列車はアカマツ林の中を進みます。
木々を透かして青い空が見えました。
松林の先は絶壁の海崖です。
そして列車は玉川漁港を眼下に見る野田玉川駅に停車しました。
この辺りの玉川海岸は風光明媚な光景で知られ、平安末期の1186年に西行法師が、しばし草庵を結んだ場所としても知られます。
みちのくの 野田の玉川見渡せば しほ風こして 氷る月影 (順徳院)
漁港横の丘に設けられた玉川野営場は、清掃協力費200円でキャンプを楽しむことができます。
また野田玉川駅近くに、日本有数のマンガン鉱床だった鉱山跡があり、現在は観光坑道として一般公開されています。
列車は海岸崖の上を走り、幾つものトンネルを抜けました。
トンネルを抜けると列車は海を見下ろす橋梁の上で停車しました。
これが有名な安家川(あっかがわ)橋梁です。
久慈駅からの多くの観光客が席を立ち、窓からの景色にシャッターを切り始めました。
安家川橋梁は、曲線半径700m、勾配8‰(パーミル)という厳しい立地条件下で、昭和49(1974)年に高さ約33m、長さ約305mの橋が構築されました。
眼下に国道45号線の下安家大橋が見えています。
私はこの道路橋を東北大震災の前後で走り、今居る橋梁を見上げた記憶があります。
安家川河口の横に地震被害から復興した下安家漁港が見えます。
この漁港の周囲ではカレイやソイ、港内ではチカが釣れるそうです。
安家川流域にはダムがなく、上流ではイワナ、アユ、中下流ではヤマメなどの、渓流釣りのメッカとしても知られます。
そんな安家川河口付近を、3.11の津波が襲った映像があります。
あの日を忘れない、東京直下型地震、南海トラフ地震への備えを忘れない為に、時間のある方は是非一度ご覧ください。
安家川橋梁のすぐ横に、2021年に完成した三陸北縦貫道路の新安家大橋と、2012年に津波の被害から復旧したサケ・マス孵化場が見えていました。
安家川橋梁を渡ると、列車はトンネルを抜けて堀内(ほりない)駅に停車しました。
堀内駅はNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で「袖が浜駅」としてロケに使われました。
駅のホームには、ロケで使われた「袖が浜駅」の駅名票が今も置かれているそうです。
列車はトンネルを幾つも潜り抜けて南下し、白井海岸駅に停車しました。
駅名票に「ウニの香り」と記されています。
この駅の近くに民家などは無いので、鉄道マニアは秘境駅と呼びます。
私はネット地図を確認しながらこの記事を認めていますが、以下の風景の場所は「力持」に違いありません。
「力持」という地名は、源義経北行伝説で、弁慶が大きな石を持ち上げたことに由来します。
そしてこの辺りは、海岸から1.5㎞程の距離にある為、津波被害に遭わないなどの好条件が揃います。
今から5500~4000年もの昔に、長期に亘り栄えた力持遺跡が発掘されています。
三陸海岸は津波さえなければ、暮らしやすい土地なのだろうと思います。
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