公益財団法人水産物安定供給推進機構は、令和6年度予算編成に向け、政府・与党に「平準化事業予算に対する要請」を行い、平準化事業の調整保管機能によって加工場の減少に伴い低下した産地の保管処理能力を補完することが必要と予算の拡充を求めている。
平準化事業は、水揚量が需要量を上回り、魚価が下落した際に買い取る(通常取引を阻害しない)もので、端境期に加工需要に応じて安定的に供給する。事業にかかる保管経費、加工料、運送費、金利を助成する。一時当初予算が大幅に削減され、コロナ禍による魚価下落に対応不能となったが、令和2年度補正で37億円、令和3年度補正で20億円が計上された。令和4年度補正では「食料安全保障平準化事業(原材料転換対策)では10億円が計上され、すでに9億円弱が承認済みだが、当初予算のセーフティーネット機能強化が図られた。対象魚種追加(カツオ)、ノリ、サケ、餌料用魚の保管経費助成復活し、県漁連等の事業主体の追加(日かつ漁協)、令和2年度の1.7億円から令和5年度では2.8億円に予算の抜本的増額と基金方針の復活が実現した。平準化事業の買取数量は、令和3年度当初(2億円)で2万㌧、4年度当初(2.5億円)で2.4万㌧となっている。
さらに令和4年度補正(10億円)は5.5万㌧(承認済分計画ベース)で、道漁連がニシン3,500万円、道加工連ニシンで1,200万円の助成金を承認され、道漁連はカレイ5,500万円の助成金の承認を受けている。
ALPS処理水の海洋放出に伴う需要対策(300億円基金)
風評被害に対応した水産物の買取・保管支援の有効活用を
また、政府はALPS処理水の海洋放出に伴う需要対策として令和3年度補正予算額300億円(300億円基金事業)を計上し、水産物の販路拡大などの取り組み、水産物の一時的な買取り・保管への支援を実施している。この事業の窓口となっている同機構は、今後想定される風評被害に対応した水産物の販路拡大等の取り組み、水産物の一時的買取り・保管の取り組みを支援する事業の利用を呼びかけている。
同事業は第三者委員会において補助対象とすべきか審査する。その基準は2021年4月の政府方針決定以前を基準とし、月平均価格が7%以上下落し、価格下落の原因としてALPS処理水の処分に起因する蓋然性が高いといえるかどうか、風評の根拠となる補足資料やファクトなどを総合的に勘案して確認する。
この事業は期間の制限(令和6年度に見直し)がなく定額、定率の助成が受けられる。水産物の買取や保管に必要な資金の借入金利を支援(実質無利子化)し、保管にかかる経費(定額)のうち保管料、入出庫漁、加工料のほか、運送費も支援対象となる。保管した水産物の販売先を早期に確保するため、需要開拓経費(買取・保管にかかる費用の15%)を支援(定率)する。
最近では、福島沖で捕獲されたクロソイから高濃度のセシウムが発生したことから、中国向けナマコに魚価暴落の影響が出ており、今後は水産物の一時買取・保管を有効利用できる場面も想定される。問い合わせは、電話03-3254-7044、同機構のホームページ(https://www.fishfund.or.jp)まで。
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