北八代の松沢家を訪ねました。
個人のお宅の墓所ですから、玄関の呼び鈴を押して訪問理由を伝え、ツバキを見せて頂きたい旨をお願いしました。
すぐにご了承を頂き、ご自宅裏手の墓所へとご案内を頂きました。
目通し140㎝の単幹の巨樹で、端正な樹形は墓守りにふさわしい風格を漂わせていました。
幾世代にも亘る、松沢家の安寧な暮らしを代弁するかのような、見事なツバキでした。
次に訪ねた余川の興聖寺は臨済宗の禅寺で、開山の念仏仏であったとされる聖観音菩薩坐像が氷見市の文化財に指定されています。
お寺のご自宅を兼ねる庭に木が見えたので、玄関で声を掛け、ご住職の許可の下、ツバキを拝見させて頂きました。
3本の株立ちツバキは県下最大級の富樫白(ユキツバキ系品種)です。
白色中輪の八重咲き割しべで、花弁の基部は黄色みを帯びます。
花糸も白くなく、ヤブツバキと全く異なる表情を見せていました。
ご住職から、庭のサルスベリは幹回りが1mを超える巨樹なので、是非見ていって下さいと言われました。
確かに見事なサルスベリで、今でも季節になると花を咲かせるそうです。
サルスベリは中国南部原産で、300年程前に日本に入ってきたとされますが、江戸時代から日本海側を往来していた北前船が、当時としては珍しい花木を氷見にもたらしたのかもしれません。
ご住職にお礼を述べて興聖寺を後にし、次に余川杉谷家のツバキを目指しました。
丸山さんの資料には、「余川杉谷家のツバキは屋敷跡に佇む」と記されていますので、ナビの入力場所に着いたとしても分かり難いだろうと考え、探す作業の前に、道行く人に尋ねてみました。
杉谷家の屋敷跡は、市道脇のネギ畑奥の、木立の中に埋もれていました。
畑の先へ進んでゆくと、竹や雑木が覆いかぶさる藪の中に、僅かに紅色の花を付けたツバキを確認することができました。
丸山さんが調査されたのは平成19年ですから、その時からすでに10年の歳月が流れています。
ツバキは目通し128㎝の巨木ですが、あと10年も経てば、周囲の殆どを竹などに覆われてしまうかもしれません。
杉谷家の屋敷跡のツバキを見終えて時計を確認すると、17時に近づいていました。
今夕は、丸山さんを紹介してくれた、氷見ツバキ愛好会会長の川本さんにご挨拶に伺う心積りをしていましたから、今日の氷見のツバキ巡りをこの場所で終わらせることにしました。
氷見市街に戻り、川本さん宅にご挨拶に伺うと、氷見ツバキ愛好会が世話をする、氷見ふれあいの森のつばき園にご案内を頂きました。
川本さんは新幹線が通じるまで、金沢駅の駅長を務められたそうですが、定年退職された今でも、夏につばき園で潅水や下草刈りに汗を流されるそうです。
楽しそうにツバキのお話をされるときの、満面の笑顔にお人柄が窺えました。
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