帰りがけ、2年生の生徒が、「おじさんから『ひまわりのころ』をもらいました」と声をかけられる。
「読み終わったら、感想を話に来てね」
「は~い、さようなら」って……おじさんは南幌中学校の卒業生で、2年間、教室という空間を共有した仲間です。
では、18話です。
間もなく。三時間目、始業のチャイムがなり、いつになく早く先生が教室に入ってきた。すると、コウタはここぞとばかりにスクッと立ち、
「遠山先生、大山君に拳で殴られました」
と極めて冷静に報告した。
僕が慌てて理由を説明しようとすると、
「いいですか、理由はあると思いますが、人を殴ることはもっともよくないことです。大山君、今すぐ、謝りなさい」
僕は納得できず、
「だって、先生…」
と言いかけたが、
「殴ることは悪いことです。早く謝りなさい」
とさっきより語調を強め、繰り返した。僕は悔しくて、力一杯、拳を握った。そのすべてをみんなが見ていたはずだったが、誰も助けてくれなかった。
「ごめんなさい」
「いいよ~」
あっさりとコウタが答える。
「もう、いいですね」
この後、きっと、遠山先生に呼ばれて理由を聞かれるものと思っていたが、結局、それきりだった。
そして、昼休み、図書室から戻って、筆箱をあけると、頭のとれたトンボが何匹も入っていた。