邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

木下恵介の「女」

2006年07月16日 | ★人生色々な映画
木下作品には
音楽
効果的に使われていることが多い。
センス抜群だ。

踊り子の敏子(光子)は
腐れ縁のやくざな町田(小沢栄太郎)に箱根へ呼び出される。

びっこをひいて現れた町田は、いきなり浜松へ行こうと言いだす。
なんかまずいことやった旨、バレバレの男。
怪訝に思いながらいやいや列車に乗った女は、
新聞に強盗犯逃亡の記事を見つける。

「この人がやったんだわ!また面倒を起こしたのね!」

こんな陳腐な台詞は無いが、
映像表現で女の心理状態をあぶりだしていく試みが
アップ、斜め、どアップと凝った構図に現れている。

木下監督の非凡な実験魂が突出した作品。

小沢のアップにいたっては
歯の隙間まではっきり見えるほど徹底的にいやらしい。
「敏子っ!」の連発が切羽詰っていていやらしい。

気の毒なほどいやらしい。

ずるい男の手練手管に翻弄され、
女はずるずるとひっぱられます。

風采の上がらないダメな男に
スタイルもよくて綺麗な女が、なんでこうも
ひきずられていくんでしょうか。
理屈では説明不能の大人の世界ですわねえ。

街角で流しの歌手の流行歌にあわせて
町田がご機嫌で歌うシーンはこの映画のとどめか?

「泣~くな~あ小鳩よ~~♪」

浮かれる男をみつめる女の、
嫌悪に満ちた視線がすごい。
歌手たちの顔も必要以上にどアップなら、
小沢の顔も徹底的に下品だ。
このシーンの長さは異様で、凡人の感覚を超越しています。

ダメ男からの女の自立を描いた、異色の作品。

小沢栄太郎と水戸光子のほとんど二人劇で
サスペンスタッチの展開にどきどきしながら見た。
普通の商業映画とは一線を画した斬新な作品。

木下監督のいじわる魂も炸裂している。

1948年 木下恵介監督
脚本 木下恵介
撮影 楠田浩之
音楽 木下忠司
美術 平高主計

ブログランキングへ
応援していただけると嬉しいです