風船花(ホウセンカ)です! 元気です!

教育系ポップスバンド 風船花(ホウセンカ)の活動日記
日常の中であれこれ思ったことなど

続 ひまわりのころ 6

2015年08月31日 22時25分08秒 | 続 ひまわりのころ

6話です。今日は、やや短めです。

先生は、この写真の日のワンシーンワンシーンを宝箱の中の宝石を見つめるような目で、大切に語ってくれた。そして、僕に聞く。
「今更だけど、何であの場面でバットを振らなかったんだ?」
僕は驚いた。
「えっ?先生、あの時、スクイズのサインを出したでしょ!」
先生がサインを間違ったのか、僕が見間違ったのか、それは、今はもう確かめようもない。でも、僕は、あの打席に立った時の心境を今でもしっかり覚えている。
『ワンアウトだし、ピッチャーと僕の力関係を考えたら、打ち返す可能性は十パーセントくらいのものだ』
そんな弱気が「打て」サインを「スクイズ」のサインに見せたのかもしれない。
『よし、スクイズだ』
相手ピッチャーのモーションに合わせて、バントに構え、球筋を見極めて、バットを出す。
信吾がホームに滑り込み、結果、僕らは先制したのだった。寿ファイターズに先制したのは初めてだったので、僕らはすっかり舞い上がってしまった。そんな興奮した雰囲気の中で、その時のサインについて、僕も先生も、信吾も確かめずにいた。そして、先生と僕の二人では、その謎を解くことが出来なかった。
「いつか、信吾に聞いてみるよ」
「いや、間違いなく、『打て!』のサインをだしたはずだ」
先生は、右手で左耳をつかんだ。
それは、『スクイズ』のサインだった。



8月も今日で終わり、今年の「ひまわりのころ」も終わりですね。

続編に対する感想をお持ちしてます!!!



スクールカウンセラーになるためには……など、いろいろ考えることがあった!

2015年08月28日 22時38分20秒 | 人生

将来は、カウンセラーを目指そうかと資格等について確認してみた。いくつかの基準があるようなので、現在の経験でもなんとかなるかも、可能性をありで気持ちを明るくした。

4月からの勤務校の頑張りを認めてもらえるようなお話をいただき、うれしい。報われた気分になる。やれば、見ててくれる人がいるということ。よかった。

子供の都合に合わせて、力を尽くすことが大人の都合にもよいというのがいい。時々、大人の都合で子供を振り回すことがあるからね。いつでも子供主体で考えなきゃね。

何か始めようとすると、何もしようとしない人があれこれ言ってきて、足元をすくおうとする。腹が立つけど、あれこれを素直に聞いて、「ありがとうございます」。あれこれ対策を行うことによって、新しい企画がよりよくなった。これでいい。残念ですが、あれこれ言った人とは、「さようなら」。

がんばりましょ!


続 ひまわりのころ 5

2015年08月28日 22時29分15秒 | 続 ひまわりのころ

5話目です。遥希と広人の対決。思い出のゲームを南先生が語ります。

十一月三日、初雪の便りも聞こえてくる。舞鳥の海も白く冬色の波を立てている。
それでも、午後一時のグランドは青空が広がり、六年生の最後の試合、そして、遥希と広人の対決にふさわしい小春日和となった。
「おねがいしまーす」
空まで響く声で試合が始まる。しかし、がっかりしたのは、向こうの監督だ。守備に散らばっていく九人の中に広人の姿はなかった。
寿ファイターズは、この地区では強豪チームで、少年野球の南北海道大会の常連だった。我が弱小舞鳥シーガルは、現在、九連敗中だった。
六年生最後の試合、さらには、格下チームに負ける訳にはいかないという気持ちはわからないでもないが、広人を出さないのは、この試合の意味を理解していないとしか言いようがない。こうなるなら、事前にしっかり寿の監督に告げておくべきだったと後悔していた。

先攻はシーガル、一番バッターは信吾。
俺もこの子たちとやる最後の試合だから、監督らしいところを見せなければ、あれこれ考えて昨晩は眠れなかった。その上、保護者はもちろん、舞鳥の野球好きの人たちがたくさん応援に来てくれていた。そして、
「今日も、かっこよく頼むぞ」と声をかけられた。
昨日から、決めていたとおり、脚の速い信吾にはバントのサインを送る。
「ズズチャ、ズズチャ、ゴーゴーゴー信吾!」
「ズズチャ、ズズチャ、ゴーゴーゴー信吾!」
信吾は、バットを短く持ってコンパクトな構えから、さっとバントに切り替え、自分に向かってくるボールにバットを合わせた。
ボールは三塁に続くライン上を力なく転がっていく。
投げてもギリギリ、そして、ファールとなる判断した三塁手はボールの動きを待った。するとボールはそのまま線上で転がるのを止めてしまった。それから、慌てて、ファーストの送球したものだから、大暴投となり、気が付いた時には、信吾は二塁上でガッツポーズをとっていた。二番の淳平は送りバントで、ワンアウト三塁となった。

初回から先制のチャンスがやってきた。三番は遥希。おれは、
「最後の試合だ、思い切っていけ!」と心の中で叫びながら、「打て!」のサイン。
初球は、遥希の打ちたいという強い気持ちを殺ぐような大きくはずれたボールだった。そして、二球目。再び、
「打て!」
とサインを出す。

しかし、遥希は指示と違う行動にでる。
バントだった。ボールはピッチャー前に転がり、思いっ切りダッシュしてボールを拾い、バックホームするも、信吾の脚が一歩早かった。
「遥希、いいぞ!」
「信吾、さすが速いぞ!」
応援席から歓声が上がる。

その後、気持ちを切り替えたピッチャーから、四、五番が三振に切って取られ、一点のまま、最初の回は終了した。
多少、サインを無視した遥希のバッティングが気にはなったが、常にポジティブなおれだから、結果に満足だった。




続 ひまわりのころ 4

2015年08月27日 17時25分18秒 | 続 ひまわりのころ

ここから、語り手が南先生になります。

「六年生、坂田君、今すぐ、職員室に来なさい」
おれは、大漁祭のあとの月曜日の昼休み、遥希を職員室に呼んだ。
「失礼します!」
遥希は一礼すると、ニコニコしながら職員室に入ってくる。
「ハルキ、なんで呼ばれたかわかるか?」
ニコニコ顔が、神妙な顔に変わっていく。田中先生が、
「ハルキ、わからんのか?」
にやけた顔で冷やかすように声をかける。遥希は、困り顔になり、
「わかりません」
と答えた。今、思えば、うんと喜ばせたかったからといえ、子どもをからかう悪い大人たちだった。 そして、こう告げた
「小学校での野球の最後は広人との対決ぞ」
遥希は、期待どおり、うれしさを隠し切れないという表情で、
「先生、寿ファイターズとの試合!ヒロトと野球ができるの?」
飛び上がるように喜んでくれた。大漁祭ですべてが終了した思っていた遥希にとっても考えもしないイベントが飛び込んできたのだから
 大漁祭が終わって、一週間後、おれは、寿ファイターズとの練習試合を組んだ。本当に頑張り屋のこの子たちにたくさんの思い出を作ってやりたかった。この子たちの友情物語をとことん演出したかった。
 十一月はじめに行う六年生を送る会では、毎年、お父さんやお母さんとのレクレーション試合が恒例だった。それを元チームメイト、いや親友との対決試合にしたのだ。
「一緒にやるんじゃないぞ、対決だ!」
おれは「対決」と繰り返した。
 そして、この大人は悪のりを続けた。
「ハルキ、ちょっと耳を貸せ!」
「え~!」
おれは、小学生の子ども相手にとんでもないことを耳打ちした。

「負けたものは、カホに告白するんだ」