邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「士魂魔道 大龍巻」

2006年07月21日 | ★ぐっとくる時代劇
面白い時代劇に特撮が加味された作品。
稲垣浩監督作品。
特技監督にはもちろん円谷英二

大阪夏の陣、最後の日。

難攻不落と言われた大阪城も
いよいよ落ちようとしていたその日、
豊臣方の深見重兵衛(市川染五郎)は
「俺は切腹することに決めた!」と
死に場所を探していた。
ちゃっかり家の久之助(夏木陽介)は
死ぬのはつまらんと重兵衛を説得していたが
そこへ
豊臣家の若君、秀頼を抱いた女(星由里子)が飛び込んでくる。

大勢のエキストラ映像に
大阪城の模型・・違和感無しの技術がすごい。

戦いに身を投じる荒武者、修理(佐藤允)、
堕ちていく女(久我美子)、裏切る男、
戦乱のドサクサの中にあって金儲けの才能を発揮する男、
そこへ伊賀忍者までもが絡み、くんずほぐれつの群像劇を繰り広げる。

重兵衛たちを助けるなぞの虚無僧が出現し
顔はなかなか見せないが、その野太い声一発で三船敏郎!とわかる。
殺陣ひとつやっても
やっぱりダントツ華がありますわ。

染五郎は竹を割ったような若武者を
生き生き演じ、持ち味を120%生かしています。

円谷監督絡みか、伊賀の女忍者に
水野久美が扮し、最高殊勲演技!
恐ろしいほど動物的な身のこなしと、
男のようなきっぱりした性格が哀れを誘う。

父の仇と染五郎を狙う忍者姉弟(水野・久保明)が、
執念深くコマ鼠のようにちょろちょろ現れるのがなんとなく笑える。
忍者が死ぬとき顔をつぶす演出はこの映画でも実践されていて
「忍びの者」を連想したが、こちらは意外と弱い!

さてラストにこの映画のタイトルにある天変地異、
大竜巻が巻き起こり、すごい効果を見せる。

木が折れ人間が空を飛び、家がばきばき壊れ・・
円谷監督の技が堪能できる。

脚本にはユーモアが入ったり含蓄があったりと面白く
音楽は突然ドラムソロが続いたり時代劇としては異色。

竜巻場面は猛烈な風の音のみで
ツボを押えたつくりと言えよう。

特撮映画というよりは
すごく面白い時代劇を見たという印象。
こんな映画があまり知られていないなんて、
もったいなく不思議なことだ。

1964年
監督 稲垣浩
特技監督 . 円谷英二
脚本   木村武 稲垣浩
原作 南条範夫
撮影   山田一夫
音楽   石井歓
美術 植田寛

*映画の中のイイおんな*
水野久美:特撮映画の女王は時代劇でも熱かった!
女忍者に扮し、七転八倒、じゃなく
八面六臂の活躍!男のように勇ましい女ですが
敵の重兵衛に恋してしまって
戸惑うところがなんとも可愛い!!

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「続・忍びの者」

2006年07月19日 | ★ぐっとくる時代劇
忍者に熱中しています。

それにしても、何故にこうも忍者は我々の血を湧かすのであろうか。

シリーズ第一作「忍びの者」の続きとして
前回の砦大爆撃シーンから始まる。

監督は同じく山本薩夫。

強引に突き進む信長(若山富三郎)VS
真面目一方な明智光秀(山村聡)VS
世渡り上手の秀吉(東野英冶郎)、
それらの動向を伺う頭の切れる家康と、
役者がそろった「続忍びの者」。

大きく世の中が動こうとしているその裏で、
忍者が暗躍し、歴史を動かしていたとは
お釈迦様でも知るまいが私も知らなかったわい~

父を殺され、散々利用されて
忍者がすっかり嫌になった五右衛門(市川雷蔵)は
足を洗って女房(藤村志保)、息子、三人水入らずでひっそり暮らしていた。

だが、
伊賀忍者全滅を図る忍者狩りの手が伸びる!

残酷描写も山薩、容赦無い。

抑えていた五右衛門の忍者本能が爆発し、
ものすごいスピードで敵を倒す場面が
身震いするほどの迫力だ。

最初から飛ばしてくれるぜまったくよお(涙)

まどろっこしい無駄なショットがひとつもない。

怒りでパワーアップした五右衛門は
信長打倒のために再び鬼となって忍者の道へ。

本能寺での信長の最後は最高にショッキング!!

権力を巡っての飽くなき争いに巻き込まれる
忍者の虚しさを雷蔵が体現する。

明智光秀が信長に
蹴り落とされるすさまじい階段落ちがあり
びっくり!

そう、これはびっくりの連続、興奮の時代劇。

信長の小姓蘭丸に少年の面影のある山本圭、
明智の側近の澱み無い台詞廻し、
雑賀の頭領の力みなぎる演技と、
脇の引き出し方も上手い。
より一層忍者の魅力が味わえる作品になっている。

先が気になって眠れなくなるようなラストシーン(釜茹で?)
も心憎いぞ!!

1963年 山本薩夫 監督作品
原作村山知義 脚色 高岩肇
撮影 武田千吉郎 音楽 渡辺宙明  美術 内藤昭

*映画の中のイイおんな*
藤村志保:日本的で時代劇が良く似合う。
「楚々」という言葉を聞くとこの人を思い出します。
五右衛門を愛するいちずで心優しい妻。
こんな奥さんが家にいたら
男は命がけで守りたくなってしまうのかも。
雷蔵とは共演も多い。雷蔵自伝には
「才女なのに時々言語錯乱症をおこすのは
どういうわけだろう。オスマシのくせにトボけている」などと
書かれていて可笑しい。

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松本清張の「一年半待て」

2006年07月18日 | ★人生色々な映画
松本清張の傑作短編をドラマ化した一作。
78年にNHKで放送された。

このシリーズは71分という短い作りながら,
内容がぎゅっと凝縮されている。

筋書きが良くて役者がうまければ
短くても面白いドラマは出来るのだ。

冒頭、質素なアパートから小さな子供の手を引いた女(香山美子)が出てくる。
とぼとぼと歩いて行った先は交番だった。
こんな時間にどうした?財布でも落としたの?と聞く巡査に
思いつめたような表情の女が口を開く。

「私、夫を殺しました・・」

つかみオッケ~。流れるようにドラマは進む。
隣の部屋のドンちゃん騒ぎが筒抜けのような、
きわめて日常的で生活感がある演出が悲劇を際立たせる。
このようなアパートは昭和の東京にはごろごろしていたことでしょう。

女は涙ながらに供述する。
失業した夫(早川保)に代わり
保険外交員をするなどして必死に働いたが
夫は女を作り、酒を飲んで暴れるようになった。

切羽詰った女の犯罪に世間の同情が集まるのだが。

どんでん返しを予想させながらも引き込んでいく巧みさは
サスペンスの王道であろう。
女性活動家を演じている
南風洋子(民藝)の上手さもドラマをさらに面白くしている。

社会の底辺を必死に生きる女が犯罪に手を染めてしまうという話は、
松本清張の得意とするところです。

その清張さんは
重々しく主文を言い渡す裁判長に扮している。

シリーズでは結構堂々と役者をしていて
シリアスなドラマの中でぴかりと光る笑いどころを作っておられます。

写真は、主人公が保険勧誘する工事現場で働く青年(藤岡弘)。
無骨純朴でドラマのキーパーソンといいますか、
女の思惑をぶち壊す重要な役です。

1978年
原作;松本清張
脚本:杉山義法
演出:高野喜世志
音楽:林光

ドラマ特選にいれました

*映画の中のイイおんな*
香山美子:ムードコーラスグループの「東京ロマンチカ」
のヴォーカルと結婚して
世間をあっといわせた人でもあります。離婚しましたけど。
確かな演技で定評があり、かなり色んな作品に出ていました。
映画というよりテレビドラマに。
頬のほくろが色っぽいですねえ。この方、着物もよく似合うんですが
この作品では質素な洋服ばっかりでした。

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木下恵介の「女」

2006年07月16日 | ★人生色々な映画
木下作品には
音楽
効果的に使われていることが多い。
センス抜群だ。

踊り子の敏子(光子)は
腐れ縁のやくざな町田(小沢栄太郎)に箱根へ呼び出される。

びっこをひいて現れた町田は、いきなり浜松へ行こうと言いだす。
なんかまずいことやった旨、バレバレの男。
怪訝に思いながらいやいや列車に乗った女は、
新聞に強盗犯逃亡の記事を見つける。

「この人がやったんだわ!また面倒を起こしたのね!」

こんな陳腐な台詞は無いが、
映像表現で女の心理状態をあぶりだしていく試みが
アップ、斜め、どアップと凝った構図に現れている。

木下監督の非凡な実験魂が突出した作品。

小沢のアップにいたっては
歯の隙間まではっきり見えるほど徹底的にいやらしい。
「敏子っ!」の連発が切羽詰っていていやらしい。

気の毒なほどいやらしい。

ずるい男の手練手管に翻弄され、
女はずるずるとひっぱられます。

風采の上がらないダメな男に
スタイルもよくて綺麗な女が、なんでこうも
ひきずられていくんでしょうか。
理屈では説明不能の大人の世界ですわねえ。

街角で流しの歌手の流行歌にあわせて
町田がご機嫌で歌うシーンはこの映画のとどめか?

「泣~くな~あ小鳩よ~~♪」

浮かれる男をみつめる女の、
嫌悪に満ちた視線がすごい。
歌手たちの顔も必要以上にどアップなら、
小沢の顔も徹底的に下品だ。
このシーンの長さは異様で、凡人の感覚を超越しています。

ダメ男からの女の自立を描いた、異色の作品。

小沢栄太郎と水戸光子のほとんど二人劇で
サスペンスタッチの展開にどきどきしながら見た。
普通の商業映画とは一線を画した斬新な作品。

木下監督のいじわる魂も炸裂している。

1948年 木下恵介監督
脚本 木下恵介
撮影 楠田浩之
音楽 木下忠司
美術 平高主計

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「忍びの者」

2006年07月14日 | ★ぐっとくる時代劇
最近忍者に夢中です。

伊賀の下人、
石川五右衛門(市川雷蔵)は、
織田信長(若山富三郎)打倒に向け、ライバル藤林長門守一派と
勢力を競い合う百地三太夫(伊藤雄之助)の砦で
日々修行に邁進していた。

だが若気のいたりで三太夫の妻(岸田今日子)と
深い仲になってしまいその運命はがらりと変わってしまう。

岸田今日子は、ウブな若者には抗いがたい
湿度の高いエロティシズムをたたえているのです・・(注:当時は)

五右衛門はおかしらに弱みを握られ、厳しい監視の下で
意のままに動かされてしまうのだった。

伊藤雄之助が
実は二つの砦の頭を掛け持ちしていたという秘密は
最初から明かされるが
デフォルメされたキャラクター設定、
声色の使い分けに爆笑

一方は新妻に手も出さないストイック、ねっとり型、
そしてもう一方は女といちゃつく癇症のお頭
なのである。最高!

五右衛門の監視役の忍者、
加藤嘉の、群を抜く不気味さにも注目したい。

山猿のようなライバル忍者に西村晃
血をごぼごぼ吐いての死に様はあっぱれ見事で
やっぱり「死に顔MVP」だ!・・
もっともこの映画では伊藤雄之助の最後もマジうけます。

雷蔵がうまいのは万人周知だけど
踊りの鍛錬も積んでいるからか、
体のキレが抜群で、写真のようにポーズがいちいち綺麗。

藤村志保の泣き顔もMVPだ。(連発)

村山知義による原作は当時「赤旗」に連載されたそうだが
掟やしがらみにがんじがらめに縛られた忍者の運命は
社会の底辺をささえる企業戦士にもオーバーラップする。

最初から最後まで休む暇なく見所がある。
ラストの大焼き討ちシーンにいたる
山本薩夫監督の
リアルでサービス満点の演出、構成のうまさに
3本ほど映画を見たような満足感が残った。

非人間的な使命を課せられながらも
職務を全うするプロとしての姿や苦悩、
かっこよさ、現実感がある「忍術」の見せ場など
これ一本で忍者は満喫できると思ったら、
シリーズ8作も作られていて嬉しいかぎり。
(監督はそれぞれ違うけど)

ぼちぼち見たらまた報告します。

監督: 山本薩夫
原作: 村山知義
脚本: 高岩肇
撮影: 竹村康和
美術: 内藤昭
音楽: 渡辺宙明
 
出演: 市川雷蔵 若山富三郎
藤村志保 伊藤雄之助 西村晃 岸田今日子 加藤嘉

*映画の中のイイおんな*
岸田今日子:驚くほど色っぽいです。信じがたいほど色っぽいです。
それもじと~っと湿気がある日本の夏・・ではなくて日本の女の色気です。
それでもってあのひそやかな「声」でしょう。
五右衛門もたじたじになる、大人の女なのです。

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