高山植物区を一瞥した後、園内を左手に進んで行くと、目も眩むような陽射しの中で、芝生広場の中にケヤキが豊かな葉を広げていました。
ハンモックの、ゆるやかなカーブを思わせるような芝生広場の横で、萩のトンネルが秋の出番を待ちわびています。
萩のトンネルを潜り抜けた先で、珍しいエンコウスギが枝を広げていました。
猿猴杉はスギの園芸品種で、細い枝に針状の葉が輪生し、その枝がテナガザルの手のように伸びることから名づけられました。
私は今、針葉樹の葉が、枝上の葉と枝下の葉が長さが違うことに気付き、それを確認する作業を続けていますが、このエンコウスギでもその現象を認めることができました。
野草園の一番奥で、ハンカチノキが枝にころころとした実をぶら下げていました。
ハンカチノキは東京では4月下旬頃に、枝一面にハンカチをぶら下げたような、不思議な花を咲かせます。
ハンカチノキは中国原産ですが、日本各地の公園や植物園に広く植栽されています。
私の木をテーマとするブログに植栽地を纏めてありますので、機会があれば一度お出かけになられては如何でしょうか。
水生植物区へ、野草園の斜面を下って行きますと、ラクウショウが呼吸根を見せていました。
水辺に生えるラクウショウは、土中の酸素が不足しますので、根の一部を地上に出して呼吸するようになります。
普通の樹木は、水に根が浸かると根腐れを起こしますが、ラクウショウは気根を出すことで、湿地でも生育することができるようになります。
ラクウショウのすぐ傍で、石のお地蔵さんが木洩れ日を浴びていました。
石のお地蔵さんの姿がラクウショウの気根のイメージと重なります。
野草園をデザインする方が意図した遊び心に、思わずウフフと笑みがこぼれました。
その先へ進みますと、樹高が4mもありそうな、大きなノリウツギが、枝を飾る一面の白い花で、灼熱の太陽を跳ね返していました。
生命力に溢れる素朴な装いの花が、何故かいつも気になります。
園を一巡りして、再び高山植物区に戻ってきました。
既に花の盛りの季節は終わっていますが、岩の奥で一株のホツツジが白い花を咲かせていました。
尾瀬の燧ケ岳で出会ったホツツジを想い出しました。
ホツツジもこの暑さでは、可憐を装う余裕はなさそうです。
真夏の野草園に、私以外の来園者の姿はありませんでした。
そんな園内で、作業服に膝をかがめ、黙々と除草作業に汗を流す若い女性の姿を見かけました。
何時訪ねても、安らぎの時を与えてくれる仙台市野草園、杜の都の豊かさと奥深さを感じさせてくれる、私のお気に入りの場所です。
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