氷見市柿谷の諏訪の森は、「堂々たるツバキの古木群がタブの巨木らと混在。神聖な雰囲気が漂う貴重な生態研究エリア」と丸山さんの資料に記されています。
しかし、丸山さんから頂いた所在地、「氷見市柿谷1」をネット地図で検索してもそれらしい施設が見当たりません。
更には、「氷見 諏訪の森」とネット検索しても、それらしいものが出てこないのです。
「諏訪の森」という名称から、自然公園か教育研修施設のようなイメージが浮かびます。
それなりの規模を有するはずですから、ネット検索で該当施設が出ないのが不思議です。
そんな訳で「諏訪の森」の探索訪問は、当初からある程度の困難を予想していました。
そして案の定、ナビが「目的地に到着しました」と告げたのは、田が広がる中に、数件の住宅が建つだけの、森とは全く無縁の場所だったのです。
しかしそれは想定通りだったので、すぐに、北方に見える小高い丘を目指しましたが、そこには何もありませんでした。
次に県道70号に沿って、丘陵地の北西部を探しましたが、手がかりさえ掴めません。
もしかすると学校の付属施設のようなものかもしれないと考え、ナビの地図に現れた小学校の周囲なども探しましたが、結局これも徒労に終わりました。
柿谷で一番大きな道路に、もしかすると標識などが見つかるかもしれないと考え、県道303を数回往復しましたが全くの無駄でした。
これはもう駄目かもしれないと、半分諦めつつ、最後に町の住民に尋ねることにしました。
町中に人影は殆ど見えませんが、たまたま、一軒のお宅で洗濯物を取り込んでいたご婦人を見かけ「諏訪の森」を探しているのですが・・・と聞いてみると、「それなら主人が詳しいので、どうぞ玄関の方へお回り下さい」と玄関に導かれ、そこへ住宅地図を片手に現れたご主人から、詳しい道順と地図のコピーを頂くことができたのです。
このお宅のご主人は、以前教育委員会関連か何かのお仕事をされていたそうです。
地域の自然や環境関連知識の造詣が深く、このお宅でお尋ねしたことが本当に幸運でした。
「諏訪の森」とは、氷見市柿谷が谷屋や上余川と境を接する丘陵にある森の通称のようです。
「諏訪の森」へは、県道303を西にはしり、町外れの白山社の手前を右へ、その先の農道を道なりに上っていった先の、道が途切れる辺りで車を降りて、徒歩で20分程度森の中を進んで行った一帯だそうです。
説明を聞いても、正確なイメージは描けませんでしたが、数十年以上も山登りや沢登りで鍛えた地理感を頼りに、山里の森の奥へと入って行きました。
車を下りて、耕作放棄された畑の中を進み、枯れたススキの原を進んでゆくと、やがて目の前にそれらしき木立が見えてきました。
杉林の手前に、常緑樹と落葉樹が混交する小さな森が見えています。
森の手前の沼を迂回し、笹原を森へと近づいてゆきました。
森に入ってまず目についたのが、圧倒的な存在感を示すタブノキの巨木でした。
後のネット調査によって、幹周4.75m、樹高21mと判明しました。
タブノキの周囲に幾本ものヤブツバキが育ち、林床に紅の椿花が散りばめられていました。
花糸が白く、花糸の合着が長いので、ユキツバキの血はほとんど混じっていないと思えます。
タブノキの南面は2~3mほどの崖で、その崖下はヨシ等が倒れ重なる湿地となっていました。
その湿地に向けて、幹周1m以上の、2幹のヤブツバキが倒れ込むように枝を伸ばしています。
この斜面では、至る所にヤブツバキの古木が幹を伸ばしていました。
南面に高木が育たず、光を遮るもののない、ヤブツバキに恵まれた環境にあって、人里離れた丘陵地で、開発の難から逃れ続けた幸運が、このような稀有なツバキ森を育んでくれたのでしょう。
それにしても本当に驚くべき、神秘の森に巡り合うことができました。
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