邦画ブラボー

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松本清張の「一年半待て」

2006年07月18日 | ★人生色々な映画
松本清張の傑作短編をドラマ化した一作。
78年にNHKで放送された。

このシリーズは71分という短い作りながら,
内容がぎゅっと凝縮されている。

筋書きが良くて役者がうまければ
短くても面白いドラマは出来るのだ。

冒頭、質素なアパートから小さな子供の手を引いた女(香山美子)が出てくる。
とぼとぼと歩いて行った先は交番だった。
こんな時間にどうした?財布でも落としたの?と聞く巡査に
思いつめたような表情の女が口を開く。

「私、夫を殺しました・・」

つかみオッケ~。流れるようにドラマは進む。
隣の部屋のドンちゃん騒ぎが筒抜けのような、
きわめて日常的で生活感がある演出が悲劇を際立たせる。
このようなアパートは昭和の東京にはごろごろしていたことでしょう。

女は涙ながらに供述する。
失業した夫(早川保)に代わり
保険外交員をするなどして必死に働いたが
夫は女を作り、酒を飲んで暴れるようになった。

切羽詰った女の犯罪に世間の同情が集まるのだが。

どんでん返しを予想させながらも引き込んでいく巧みさは
サスペンスの王道であろう。
女性活動家を演じている
南風洋子(民藝)の上手さもドラマをさらに面白くしている。

社会の底辺を必死に生きる女が犯罪に手を染めてしまうという話は、
松本清張の得意とするところです。

その清張さんは
重々しく主文を言い渡す裁判長に扮している。

シリーズでは結構堂々と役者をしていて
シリアスなドラマの中でぴかりと光る笑いどころを作っておられます。

写真は、主人公が保険勧誘する工事現場で働く青年(藤岡弘)。
無骨純朴でドラマのキーパーソンといいますか、
女の思惑をぶち壊す重要な役です。

1978年
原作;松本清張
脚本:杉山義法
演出:高野喜世志
音楽:林光

ドラマ特選にいれました

*映画の中のイイおんな*
香山美子:ムードコーラスグループの「東京ロマンチカ」
のヴォーカルと結婚して
世間をあっといわせた人でもあります。離婚しましたけど。
確かな演技で定評があり、かなり色んな作品に出ていました。
映画というよりテレビドラマに。
頬のほくろが色っぽいですねえ。この方、着物もよく似合うんですが
この作品では質素な洋服ばっかりでした。

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