母の2番目の弟の 山男の「しげちゃん」は
高校の頃から山岳部に入ってて心から山を愛してる。
私はしげちゃんが大好きだ。
ユーモアに溢れ、ひょうきん者で、人を楽しくさせるのがうまい。
小学校に上がった私に
「うたこ、カタカナは読めるようになったか?」と聞き
「うん、なった」と言うと
「じゃ、読んでみろ」
と、沢山あるパチンコ店の中から、わざと「パ」の電飾が切れている店の看板を指さす。
「チ・ン・・・あ・・」
「なんだ、まだ読めないじゃん、ケケケ」
「うううっ・・・」
またある時は
「うたこ、面白い昔話をしてやろう」
わくわく。
「昔々、埼玉県〇〇市△△というところに『チンタ』という女の子が住んでしました。
チンタはいつも鼻をたらしていました。
チンタは大笑いをすると、のどちんこが丸見えです。
チンタは洗った手を服で拭きます。
それからチンタは毎日おねしょをするので、チンタの家の布団はどれもびしょびしょでした。」
「
そのチンタってわたしじゃない」
「違います」
「絶対わたしだ!」
「うたこではありません、チンタさんの話です」
「うぐぐ・・・」
と、私をからかう数々のエピソードを盛り込んだ話をしては遊んでくれました。
私はしげちゃんにからかわれるのだ大好きでした。
しげちゃんはよく、おじーちゃんおばーちゃんから怒られていました。
あまりにも調子が良かったからです。
しげちゃんはおじーちゃんの声色を聞き分けていて
「おい、しげるはいるか!」
と聞こえただけでダーーーっと家の外に走って逃げます。
逃げられない時は
素早くその場に正座をし、背中を丸めて出来るだけ小さくなってうなだれて(この演技が最高)、
何か言われる前に
「とーさん、どーもすみません」と神妙に謝ってしまうので(その姿はもうふざけているとしか言えない)
「まだ話とらん!」と余計に怒られていました。
波平とカツオでした。
多分しげちゃんはこのやり取りが好きだったと思います。
小学生の頃は年上の兄の教室に忍び込んではつまみ出されていたそうです。
最初は教室の後ろで隠れて絵などを描いているらしいのですが
だんだんムズムズして動き出し、
「兄貴、オレにも教科書を見せておくれよ」とか
先生の質問に
「そんなむずかしい問題はわかりませーん」とか
ついうっかり
「おっ!?カレーじゃないか?カレーの匂いがすらあ。
せんせー今日の給食はカレーだね」
とか言ってしまうのでバレるのです。
強制送還されていく弟の後ろ姿を、
兄の修ちゃんはそりゃもう恥ずかしかったと証言しています。
しげちゃんは今でも休日は山に登り、山岳協会の自然保護の仕事をし、
クライミング大会の審査員をしたり、国体を手伝ったり、講演会で話したりしています。
家族のためにサラリーマン生活を選んだけれど
本当は人生全部を山に使って、山一筋に生きたかったんだろうな。
小さい頃から見て来たのでそんな気がします。
仕事で疲れていても休日は山!って人だから。
でもしげちゃんの背中を見て育った末息子は公務員の傍らトレイルランをしているっていうから
まんざらでもないね。
私は山登りはしないけど、しげちゃんを通して山はとても身近です。
だって私の大好きなしげちゃんが 大大大好きな山だもの。