ぎ、大きく深呼吸をした。最終回、一番バッターから始まる。キャッチャーのサインに頷くと大きなモーションから、一球目を投げ込む。
「速い!」
春からの苦しみや悔しさ、これからの希望が込められた初球は、渾身のストレート。文句なしのストライク。そして、二球目も三球目も、一球目と同じく、「これが高杉だ」と言わんばかりのスピードボール。三球目に出したバットが空を切り、三球三振。
「ウォー」
高杉君が気合いを込めて、雄叫びを上げる。病院での穏やかで柔和な高杉君とは別人だった。気迫に満ちて、全身が燃えて見えた。
あと、二人だ。
次のバッターには、さっきとは一転して、スローボールから、二球目も大きく曲がった変化球。簡単に追い込んでしまった。
しかし、野球の神様はきまぐれだった。一球を外に外して、勝負の四球目。当たり損ねの打球がセンター方向のフライなる。誰もが討ち取った思った時、強い風が吹いて、ボールが押し戻され、センターとセカンドの間にポトリと落ちた。同点のランナーが出る。ワンアウト、二塁。
「勝ってるんだから、大丈夫!」
母さんが奏太の肩を抱いて言った。
「高杉君なら、乗り越えるさ。がんばれ!」
広人が声を挙げる。
僕も、
『大丈夫、大丈夫』
と自分に言い聞かせたが、緊張して声が出なかった。
三番バッターが打席に立つ。復活のマウンドを大胆、豪快に三振を奪い、鮮やかに飾った高杉君だったが、ここはさすがに慎重だ。きわどいコースのボールを内外に投げ込む。何としても追い付きたい朝日川工業の選手も必死だった。そんなボールをカットして、粘りに粘る。七球までは数えていた球数はもうわからない。グランドに叩きつけるように打った打球はサードの前まで大きく弾んだ。ジャンプしてボールを押さえ、後ろにそらすことはなかったが、ボールはグローブからこぼれ、すかさず、送球しようといたが、もう間に合わなかった。
悪い予感が胸に広がり始める。二番、三番のバッターには、高杉君は勝利していたのに、運がない。流れは、明らかに朝日川工業に傾いている。ついに、サヨナラのランナーが出てしまった。
30話、いかがだったでしょう?感想をお待ちしています。