goo

神秘の諏訪の森

2017-09-13 21:21:46 | 氷見に椿古木を訪ねる

 

 氷見市柿谷の諏訪の森は、「堂々たるツバキの古木群がタブの巨木らと混在。神聖な雰囲気が漂う貴重な生態研究エリア」と丸山さんの資料に記されています。

 

 しかし、丸山さんから頂いた所在地、「氷見市柿谷1」をネット地図で検索してもそれらしい施設が見当たりません。

 

 更には、「氷見 諏訪の森」とネット検索しても、それらしいものが出てこないのです。

 

 「諏訪の森」という名称から、自然公園か教育研修施設のようなイメージが浮かびます。

 

 それなりの規模を有するはずですから、ネット検索で該当施設が出ないのが不思議です。


 そんな訳で「諏訪の森」の探索訪問は、当初からある程度の困難を予想していました。


 そして案の定、ナビが「目的地に到着しました」と告げたのは、田が広がる中に、数件の住宅が建つだけの、森とは全く無縁の場所だったのです。


 しかしそれは想定通りだったので、すぐに、北方に見える小高い丘を目指しましたが、そこには何もありませんでした。


 次に県道70号に沿って、丘陵地の北西部を探しましたが、手がかりさえ掴めません。


 もしかすると学校の付属施設のようなものかもしれないと考え、ナビの地図に現れた小学校の周囲なども探しましたが、結局これも徒労に終わりました。


 柿谷で一番大きな道路に、もしかすると標識などが見つかるかもしれないと考え、県道303を数回往復しましたが全くの無駄でした。


 これはもう駄目かもしれないと、半分諦めつつ、最後に町の住民に尋ねることにしました。


 町中に人影は殆ど見えませんが、たまたま、一軒のお宅で洗濯物を取り込んでいたご婦人を見かけ「諏訪の森」を探しているのですが・・・と聞いてみると、「それなら主人が詳しいので、どうぞ玄関の方へお回り下さい」と玄関に導かれ、そこへ住宅地図を片手に現れたご主人から、詳しい道順と地図のコピーを頂くことができたのです。


 このお宅のご主人は、以前教育委員会関連か何かのお仕事をされていたそうです。

 
 地域の自然や環境関連知識の造詣が深く、このお宅でお尋ねしたことが本当に幸運でした。


 「諏訪の森」とは、氷見市柿谷が谷屋や上余川と境を接する丘陵にある森の通称のようです。


 「諏訪の森」へは、県道303を西にはしり、町外れの白山社の手前を右へ、その先の農道を道なりに上っていった先の、道が途切れる辺りで車を降りて、徒歩で20分程度森の中を進んで行った一帯だそうです。


 説明を聞いても、正確なイメージは描けませんでしたが、数十年以上も山登りや沢登りで鍛えた地理感を頼りに、山里の森の奥へと入って行きました。


 車を下りて、耕作放棄された畑の中を進み、枯れたススキの原を進んでゆくと、やがて目の前にそれらしき木立が見えてきました。

 



 杉林の手前に、常緑樹と落葉樹が混交する小さな森が見えています。

 



 森の手前の沼を迂回し、笹原を森へと近づいてゆきました。

 



 森に入ってまず目についたのが、圧倒的な存在感を示すタブノキの巨木でした。


 後のネット調査によって、幹周4.75m、樹高21mと判明しました。

 

 


 
 タブノキの周囲に幾本ものヤブツバキが育ち、林床に紅の椿花が散りばめられていました。

 



 花糸が白く、花糸の合着が長いので、ユキツバキの血はほとんど混じっていないと思えます。

 



 タブノキの南面は2~3mほどの崖で、その崖下はヨシ等が倒れ重なる湿地となっていました。


 その湿地に向けて、幹周1m以上の、2幹のヤブツバキが倒れ込むように枝を伸ばしています。

 



 この斜面では、至る所にヤブツバキの古木が幹を伸ばしていました。

 


 南面に高木が育たず、光を遮るもののない、ヤブツバキに恵まれた環境にあって、人里離れた丘陵地で、開発の難から逃れ続けた幸運が、このような稀有なツバキ森を育んでくれたのでしょう。

 

 

 
 それにしても本当に驚くべき、神秘の森に巡り合うことができました。

 

 

※ 他の記事へは index をご利用頂くと便利です。

 

氷見に椿古木を訪ねる index

全ての「花の旅」 総合目次

好奇心の植物観察 → つばきカテゴリー

 日本全国 椿の名所

 

 

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

氷見 熊無のツバキなど

2017-09-13 16:02:42 | 氷見に椿古木を訪ねる

 

 丸山さんのご自宅にも「源蔵の大つばき」と呼ばれる、根回り132㎝の見事なツバキの巨木があります。


 枝が高くて花を確認し難かったのですが、かろうじて見つけた花は、端正な紅色のフォルムを見せていました。


 

 
 丸山さん宅のお庭には、多数のツバキ品種が育てられていましたが、ツバキ以外にも豊後梅や河津桜などが花を咲かせ、自然溢れる里で、花を愛でる心豊かな暮らしを過ごされているご様子です。

 

 


 
 熊無の集落では、長四朗のツバキが桃色八重の可憐な花を咲かせ、

 

 


 池渕家には、白八重咲きの富樫白と、

 

 


 
 薄紅色で八重咲き中輪のツバキが目を楽しませてくれました。

 

 


  熊無の集落を後にして、次の目的地である論田へ向かう車窓に、枝に溢れる花を掲げた白梅を望みました。


 野を春の草花が彩り、木々の梢は花に溢れます。


 心地よい季節の点景の中で、開け放つ窓から伝わる春風の感触を存分に楽しみながらの旅を続けました。

 



 資料には、熊無に隣接する論田地区の願正寺に、根元300㎝の椿の真骨頂に触れる見事な株立椿があると記されていました。


 願正寺を訪ねましたが、境内にそれらしいツバキの姿は見当たりません。


 諦めきれずに、お寺の住居の呼び鈴を押しても反応はなく、誰か訪ねて来ないかと、暫くの間待っていたのですが、真骨頂のツバキに出会うことは叶いませんでした。


 論田集落の松田家には根元120㎝の富樫白がありますが、こちらのツバキにはお目通りを頂くことができました。



 

※ 他の記事へは index をご利用頂くと便利です。

 

氷見に椿古木を訪ねる index

 全ての「花の旅」 総合目次

 日本全国 椿の名所

 


goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

氷見 くまなし千本椿

2017-09-13 13:07:29 | 氷見に椿古木を訪ねる

 

 国道415号を西へ進み、石川県との県境に位置する熊無地区にやってきました。


 道路脇の斜面を彩る早咲き桜の優しさが心に染みます。


 「くまなし千本椿」の看板を目にして、車をおりてツバキを探す足元に、ショウジョウバカマが剽軽な表情を見せていました。


 熊無は、氷見市街よりも春の歩みが緩やかな様子です。

 

 

 

 「くまなし千本椿」の看板が立つ細い道を進んでゆくと、民家の庭へと入ってゆきます。

 

 どうやら、この道ではなさそうです。 


 千本椿は清水谷西面にあると資料に記されているので、丘陵へ登る道を探しましたが、人影の無い集落で、民家の敷地に迷い込めば、あらぬ疑いを掛けられかねません。


 道を尋ねようと、数軒のお宅の呼び鈴を押しましたが、全ての家がお留守でした。


 舗装された道へ戻り、道筋のお宅のチャイムを押すと、うら若い女性が出て来られたので、わけを話し、「くまなし千本椿」への道をお尋ねました。


 すると、「母が知ってるはずですから」と隣へ案内され、再びお母様に同じことをお尋ねしました。


 お母様は、ツバキはお父さんが詳しいから聞いてあげる、とおっしゃて、お父様に携帯電話を掛け、繋がった電話を私に手渡されたのです。


 携帯を受け取った私は、東京から来て、氷見に椿を訪ね歩いているので「くまなし千本椿」へのルートを教えて頂きたい旨を伝えました。


 しかし、どうも話がちぐはぐなのです。


 私は一瞬頭を混乱させましたが、むむむ! もしかしてお父様は丸山さんご本人でしょうか! 


 携帯電話をお母様にお返ししながら、もしかして、丸山様のお宅なのでしょうか? と聞きつつ、表札を確認すると「丸山志郎」の文字が目に飛び込んできました。


 ああ~あ! 何たることでしょう、迂闊にも私は、丸山さんの御嬢様のお宅の呼び鈴を押していたのです。


 結局私は、丸山さんの奥様とお嬢様に「くまなし千本椿」へご案内を頂くことになりました。


 最初に確認した、民家の庭に入っていくように見えた先へ進み、片側急斜面の尾根を登ってゆきます。




 奥様もお嬢様も、今まで登って来たことはないと仰っていました。

 



 私は山登りをしますので、この程度の道はどうということもないのですが、確かに女性が気軽に登って来る場所ではないかもしれません。


 10分弱も登った辺りに、くまなし千本椿の解説が掲げられていました。


 「標高150m前後、通称「清水谷(しょうだん)」の西側斜面にヤブツバキが2000本以上群生し、自然のままのヤブツバキ林では県内最大級。


 推定樹齢250年以上の木も数本確認されている。


 熊無では昭和30年代まで炭焼きが行われ、良質な木炭の材料として伐採され、戦前はツバキ油を得るのに利用されてきた。


 この貴重な自然遺産を「日本一のヤブツバキの里氷見」を代表とする拠点として保護し、訪れる人々を楽しませてくれることを念願する。」


 と記されていました。

 



 この掲示板が設置されたのは、平成17年(2005年)頃のことだったようです。


 丸山さんをはじめとする氷見ツバキ愛好会の方達は、清水谷の急斜面で、ツバキ古木の幹回りなどを計測し、ツバキ2000本の植生調査を行ったのだと思います。


 郷土愛に裏打ちされた熱意に頭が下がる思いが致しました。



※ 他の記事へは index をご利用頂くと便利です。  

 

氷見に椿古木を訪ねる index

 全ての「花の旅」 総合目次

日本全国 椿の名所


goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

日本原産ヤブツバキ古木の希少性

2017-09-13 10:12:11 | 氷見に椿古木を訪ねる

 

 一旦市街地に戻り、加納の宝光寺を振出に、昨日の続きのルートを辿ることにしました。




 宝光寺は氷見市街地の境に位置する禅寺で、東側は民家に接していますが、西側には田圃が広がっていました。


 根回135cmのツバキがあるそうですが、お寺には誰もいなかったので、勝手に庭に入るのが躊躇われ、寺の周囲に巡らされたツバキの生垣を確認するだけに止めました。

 



 味川の山本家のツバキは目通し105㎝ですからそれほど大きな木ではありませんが、年内から花を咲かせる銘木とのことです。


 味川の流れに沿って民家が点在する味川地区で、ゆったりした敷地の中でツバキが花を咲かせていました。

 



 味川に沿って県道70号を進み、阿努神社を訪ねました。



 

 山里の神社は境内が定かではありませんが、社殿周囲の至る所に見事なツバキの古木が育っていました。


 メジャーを持たなかったので、手にしたA4ファイルを幹に当ててみました。


 ファイルの長辺は30㎝を越えますので、このツバキの目通しは1m近いことになります。


 幹回りの2倍が凡その樹齢と説明されますので、このツバキの樹齢は200年程を推定します。


 そんな木が阿努神社の周囲に何本も育っていました。

 

 


 
 味川から懸札へと車を進め、中尾家ツバキを訪ねました。


 中尾家のツバキは根元100㎝で、桃色がかった花を咲かせるそうですが、それほど大事に扱われている様には見えず、ちょっと残念な印象は免れません。

 

 


 山市(やないち)家のツバキは、かなりの傾斜の崖の途中に育ち、元気な樹勢を見せていましたが、山市家の方のお話では、この数年花付きが悪く、ちょっと心配だとお話されていました。


 山市家の方は、氷見ツバキ愛好会の方達が調査に訪れたことを記憶していて、ツバキを大事にしようという意識を強く感じました。


 


 どこのお宅でも、先祖代々育ててきたツバキであれば、あるのが当たり前なので、ヤブツバキの古木は世界で日本にしかないという希少性に気付けないのは当然のことです。


 しかし、そのような日本にしか存在しないヤブツバキ古木の分布を丁寧に調査し、記録にとどめる作業をされた、氷見ツバキ愛好会の方々の努力は、間違いなく氷見市民の意識に大きな影響を与え続けているようです。


※ 他の記事へは index をご利用頂くと便利です。  

  

氷見に椿古木を訪ねる index

全ての「花の旅」 総合目次

 日本全国 椿の名所

 

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )